労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  広労委平成27年(不)第4号
安全運輸 不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成28年3月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①申立人組合及びX2分会(以下「分会」という。) が申し入れた団体交渉に、会社が応じなかったこと、 ②会社が、21年12月17日付け組合結成通知に伴う確認事項(以下「21年確認事項」という。) に反し、組合と事前協議をすることなく、また、労働者代表であるA2分会長を排除して、組合員を含む従業員に対し、通行料に係る精算額の賃金控除(以下「賃金控除」という。)の個別同意を求め、さらに、団体交渉において、賃金控除規定に係る就業規則の変更を提出したこと、 ③会社が、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(以下「改善基準告示」という。) に基づく運行上の安全を確保しようとせず、 22年12月8日付け和解協定書(以下「22年和解協定書」という。)を履行していないこと、 ④団体交渉において、組合が検討中のところにB2会長が入室し、組合の制止を無視して個人的なことでA2分会長と口論となり、団体交渉の継続を不可能としたことがそれぞれ不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
 広島県労委は、会社に対して、団交応諾、個別同意による賃金控除を止めること、21年確認事項に基づく事前協議、22年和解協定書の遵守及び文書交付・掲示を命じた  
命令主文  1 被申立人は、平成27年2月3日付け文書による団体交渉申入れに対して、速やかに応じなければならない。
2 被申立人は、従業員との個別同意による賃金からの通行料に係る精算額の控除を止めるとともに、今後、組合員の労働条件に関わる事項を変更する場合は、平成21年12月17日付け組合結成通知に伴う確認事項に基づき、申立人と事前に協議を行わなければならない。
3 被申立人は、平成22年12月8日付け和解協定書に基づき、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の遵守に直ちに取り組まなければならない。
4 被申立人は、本命令書受領の日から2週間以内に、下記の文書を申立人に交付するとともに、縦1メートル、横1メートルの大きさの白紙に明瞭に記載し、会社事務所正面玄関の従業員が見えやすい場所に30日間掲示しなければならない。

記(省略)
 
判断の要旨  1 団体交渉申入れに対する会社の対応は、 労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点1)
 会社は、27年1月23日、A2分会長から口頭で団体交渉申入れがあった際、B1社長が、団体交渉は3月以降に開催したい旨回答したのに対し、組合から異議もなく早期開催も求められなかったことから、 組合は上記回答を了承したものであり、 同年2 月3 日付けの団体交渉申入書に回答しなかったのは、不当な拒絶ではない旨主張する。
 確かに、27年1月20日にA2分会長が口頭で団体交渉を申し入れた際、B3常務が、B1社長は現在病気休暇中であることや2月中は育児休暇を取得する予定である旨回答している。 また、同年1月23日にA2分会長が口頭で団体交渉を申し入れた際には、B1社長が、団体交渉は3月以降にしてほしい旨回答していることから、 組合は、団体交渉の当事者であるB1社長が2月中は育児休暇を取得する予定であることを認識していたことが認められる。加えて、A2分会長は、B1社長の回答に対して何も述べなかった。
 しかし、27年2月3日付けの団体交渉申入書には、「1月15日付にて申入れを行いましたが、 団体交渉応諾の回答がなく今日を迎えています。」、「団体交渉日時~ 双方の調整の結果とするものの速やかな対応を求めます。」と記載さ れていることから窺われるように、組合が、前回、中止となった26年12月13日の団体交渉から上記申入れまでの間、会社から具体的な日程調整も行われず放置されていることに納得していなかったことは明らかである。
 そうすると、会社は、これまでの所要時間である2時間程度の団体交渉を2月に開催できるか否か、あるいは3月の何時頃であれば開催できるかを検討して、その結果を速やかに組合に伝えるなど、何らかの回答をすべきであったと解される。しかしながら、会社は、27年2月25日付けで組合が当委員会に対 して本件申立てをするまでの間、上記申入れに対して、何らの対応をしなかったものであり、このような会社の対応は、正当な理由なく団体交渉を拒否しているもので、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
2 会社が、通行料金の賃金控除について従業員に個別同意を求めたこと及び26年10月18日の団体交渉において賃金控除規定に係る就業規則の変更を事前協議することなく提出したことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点2)
 会社は、賃金控除規定に係る事前協議を行わなかった理由について、21年確認事項第4項の規定は、組合員の労働条件を不利に変更する創設的な規定を一方的に定めることを禁止することを目的とするものであり、就業規則により確認的な規定を定めることについては、事前協議は要しないと考えられ、不当労働行為には当たらない旨主張する。
 しかしながら、同項は、事前協議の対象を組合員の労働条件に関わる事項としており、それを限定する規定はないところからすると、会社の主張するように組合員の労働条件を不利に変更する創設的な規定を一方的に定める場合にのみ事前協議が義務付けられていると解することはできない。
 また、仮に、同項について、会社の主張するような運用がなされていたとしても、賃金控除規定を就業規則に定めたならばすべての従業員に等しく適用されることになるのであるから、一部の希望する従業員との間で個別同意により行われてきた賃金控除を確認するに過ぎないとする会社の主張は理由がない。
 21年確認事項は労働協約と解されるところ、 使用者による労働協約違反行為は、単なる債務不履行にとどまらず、 そのような行為に至ったことにつき、労働組合を軽視し、その存在を無視するに等しい行為と評価される事情が認められる場合には、労働組合の弱体化を企図する支配介入として、不当労働行為に当たるというべきである。
 そして、労使間で、組合員の労働条件に関する事項について事前協議条項がある場合において、使用者が、労働組合に事前協議を申し入れず、一方的に労働条件を変更しようとすることにつき、当該労働協約の趣旨を没却させ、労働組合の存在意義を無視するものといい得る事情が認められる場合には、支配介入に当たるものというべきである。
 たしかに、会社は、26年7月19日にA2分会長に対し就業規則変更案を示した上で、就業規則の変更に係る団体交渉を同年8月2日に開始し、同年10月18日の団体交渉において賃金控除規定を含む就業規則変更案を提出しているが、前記のとおり、会社は、そもそも就業規則変更案を提出する以前のA2分会長の反対を契機として、従業員から個別同意をとる方法により賃金控除を継続していたことが認められるのであって、このことについて、組合と事前協議を行ったといい得る事情は窺われない。
 そうであれば、会社は、賃金控除に関し、この時点においてすでに、労働協約たる21年確認事項に違反する行為を行っていたといわざるを得ず、同交渉において賃金控除規定を含む就業規則変更案を提出したことは、21年確認事項第4項にいう事前協議とはいえない。
 また、同交渉において、個別同意をとり賃金控除を行うことは不当労働行為であるとの組合の指摘に対し、会社は自らの労働協約違反行為を自省するどころか、 裁判にでも応じると回答し、争う姿勢を示している。
 このような事情に鑑みると、会社が、賃金控除の個別同意を求めたこと及び26年10 月18日の団体交渉において賃金控除規定に係る就業規則の変更を事前協議することなく提出したことは、労働協約の趣旨を没却させ、労働組合の存在意義を無視するものといい得るから、労働組合法第7条第3号の支配介入に該当する。
3 改善基準告示は遵守されているか。遵守されていないのであれば、22年12月8日付け和解協定書の規定に違反し、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するか。(争点3)
 会社は労基署から、11月是正勧告書により改善基準告示に違反している旨の勧告を受けており、是正勧告は法令違反に伴う行政指導であるから、この状態が継続しているのであれば、労働諸法規及び改善基準告示を遵守しているとはいえない。
 会社は、11月是正勧告書以降、労基署による拘束時間等の調査が半年に1回程度の割合で2度行われたが、 新たな是正勧告や指導等は受けていない旨主張する。また、会社は、従業員がタコグラフに休憩時間や労働時間等を記載することにより、拘束時間の把握に努めるなど一定の対策を講じていることは認められる。
 しかしながら、B1社長自ら、改善基準告示は完全に遵守できていないことを認め、その理由として、従業員が渋滞等を回避するため自己の都合によって、改善基準告示に沿った休態時間をとらずに走行してしまうことを挙げる。しかし、仮にそのような事実があったとしても、それは会社の管理責任がより厳しく問われる理由となるに過ぎない。かえって、改善基準告知違反の原因を従業員に求めるような会社の態度は、 自らの責任を回避しようとする姿勢といわさ るを得ない。
 加えて、B1社長の、「過度な違反はない」との陳述からも、使用者として責任を持ち、改善基準告示を遵守していこうという姿勢を欠いているといわざるを得ない。
 以上のことから、会社は改善基準告示を遵守しているとは認められず、遵守しようとする姿勢にも欠けていることかち、22年和解協定書を尊重し、その履行に向けた態様は不十分といわざるを得ず、労働組合法第7条第3号の支配介入に該当する。
4 26年12月13日の団体交渉及び組合が検討中における会社の言動は、労働組合法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当するか。 (争点4)
 B2会長の言動及びB1社長がB2会長の言動を制止しなかった対応が、団体交渉を中止せざるを得ない事態を招いたものと認められ、団体交渉という組合の活動に介入するとともに、実質的に組合の団体交渉をすることを阻む行為であるといい得るから、労働組合法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当する 。  
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