労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成25年(不)第50号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y会社 
命令年月日  平成28年2月26日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が、①団交において、交渉権限のある者を出席させず、原則論を繰り返し、申立人組合の質問にも答えず、結論ありきの回答に終始したこと、②組合員が腕章を着用するなど団交の形骸化に対する抗議の意思表示をしたところ、組合員に対し、懲戒の事由に該当し、賃金の減額対象となる旨を通知したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
  X組合
   執行委員長 B 様
Y会社  
代表取締役 C
 平成25年5月28日に開催された団体交渉における、平成25年春闘要求に関する当社の対応は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 申立人のその他の申立てを棄却する。
判断の要旨  1 団交における対応について
 申立人組合は、以下の(1)から(5)までの団交議題に係る会社の対応が不誠実団交に当たる旨主張するので、議題ごとに検討する。
(1)平成25年春闘要求
 認定した事実によれば、平成25年5月28日の団交で、被申立人会社は合理的な理由も示さず、組合からの経常利益に関する資料要求に応じなかったといわざるを得ず、会社の対応は不誠実団交に当たる。なお、実質上、交渉権限のない者による見せかけだけの交渉であるとまではいえず、この点に関する組合の主張は採用できない。
(2)25.7.1抗議書記載の年度末一時金
 組合は、25年7月19日の団交において、組合が25.7.1抗議書に対する会社回答では一時金を支給できない合理的で具体的な説明がない等と非難したところ、会社は回答書の内容を踏まえた実質的な交渉を拒否した旨主張する。
 しかし、会社は同年6月11日の団交において年度末一時金を支払えない理由について一定の説明をしている。これに、同団交の後に提出された上記抗議書には年度末一時金についての具体的な要求額が記載されていないこと等を併せ考えると、会社が7月19日の団交で25.7.12回答書のとおりである旨回答したことをもって、不誠実団交に当たるとまではいえない。
(3)就業規則第32条改定による欠勤控除問題
 会社は、就業規則第32条改定による欠勤控除を実施するに当たって、組合に対し、十分な検討期間を与えるとともに、その導入の必要性についても一定の説明をしており、組合から要求のあった激変緩和措置に関する対応も不誠実団交に当たるとまではいえない。したがって、本件欠勤控除問題に関する会社の対応は、不誠実団交に当たるとまではいえない。
(4)25.7.19回答書記載の欠勤控除
 組合は、会社の25.7.19回答書に、会社全体の士気に影響を及ぼす事態となっている旨の記載があったことに対して質問したが、会社は具体的にどのような悪影響が及ぶ事態となっているのか説明をしなかった旨、会社は同回答書に記載していた従業員について可能な限り情報提供すべきところ、一切情報提供しないとの態度に終始した旨主張する。
 しかし、会社は団交において、上記の悪影響についての組合の疑問に対し、一定の説明をしており、また、会社が上記回答書に記載の従業員の氏名を明らかにしなかったことをもって不誠実団交に当たるとはいえない。
 組合はまた、25.7.12要求書で、欠勤控除の段階的な履行や経過措置の見直しを求めたのに十分に検討されていない旨指摘したが、会社は十分な猶予期間を与えていたと繰り返すだけであった旨主張する。
 しかし、会社は、欠勤控除を実施するに当たって、組合に対し、十分な検討期間を与えており、激変緩和措置に関する対応も不誠実団交に当たらないのであるから、これを前提に会社の回答を検討すると、上記の要求書において要求のあった、欠勤控除規定の削除、控除された賃金の全額返還及び経過措置等の実施に応じられない理由について一定の説明をしているといえる。
 以上のとおりであるから、本件団交における上記回答書記載の欠勤控除に関する会社の対応は、不誠実団交に当たるとはいえない。
(5)D組合員の継続雇用問題
 組合は、会社がDの継続雇用後の賃金額を60歳到達時点の基本給の50%以上にできないとする合理的な根拠を示していない旨主張する。
 しかし、会社は、基本給の50%とする理由として21.2.24協定書を根拠としているといえるところ、同協定書にその旨の記載があるほか、会社の若返りを図る必要がある旨、出費がかかる旨などを説明しているのであるから、会社は団交において一定の説明をしたとみるべきである。
 組合はまた、25年7月19日の団交において、会社が団交をしても変わらない旨発言したことを問題視する。しかし、当該発言は組合の要求が必ず実現するわけではないとの一般論を述べたにすぎないとみるべきであって、組合の主張は採用できない。
 さらに組合は、同年8月8日の団交において、会社がDの年収の割合を60%や70%とした場合の試算を準備していなかったことを問題視する。しかし、組合が同団交までに当該試算を提示するよう会社に求めたと認めるに足る疎明はなく、当該資料を提示しなかったことをもって不誠実団交とまではいえない。
 以上のとおりであるから、Dの継続雇用問題に関する会社の対応は不誠実団交に当たるとまではいえない。
2 組合員に対し、本件通知書を交付したことについて
 認定した事実によれば、本件において、組合員らによる腕章着用は企業秩序を乱すおそれがないとまではいえず、実質的にみても、就業規則に違反するものというべきである。また、会社において、就業時間中の組合活動は一部の活動に限定して認められていたところ、少なくとも、腕章着用は容認されていた組合活動に該当するとはいえない。したがって、会社が組合員に対し、就業時間中の腕章着用の中止を求めたことには相応の理由があり、組合嫌悪意思によるものとまではいえない。
 また、会社は、組合に対し、複数回にわたり腕章着用の中止を求め、警告書により賃金減額も含めた措置をとる旨通知したが、その後も組合員らが腕章着用を中止しなかったことから、本件通知書により通知したのであり、このような対応が合理性を欠くとはいえない。また、本件通知書の内容をみても、相当性を欠くものとは認められない。
 以上のとおりであるから、本件通知書の交付は支配介入には当たらない。 
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