事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成27年(不)第5号 |
申立人 |
X組合 |
被申立人 |
Y会社 |
命令年月日 |
平成28年3月22日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が賃金改定や賞与等についての団交において、自らの
業績等について一切の資料の提示を行おうとしないなど、不誠実な交渉態度をとり続けていることが不当労働行為であるとして、
救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は会社に対し、誠実団交応諾及び文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人の平成26年9月27日付け「抗議及び団体
交渉申入書」記載の要求事項について、誠実に団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、平成26年11月4日付け「2014年度秋年末要求書」及び同月6日付け「2014年冬季一時金分会付帯要
求」記載の要求事項について、会社の業績を示す資料を提示するなどして、誠実に団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)
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判断の要旨 |
1 賃金改定及び賞与に関する説明について
申立人組合は、①被申立人会社は団交において、就業規則等に反する暴論や矛盾又は破綻した内容の説明を繰り返すだけであっ
たこと、②昇給や賞与の増額ができない理由として、会社の業績がどのような状況にあるのかなどの説明もなく、説明の裏付けと
なる資料の提示もなかったことが不誠実である旨主張する。
他方、会社は、①(i)運転手等について昇給が存在しない旨、(ii)賞与の額は夏季20万円、冬季15万円とする旨の労
使慣行が存在し、それに従って支給していたのであって、就業規則等に従って支給していたのではないから、就業規則等と異なる
説明をしたかどうかは不誠実団交に当たるかどうかと関係がない旨、②昇給については、分会結成当初から上記(i)の労使慣行
について説明しており、賞与については、業績に連動しないから業績を開示する必要はなく、また、上記(ii)の労使慣行があ
ることを説明している旨主張する。
しかし、認定した事実によれば、制度上も実態上も、運転手等について昇給が存在せず、賞与の額は夏季20万円、冬季15万
円とする取扱いとなっていたとはいえないから、そのような労使慣行が存在するとの会社の主張を採用することはできず、それを
前提とする上記①、②の会社の主張は採用できない。
2 団交における資料の提示について
組合は、団交において毎回、会社に対し、業績に関する説明及び資料の提示を求めてきており、会社が暴論や破綻した説明を繰
り返すだけで資料の提示をしなかったことが不誠実である旨主張する。
認定した事実によれば、組合が団交で、賞与の支給額の根拠について質問し、会社の売上状況の変化等について説明してほしい
旨述べたのに対し、会社は、説明及び資料を提示しない理由について、①従業員はよく知っているはずである旨、②売上状況等の
説明はしたことがなく、必要かどうか疑問である旨、③組合が会社の説明を聞いて納得できないことが理解できない旨などを述べ
ている。これらのやり取りは、組合の要求や主張に対して、資料を提示しない合理的な理由を示しておらず、誠実な対応をしてい
るものとは到底いえない。
会社はまた、組合の分会結成当時から、運転手等について昇給が存在しないことを説明しており、賞与は業績に連動しないか
ら、業績を開示する必要はないなどと主張するが、そもそも前記1判断のとおり、会社が主張するところの労使慣行が成立してい
たとみることはできないのであって、団交において会社がそのような労使慣行と称するものの説明を何度行ったとしても、誠実に
対応していたとみることはできない。
結局、会社の主張はいずれも採用できず、会社は、昇給や賞与について、業績に関する資料の提示等により誠実に対応すべきと
ころ、不誠実な対応に終始しているものというべきである。
3 特別給付金について
組合は、会社が平成26年9月に全従業員に支給した特別給付金について、会社は恩恵的給付であって賃金ではないとの説明を
繰り返すだけで、賃金ではないことについて明らかにする説明もなく、そうした説明を裏付ける資料の提示もなかった旨主張す
る。
認定した事実によれば、上記特別給付金は全従業員について会社の経費から一律に支払われているものであり、賞与に類する賃
金の一部とみるのが相当であって、当該事項が義務的団交事項であることは明らかである。
この件についての会社の団交における対応をみると、①文句を言うならば、特別給付金を返却するよう求める旨、②今後絶対に
支給しない旨、③特別給付金について組合が会社に説明書き等を求めるのであれば、来月から組合員らの賃金を下げることを求め
る旨述べるなどの対応を行っており、会社は団交での協議を回避する姿勢に終始したといわざるを得ず、誠実に対応していたもの
とみることはできない。
4 結論
以上のとおり、会社の主張はいずれも採用できず、本件団交における会社の対応は労組法7条2号に該当する不当労働行為であ
る。 |
掲載文献 |
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