労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  静労委平成27年(不)第1号・同第4号
トゥー・ワンプロモーション不当労働行為審査事件 
申立人  Xユニオン(「組合」) 
被申立人  株式会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成28年4月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   会社が、①就業規則の写しを、組合から再三要求したにもかかわらず交付することを拒否していること、②平成26年7月分以降、組合員A1、同A2及び同A3の勤務シフト表の作成にあたり勤務日数を削減したこと(以下「シフト削減」という。)及び給与を削減したこと並びに同年8月20日に前記3名の組合加入後の同年11月3日までこれを継続したこと、③団体交渉において就業規則の制定及び開示に係る無責任な回答を繰り返したこと、緊急団体交渉申入れについて拒否したこと及び団体交渉において組合を無視する発言をしたこと、④A1組合員及びA2組合員に対して、注意書を発行したこと、⑤B1管理部長が、労働者代表選出選挙に介入したこと、投票用紙に細工し選挙工作したこと及び団体交渉において就業規則を企業内組合であれば交付するが合同労組には交付しない旨発言したこと、⑥平成27年5月6日にA1組合員に対し配置転換を命じたこと、⑦A1組合員の配置転換に係る「事実確認と調査」なる行為において、同僚からA1組合員対し退職を促すような発言があったのに制止せず、これを容認してA1組合員に退職を促したことが、不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
 静岡県労委は、A1組合員の配置転換、勤務シフト削減等が不当労働行為に当たるとし、会社に対して、配置転換がなかったものとして扱うこと、バックペイ、就業規則の交付、誠実団交応諾、文書掲示等を命じ、その余の申立てを棄却した。
 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A1に対する平成27年5月6日付け特別観覧席・手荷一物預かり所スタッフから清掃スタッフへの配置転換がなかったものとして扱わなければならない。
2 被申立人は、平成26年9月及び同年10月の勤務シフトが削減されなければ受領するはずであった賃金相当額と支給額との差額として、申立人組合員A1に対し、金22,100円、同A2に対し、金23,800円、同A3に対し、金50,400円を、それぞれ支払わなければならない
3 被申立人は、申立人組合員に対し、正当な理由なく、勤務シフト削減及び特別観覧席・手荷物預かり所スタッフから清掃スタッフへの配置転換をすることにより申立人の組合の運営に支配介入してはならない。
4 被申立人は、申立人から申立人組合員に対する勤務シフト削減に伴う給与削減や配置転換の回復措置を交渉事項とする団体交渉の申入れがあったときは、申立人に就業規則の写しを交付し、現場責任者が出席するなどして誠実に応じなければならない。
5 被申立人は、本命令書写しの交付を受けた日から7日以内に、A2版の大きさの白紙全面に下記の内容を記載し、被申立人のD競輪場従業員休憩所(更衣又は休憩用に使用している部屋)の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記(省略)
6 申立人のその余の請求をいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 就業規則など未制定段階での組合員らの雇用関係
 会社と3名との間には、その各入社時において期間の定めのない短時間労働者としての雇用契約関係が成立し、その職務内容はD競輪場における特観スタッフとしての勤務条件であり、勤務日は1月当たり約21日間開催される競輪開催日でシフト表により指定される日にちである。
 ところで、会社は、「採用面接時に、業務について、清掃と受付両方の業務を行うと説明して採用している」、「採用面接時に、勤務可能日の内の半分以上は勤務できますと説明して採用している」と主張しているが、いずれもA1組合員らの勤務の実態に相反するものであり、B2統括責任者及びB3執行役員の証言以外には、これを支持する客観的な事実や証拠方法が見当たらないので、会社の主張は採用することができない。
 以上のとおりに、会社との間ではすでに3名の入社時に上記の内容で合意による雇用契約関係が成立しているものと推認されるところ、労働条件通知書が平成27年4月1日付けで初めて3名に対して発せられ、就業規則が平成27年1月25日に実施されたことは組合も争ってはいないが、その各内容については、上述のとおりに認定される雇用関係と対比しつつ判断をする必要がある。
2 A1組合員の配置転換について
(1) A1組合員に受付業務以外の仕事を指示する必要性の存否
 D競輪場における受付業務を担う従業員間のトラブルを把握しうる会社としては(ことにA1組合員らに対しシフト削減に伴う給与削減を行い、A1組合員及びA3組合員に対し新たに注意書を発出する扱いにより受付業務の中に緊張状態を持ち込んだ会社としては)、従業員間の緊張状態を適切に環境調整して、平成27年4月20日の一日限りでA1組合員の異動を事実上決するような事態には至らないように取り扱うべきであったし、取り扱うことができる可能性が十分に存したものである。平成27年4月20日の一日限りでの状況から、配置転換の必要性を主張する会社の立論は、全体観察において欠けるところがあるものと評せられ、当時の会社の立場からは、A1組合員に対し受付業務以外の仕事を指示する必要性は、存してはいなかったものと判断される。
(2) A1組合員の採用時には受付業務のみを行うスタッフという説明をしてはいないとの主張
 会社が主張する「それぞれの仕事を平準化するため仕事を移動する必要があること」、「清掃業務も受付業務も専門的な知識経験を必要としない単純作業であり、専門化するメリットがなく、両者の移動を前提とする労働契約であることが合理的であること」、「従前から兼務する従業員が複数存在すること」などは、いずれも会社から見たA1組合員の配置転換を正当化しようと試みる弱い理由にはなったとしても、会社とA1組合員との間の時間的にも先立つ雇用契約を覆すに足りるほどの理由たり得ないことは明らかである。
(3) 勤務時間にかかる特段の配慮が配置転換の合理性を基礎づけるかどうか
 会社において受付スタッフと清掃スタッフとは当初から、各別に遇されており、勤務時間にかかるA1組合員への事後的な特段の配慮は、各別処遇の証しでしかなく、配置転換の合理性を積極的に基礎づけるに役立つものではない。
(4) 就業規則第7条の規定が配置転換の根拠になるかどうか
 会社が提出した就業規則には労働基準監督署の受付印すら存在せず、その証明力は限定されたものと評せざるを得ないが、A1組合員の閲覧に応じた平成26年12月時点とは異なる内容で乙第7号証として証拠提出された疑念がぬぐえないものである以上、A1組合員の配置転換の根拠とはなり得ないと解せられるべきであろう。
 従って、A1組合員に対する平成27年5月6日付け特観スタッフから清掃スタッフへの配置転換は、労働組合法第7条第1号に規定する不当労働行為に該当する。
3 A1組合員、A2組合員及びA3組合員に対するシフト削減に伴う給与削減
(1) 会社はシフト作成に関する裁量権を有するからシフトの減少を行うことは裁量の範囲内であるかどうか
 シフト削減は、必然的に給与の削減という重大な経済的効果に直結するものである以上、労働者とのシフト数すなわち勤務日数についての入社時の合意は会社をも 拘束するものであり、その合意の存在を否定して裁量権行使の名の下に一方的にシフト削減「処分」、すなわち給与の削減を行うことは不利益取扱であって許されない。
(2) 3名の勤務態度、成績は3名に対するシフトの減少を行う程度に悪かったかどうか
 労働者の勤務態度、成績不良とシフト減少とは、本来、直接の関係は存しないはずのものである。本件では、シフト減少は労働者の給与削減に直結するものであるから、勤務態度、成績が改善されないことがシフト減少に反映させられるためには、勤務態度不良、成績不良の事実の確定が会社によってなされた上で、会社による適切な指導改善措置が行われ、それにもかかわらず改善されず、改善が困難であるところまで届いて初めて、シフト減少の処分が発せられるべきであるが、本件では上記のような手続きが履践された形跡は存在しない。
(3) 3名に対するシフトの減少が組合の結成通知(平成26年8月20日)以前の平成26年7月分からのシフトであるから、会社には不当労働行為意思が存しないかどうか
 ①3名に対するシフトの減少処分には前(2)項で指摘したとおりの欠陥があること、②B2統括責任者が3名に対し、当初「評価制度による評価が低かったからシフトを減少させた」と真実ではない説明を行っていたこと、③会社は「リスク」という判読困難な表現を用いて3名について減少させたシフトの回復を説明していること、④この「リスク」の内容として、会社は労働委員会などの場で争点となることと認識していたことから、平成26年8月20日の組合結成を会社が承知してから以降のシフトの減少については、優に会社に不当労働行為の意思の存在を認めることができる。
 従って、A1組合員らに対する平成26年8月20日以降同年11月3日までのシフト削減に伴う給与削減は、労働組合法第7条第1号に規定する不当労働行為に該当する。
4 会社の組合に対する支配介入行為の存否
(1) 組合結成以後のシフト削減の維持及び就業規則写しの不交付発言
 組合は平成26年12月の第5回団体交渉以降、就業規則の写しの交付を求めてきたが、就業規則実施後の平成27年1月の第6回団体交渉において、B1管理部長が組合に対して就業規則の写しの不交付発言をしたことは、会社の組合嫌悪による支配介入行為を端的に表したものと評価することができる。
(2) A1組合員に対する配置転換及び「事実確認と調査」の支配介入行為としての性格
 平成27年4月20日に行われたC1サブリーダーらとB3執行役員によるA1組合員を配置転換することに係るやりとりや、その後のA1組合員に対する不満を記した書面を徴したこと、そしてA1組合員のパワハラ行為の「事実確認と調査」と称して強行したことは、まさに会社による支配介入行為そのものであると断ぜさるを得ないものである。
 そもそもが、会社が、対立する従業員グループの一方からの相手方の退職を前提とする厳正なる処遇を求められて、やらないなら自分らが辞めると迫られると、辞めさせることはできないが1人を異動させることはできると応じるなど、前提として職場環境配慮義務を負担している会社として、労働者間に自ら対立と区別を持ち込む行為であるから、行ってはならない行為である。想定し、予知し得た労働者間の対立を利用し、組合員を不利益に処分し、組合運営に支配介入する、まさにこれに該当する行為である。
 「事実確認と調査」と称して、対立する労働者らを同席させ、事実ではなく、感情的な表出をそのままに制止せず、労働者間の対立を調整緩和するのではなくむしろ固定化して、会社が組合を嫌悪していることを表明していることは、まさに組合運営に対する支配介入行為と判断されざるを得ないものである。
5 会社の団体交渉の誠実性
 会社の対応は未熟であると評されるばかりではなく、後付けの証拠作りとしての意義しか有しない「注意書」なる書面を交付したり、就業規則や労働条件通知書に計画的に配置転換を許容する条項を挿入しようと試みたり、対立する労働者らとの間でA1組合員の配置転換を事実上確定させた後に、後付けで報告書面を作り配置転換を正当化する証拠作りを試みたり、配置転換処分を固定化し、労働者間の対立を強化するばかりの効果しか有しない名目的な「事実確認と調査」なる活動を強行したり等々、姑息とも評されるべき対応をしている。ことに最後の配置転換処分については、A1組合員の身分、地位に重大な影響を及ぼすものであり、A1組合員の健康状態にすら重大な影響を及ぼすおそれを有するものであるから、組合からの緊急団交申入れには相当の理由が存するものと認められるにもかかわらず、業務の繁忙など形式的、かつ証明されていない事項を理由として開催に応じていない。
 このほか、就業規則の写しがいまだ組合に対し交付されていないこと、B2統括責任者が一度足りとも団体交渉に出席していないこと、会社からは、B2統括責任者の欠席の合理的な理由を基礎づける証明や説明が行われていないこと、シフト削減や配置転換処分の合理的な理由を基礎づける証明や説明が行われていないこと、シフト削減の回復に係る交渉が、金額については合意する段になってから会社から合意そのものに守秘義務の網をかぶせる提案がなされて、結局はいまだ削減金額の補填も行われていないことなどなど、会社の団体交渉に係る対応には、到底誠実とは評価することが困難な事情がいくつも指摘することができ、誠実に団体交渉を行い、議論を深めて合意できる箇所は合意して相互の理解を深め信頼関係を形成していこうと努める態度を見いだすことはできない。
 従って、会社が、組合に対して、上記のような内容程度の団体交渉しか行っていないことは、労働組合法第7条第2号に規定する不当労働行為に該当する。 
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