労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成26年(不)第13号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y会社 
命令年月日  平成28年2月18日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が平成26年夏季一時金の団交において、①申立人組合との交渉過程で合意・確認したところに反し、次の団交で当初回答からの増額回答をしなかったこと、②一時金とは無関係の、過去に会社が支払義務を認めた債務の一部支払をもって増額分に充てるという提案をしたこと、③組合が求める販売費及び一般管理費の内訳を開示しないこと、④妥結に至っていない一時金を一方的に支払うことで団交を打ち切ろうとしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 兵庫県労委は会社に対し、団交において販売費及び一般管理費の内訳の概要を説明すること等を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y会社は、申立人X組合との平成26年夏季一時金の団体交渉において、販売費及び一般管理費の内訳の概要を説明するなどして、申立人組合の理解を得られるよう努力しなければならない。
2 その余の申立ては棄却する。 
判断の要旨  1 第2回団交での確認事項の履行について
 認定した事実によれば、被申立人会社は第2回団交において、組合員の手取りが多少なりとも増える方策を講じる意思の下に、「次回団交で、プラスなんぼかの発表はさしてもらうわ。」、「計算するわ、な。」、「あんまり期待せんといてよ。」などと発言した。申立人組合が、会社が一時金の額を当初回答の0.5か月分から多少なりとも増やす意思を有していると受け止めたことは理解できるところである。
 他方、会社は、上記の発言をする際に、過去に会社が支払義務を認めた債務(以下「労働債権」)の一部を弁済することも1つの案として考慮していたことが認められる。それは、そもそも支払時期が確定していない債権であったものを一時金支給と同時に支払うということであり、現に平成26年8月8日の一時金支給日に支払われていることからすれば、上記発言の「プラスなんぼか」の具現であるともいえるものであり、結果として組合が主張するように、会社が上記団交での確認事項を履行しなかったとまではいえず、したがって、会社の対応が不誠実とはいえない。
2 労働債権の一部弁済の提案について
 組合は、会社が第3回団交において労働債権の一部弁済を対案として提示したことは、不誠実極まりなく、団交拒否に当たると主張する。
 しかし、仮に組合がこの提案に承服できないのであれば、応諾せず、団交を更に継続すればよいのであるから、交渉過程での自由な提案を制限すべきいわれはない。
 また、この提案は組合にとって受け入れ難いものであるとしても、それ自体が不条理なものとはいえないし、一時金支給時に同時に支払うというのであれば、一時金とは全く関係がないとまではいえない。
 したがって、会社が労働債権の一部弁済を対案として提示したことは、不誠実であるとまではいえない。
3 販売費及び一般管理費の内訳の開示について
 会社は、組合の要求を受けた後も、販売費及び一般管理費の内訳については組合がその内容を理解するのに必要と思われる情報を明らかにしていない。
 しかし、団交において、会社には交渉妥結に向けて組合の理解を得るために必要な資料を示して説明するなどの努力をすべき義務があり、このような対応は、会社の経営状況が一時金についてどの程度の支払が可能な状況かについて、組合の理解が得られるように説明する努力を十分に尽くしたとは認め難い。
 したがって、このような会社の対応は、全体として誠実さに欠ける交渉態度であると評価せざるを得ず、労組法7条2号に該当すると判断する。
4 一時金の支給について
 会社は、26年8月8日、組合から労働債権の一部弁済に関する協定書の案をファックスで受け取った後、同日、組合に対し、労働債権の一部弁済額の振込みを行い、また、一時金支払明細書を組合員に配付するとともに、同人らの銀行口座に一時金を振り込んでいる。これらの行為は、会社が、組合が労働債権の一部弁済に応じ、一時金については0.5か月分で妥結する意思があると即断して行われたものと認められ、そのこと自体は無理からぬことといえる。
 また、会社においては、過去に正式な協定書がなくても支給した事実があることもあり、特段交渉を打ち切るために振り込んだとは認められない。さらに、その後、第4回と第5回の団交に応じていることからも、会社が交渉の打切りをもくろんで支給したとは認められない。
 以上のことから、会社に、一時金の支給を行うことで交渉を終結させようとの作為があったとは認められず、労組法7条2号に該当しないと判断する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約179KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。