概要情報
事件番号・通称事件名 |
新労委平成26年(不)第3号
エヌエスエレクトロニクス株式会社不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合 |
被申立人 |
Y会社 |
命令年月日 |
平成28年3月3日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
①組合員A2の躁うつ病発症の原因、年次有給休暇の付与、経済的損失の補填などを議題とする団交における被申立人会社の対応、②会社が申立人組合に対して発した、組合の街宣行為やビラ配布等についての抗議文の内容は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
新潟県労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
1 団交における対応について
申立人組合は、第3回団交申入れ時に、組合員A2の診断書の提出時期について交渉議題とするよう被申立人会社に申し入れたところ、会社は文書で「提出は会社とA2氏との問題。期日まで提出無い場合、5月16日以降は欠勤扱いとなる」旨回答し、労働条件の根幹にかかわる問題の義務的団交事項についての団交を一方的に拒否したと主張する。
しかし、会社の回答書には、診断書の提出について交渉議題として取り上げることを了承する旨及び団交とは別に事務折衝を行う用意がある旨が記載されており、上記団交において、診断書に関する組合からの質問に対し、会社がその場で回答したことが認められる。したがって、会社が診断書の提出に関する団交を拒否したとの組合の主張は採用できない。
組合はまた、第5回団交申入れ時に、会社の社長や当時のA2の上司の出席を求めたが、会社が拒否したなどと主張する。しかし、会社は第1回団交から継続して、労務管理の責任者である取締役管理本部長と総務経理部長を出席させており、両人の役職からいっても、当然、交渉権限があるとみるべきである。このような観点から考えると、会社側の出席者が組合の意向に沿わなかったからといって、不誠実な対応とはいえない。
組合はさらに、会社が団交において、年次有給休暇の付与についての検討を約束したにもかかわらず、検討経緯を示すこともなく、少しの譲歩や、それに対する説明をせず、結果として、一歩も要求を譲らないと主張する。
しかし、会社は第6回団交において、年次有給休暇に係る考え方について説明していることから、団交における会社の対応が不誠実であったとはいえない。また、会社が年次有給休暇の付与の要求に応じないからといって、不誠実な対応となるわけではない。
以上のことから、本件団交における会社の対応はいずれも不誠実なものとはいえず、労組法7条2号の不当労働行為には該当しない。
2 会社の組合に対する抗議文について
会社が発した抗議文の内容は、組合によるポスターの掲示行為、社長の自宅への組合ビラのポスティング行為及び社長の自宅周辺での街宣行為に対して抗議し、それ以降、同様の行為を行わないよう求めたものであり、組合ないし組合員への威嚇や不利益の示唆等の表現は含まれていない。
一方、組合の上記行為が正当な組合活動であったかという点については疑問がある。
また、会社の抗議文発出後も、組合による組合ビラのポスティング行為等は継続して行われていることから、抗議文がその後の組合活動に影響を与えたとは認められない。
これらの点を総合的に判断すれば、本件抗議文は組合運営への支配介入には当たらないと解するのが相当である。 |
掲載文献 |
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