概要情報
事件番号・通称事件名 |
都労委平成27年(不)第42号
東京コンドルタクシー不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成28年3月15日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成27年3月25日、組合は、下部組織であるA1分会(以下「分会」 といい、組合と併せて「組合ら」 という 。) と連名で、会社に対して、2015年春闘要求として団体交渉を申し入れた。 4月7日、会社は、組合員であることを公然化していたA2書記長 の3月10日付自己都合退職により、会社従業員である組合員が存在しなくなったので団体交渉を実施する必要はないと回答した。
4月17日、組合らは、公然化していないが会社従業員である組合員は存在するとして団体交渉を申し入れたが、同月27日、会社は、回答に変更はないこと、及び組合らに貸与している掲示板の返却を求めることを通告した。5月10日、組合らは、団体交渉を申し入れたが、会社は、これにも応じなかった。
本件は、会社が、①3月25日、4月17日及び5月10日に組合らの申し入れた団体交渉に応じなかったこと、②掲示板の返却を求めることを通告したことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
東京都労委は、申立てを棄却した。
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命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 団体交渉について
会社は、A2の退職後の平成27年3月25日、4月17日及び5月10日に、組合らが賃金体系等の労働条件及び組合掲示板の追加について申し入れた団体交渉及び事務折衝(以下「本件申入れ」という。)を、会社従業員である組合員が存在しないとして拒否している。
組合は、本件申入時に、会社従業員である組合員の氏名を提示せず 、本件審査においても、A2の退職後の会社従業員である組合員の存在を裏付ける証拠を一切提出していない のであるから、会社従業員の労働条件及び組合掲示板に関する本件申入れについて、使用者が雇用する労働者の代表者であるということはできなぃ。
したがって、会社が本件申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。
なお、組合は、会社従業員である組合員は存在し、会社による常習・確信犯的な支配介入の実態に照らせば、 当該組合員の氏名を非公表とせざるを得ないことには合理性・正当性があると主張する。
確かに、会社が、22年に組合員のG労組との二重加盟を問題とし、Fを正式に呼び確認するなどと組合に通告し、Fが組合を脱退したこと 、及び本件申入れに対して必ずしも合理的理由があるとはいい難い本人確認を通告したことが認められ、組合の主張も理解できなくはない。 しかし、団体交渉を申し入れる以上は、団体交渉事項の対象を特定する上でも、少なくとも1名以上の組合員の存在を明らかにする必要があるというべく、会社が本件申入れを拒否することには正当な理由があるといわざるを得ない。
2 掲示板について
通常、使用者が従業員の加入していない労働組合に掲示板を貸与することは考え難く、締結に至る経緯からも 、和解協定書は、その旨が明記されていなくとも、会社従業員である組合員の存在を前提としていると解するのが相当である。
本件審査において、組合は、会社従業員である組合員の存在を裏付ける証拠を一切提出していないのであるから、和解協定書の前提を欠くに至ったというほかない。そして、2週間以内との猶予期間を設定していることも考慮すれば、会社が掲示板返却を通告したことが、組合の運営に対する支配介入に当たるとはいえない。
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掲載文献 |
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