労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  茨労委平成25年(不)第4号、平成26年(不)第1 号 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社、Y3会社、Y4会社(併せて「被申立人4 社」) 
命令年月日  平成28年3月29日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①被申立人4社が、Y3会社及びY2会社に配車を行うことによ り、Y1会社に勤務する組合員6名 (執行委員長A1、A2組合員、A3組合員、A4組合員、A5組合員及びA6組合員、 総称して「A1ら6名」 という。)の賃金を、組合結成前に比較して、2割から3割以上減額させたこと、②Y1会社が、出向先のY4会社における業務上の災害に伴う負傷の療養のため休職していた A6に対し、26年9月7日以降、就労を拒否したこと、③Y1会社が、A5を26年1月17日付けで解雇したこと、④Y1会 社が、団体交渉の開催場所を事業所から20キロメートルほど離れたD駅周辺とすることに固執したこと、団体交渉に実質的な交 渉・妥結権限を有する者を出席させず、拒否回答や一般論を繰り返し、実質的な検討に入ろうとしないことが、不当労働行為に当 たるとして、救済申立てがあった事件である。
 茨城県労委は、①から④(④の団交の開催場所についての申立てを除く。)について、不当労働行為に該当するとして、A1ら 6名に対するバックペイ、A6のY1会社における就労復帰、A5の解雇取消、原職復帰、団交の誠実応諾、文書手交・掲示を命 じた。  
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人組合員A1、同A2、同A3、同A4、同A5及び同A6に対し、別表2(7)「支払を命ずる額」に記載の金額に、平成25年11月6日から支払 済みに至るまで、年率6分の金員を加算して、それぞれ支払わなければならない。
2 被申立人Y1会社は、申立人組合員A6を同社で就労させなければならない。
 なお、就労に際しての業務については、申立人と協議の上、速やかに決定しなければならない。
3 被申立人Y1会社は、申立人組合員A5に対する平成26年1月17日付け普通解雇を取り消し、同人を原職に復帰させなけ ればならない。
4 被申立人Y1会社は、団体交渉での態度を改め、団体交渉の申入れに係る交渉事項について、申立人の理解を得るため、その根拠を具体的に説明し、それに必要な資料等を提示す るなど、団体交渉に誠意をもって応じなければならない。
5 被申立人Y1会社、Y3会社、Y2会社及びY4会社は、申立人組合員に対し、 配車等について不利益な取扱いをすることにより、申立人らの運営に関して介入してはならない。
6(1) 被申立人Y1会社、Y3会社、Y2会社及びY4会社は、本命令受領の日から1週間以内に、下記の文書を申立人に手 交し、かつ、縦 1メートルX横2メートルの木版に、明瞭に楷書で墨書し、被申立人Y1会社、Y3会社、Y2会社及びY4会社のそれぞれ正門に、毀損することなく、30日間掲示しなければ ならない。
記(省略)
 (2) 被申立人Y1会社は、本命令受領の日から、1週間以内に、下記の文書を縦1メートル×横2メートルの白色看板に、明瞭に楷書で墨書し、被申立人Y1会社本店の正面入り口付 近及び被申立人Y3会社本社営業所の入り口の見やすい場所に、毀損することなく、10日間掲示しなければならない。
記(省略)
 
判断の要旨  1 被申立人4社の関係について
 被申立人4 社は、B1会長を実質的経営者として一体的な経営がなされている会社であり、日常の業務や組織運営等について、4社が一致協力して行っていたと認めるのが相当である。ま た、数百人又は数百台に及ぶ従業員や車両を一斉に転籍させたことは、転籍の前後の企業が経営主体を共通にするなど極めて緊密 な関係にあることを強くうかがわせるものであって、本件申立てに係る不当労働行為の成否の判断において、こうした事情を無視 することはできない。
2 争点1 「配車(賃金)差別」について
 組合結成以前と比較し、申立人組合員の各月に支給された賃金に減少(不利益性) が見られること、「分社化」の過程において被申立人の対応に反組合的意図が垣間見えること、被申立人4社が緊密な関係にあり、一体的な経営がなされていることを考慮すれ ば、各社の従業員の業務量を調整し、申立人組合員らの賃金が減少することがないようにすることが可能であること、被申立人が 組合を嫌悪していたと思われることなどを考慮すると、24年10月から25年8月までの申立人組合員に対する各月に支給され た賃金の減少は、労働組合員であることを理由とした配車差別の結果であり、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たると判断 するのが相当である。
 また、組合は、配車差別により賃金が減少した結果、組合の組合員数が減少したとも主張している。組合の組合員数が減少して いるか否か、さらに、減少しているとすればその理由は何か等については、本件審査の過程で必ずしも明らかにされたわけではな いが、各組合員に対する不利益な扱いは、組合員の経済状況を悪化させるとともに、組合活動を萎縮させるものであり、労働組合 の団結にも悪影響を及ほす蓋然性が高いことは否定し難いことから、当該配車差別は、労組法第7条第3号の支配介入にも当たる ものと判断する。
3 争点2 「A6組合員の就労拒否」について
 27年になると、Y1会社は、「食品加工業(鶏肉加工)」や「建設業(戸建住宅基礎、擁壁工事)」への出向を提案したが、 A6組合員は、いずれの出向も受け入れられないとして、これらの提案を拒否している。
 同社は、同組合員の就労が実現しないのは、同社が就労先を提案し、労働条件についてもできるだけ同組合員の意に沿うよう努 めているにもかかわらず同組合員がこれを拒否しているためであり、同社が不当に就労を拒否しているわけではない旨主張する が、以下のとおり、当該主張は首肯し難い。
 すなわち、27年2月以降に、同社が同組合員に提案したのは、いずれも出向を前提とする業務である。 当初から本件出向に抗議し、出向無効の仮処分決定が出されたにもかかわらず同社への就労が認められず、そうした中で本件労災事故により受傷したという経験を持つ同組合員に してみれば、出向に強い抵抗感があることは、同社とて容易に想像がつくはずである。
 また、本件出向は、同社と一体的な経営が行われているY4会社を出向先とするものであったが、27年になってから提案され た出向は、グループ内の出向ではない。しかも、出向先で予定されていた食品の加工や建設作業といった仕事は、同組合員の職務 経験を活用できる業務と言えるかは疑問であり、本件出向解除の際に合意した「場内専用運搬業務」とも業種を異にするものであ る。出向解除の際の合意に基づいて、同社構内の運搬作業か若しくはこれに類似する業務を提案すべく努めるべきところ、Y1グ ループ全体を通じても、そのような努力がなされた形跡は見受けられない。
 Y1会社及びY4会社は、26年10月1日から同年11月19日までは、A6組合員の負傷が治癒していないとして、また Y1会社は、同月20日以降は同組合員に対して新たな出向を提案するなどして、いずれも就労を不当に拒否したものというべき である。
 そして、Y4会社への出向自体に不自然・不合理な点が多く見受けられ、その動機が同組合員の同社からの放逐にあったと思わ れること、本件出向が解除されたのは、同社の事務所が同グループの拠点であるF市からG市に移された後であること、同年9月 8日にY1会社を訪れた同組合員に対し、転職を促すような発言があったと思われること被申立人が申立人を嫌悪していたことな どを考慮すると、同社による同組合員に対する一連の扱いは、出向や休職等により職場から同組合員を排除することにより、ある いは賃金の不支給や減額支給等の不利な処遇を課すことにより、あわよくば同組合員を退職に追い込み、ひいては組合を弱体化し ようとしたものであり、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たると判断せざるを得ない。
4 争点3 「A5組合員の解雇」について
 25年12月27日の出来事〔アルコールチェックにおけるアルコールの検出〕にその他の理由を加えて判断した場合であって も、Y1会社の就業規則が規定する「勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認め られたとき」(同規則第17条第2 号)又は「その他前各号に準ずる程度のやむを得ない事情があったとき」(同規則同条第10号)に該当するとまでは認められない。
 むしろ、被申立人は、組合を嫌悪していたと考えられ、特にA5組合員の解雇理由の一つに組合の街宣活動を挙げていることな どを併せ考慮すると、本件解雇は、被申立人の就業規則に定める解雇事由に該当しないにもかかわらず、 同人が組合の組合員であることを理由になされたものであると認められる。したがって、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たるものと判断する。
5 争点4 団体交渉について
 Y1会社は、団体交渉において、組合の要求事項に関して、妥結するつもりなどなく、労働条件に関する説明や資料の提供を正 当な理由なく拒否したものであり、加えて、団体交渉の開催場所の選定についても、不当な対応であったことも背景的に考慮する と、被申立人の団体交渉に対する一連の対応は、誠実さに欠けるものであり、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるものと 判断するのが相当である 。  
掲載文献   

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