労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第2号
不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、X2組合 
被申立人  社会福祉法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成28年3月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が、その運営する保育所の職員らが申立人X2組合を結成した3か月後、同保育所の施設長であった同組合の副委員長A2を事実無根の理由により解雇したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は法人に対し、上記の解雇がなかったものとして取り扱うこと等及び文書の手交・掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X2組合組合員A2に対する平成26年12月17日付け解雇がなかったものとして取り扱うとともに、解雇の日の翌日から就労させるまでの間、同人が就労していれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人X1組合及び同X2組合に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、被申立人のB2保育所の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
記(省略) 
判断の要旨  1 解雇理由について
 被申立人法人は、組合員A2を解雇した理由は同人が採用時に重大な経歴詐称を行ったことにあり、客観的合理的な理由がある旨主張する。
 しかし、認定した事実によれば、同人が採用時の提出書類に重大な虚偽の記載を行ったとまではいえず、また、同人の施設長就任により本件保育所の運営に支障が出たとまではいえないのであって、同人が重大な経歴詐称を行ったとする法人の主張には理由がない。
2 解雇に至る手続について
 法人の理事会でA2の普通解雇が可決承認されたこと、それより前に同人に対し、解雇に関する説明や弁明等を聴取する機会を設けていないことについては、争いがない。この点について法人は、①あらかじめ説明や弁明聴取を行えば、他の保育士や保護者に情報が広がり、園内が混乱することを危惧した旨、②法人の就業規則に、普通解雇を行う場合に弁明の機会を与えるとの規定はない旨主張する。
 しかし、上記①については、仮に法人が危惧する事態が起こり得たとしても、それをもって、法人の主張が正当化されるものではない。②については、訓戒、戒告、減給等の懲戒を行う場合に職員に弁明の機会を与える旨の規定はあるところ、解雇という労働者にとって重大な処分を行うに当たっては、当該労働者にその理由に関する説明をし、質問や意見を求めるなどの慎重な手続を行うことが望ましいといえる。理事会において理事長がA2に質問や意見を求めたことを考慮しても、法人の対応は慎重さを欠いたものといわざるを得ない。
 また、本件解雇通知書には、A2の行為は移管協定書(「C市立C1保育所の民営化に関する協定書」)の条項に違反し、施設長としての条件を欠く者を施設長に配置する状態を作出する重大な行為である旨の記載があるところ、法人は当該条項の解釈にはある程度幅があることを認識していたにもかかわらず、本件解雇前に解釈についてC市に問い合わせたと認めるに足る疎明はない。法人は漫然と当該条項に違反する状態であると判断しており、このような対応は拙速であるといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、本件解雇に至る手続は妥当性を欠くといわざるを得ない。
3 A2の元勤務先に対する問合せについて
 A2が本件保育所の施設長として勤務し始めてから約2年7か月経過した頃に、法人が同人の勤務内容に疑問があるとして元勤務先の保育園に問合せを行ったのは不自然であり、その2か月ほど前に組合結成通知書が法人に送達されたことを併せ考えると、むしろ、この問合せは申立人X2組合が結成されたことを契機として行われたとみるのが自然である。
4 本件解雇当時の労使関係について
 認定した事実によれば、本件解雇当時、組合らと法人との間では、年末一時金や団交の進め方をめぐり、意見が対立していたといえ、法人の組合嫌悪意思が推認される。
 これに加え、A2はX2組合の副委員長であること、年末一時金についての回答の期限である日に同人が解雇されたことなどから、法人は組合の中心人物であるA2を本件保育所から排除することを企図していたとみるのが相当である。
5 結論
 以上のことを総合すると、本件解雇はA2が組合員であるが故に行われた不利益取扱いである。また、法人は組合らの弱体化を図ったともいうべきであるから、組合らに対する支配介入にも当たる。 
掲載文献   

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