労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成25年不第18号
デイベンロイリネンサプライ不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、同X2支部 
被申立人  Y会社 
命令年月日  平成28年1月19日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   以下の点が不当労働行為に該当するか否かが争われた事案である。
①平成24年5月以降、被申立人会社が申立人組合に対して財務諸表を提示していないこと。
②24年12月5日の団交で、会社が団交への参加人数に異議を唱えたこと。
③24年12月14日の会食時における代表取締役専務B1の言動
④24年12月28日及び25年1月4日に、会社が残業代清算について従業員の同意を取り付けたこと。
⑤24年12月28日に、会社が「お年玉」を従業員に支払ったこと。
⑥25年1月18日及び22日付けで組合の提出した車両貸出申請を会社が拒否したこと。
⑦25年2月1日から、会社がタイムカードを廃止したこと。
⑧25年1月30日に、会社が従業員協議会代表者選挙を実施したこと、並びにその際、支部副執行委員長A2の所属する川崎営業所で選挙をしなかったこと、及び支部書記長A3が東京事業部で立候補できなかったこと。
⑨25年2月に開催された三六協定締結のための従業員過半数代表者選挙説明会における、組合員A1に対するB1の言動、並びに本社及び物流センターでの当該選挙においてA3及び当時の支部執行委員長A4が落選したこと。
⑩25年6月25日付けで、会社が会社敷地・施設内での組合の集会及び社内定期便の利用の禁止を通知したこと。
⑪会社がA3に対して25年7月以降の給与支給停止を通知したこと、及び7月分給与から勤怠控除したこと。
⑫25年7月1日付けで、会社がA3に対して団交を経ないで人事異動を通知したこと。
⑬25年7月8日付けで、会社がA1に対して配置転換をしたこと。
⑭会社が組合員A5の復職を認めなかったこと。
⑮組合員A6及びA7の組合脱退に関係する会社の行為
⑯A4、A3、A1ら組合員7名に対する25年冬季一時金の支払
⑰26年1月14日に、会社がA1に対して残業を禁止したこと。
⑱25年10月以降、会社がA2及びA1に対して残業代を支払っていないこと。
⑲26年7月23日に開催された団交において、会社が正社員に対する26年夏季一時金の平均支給率について具体的な数字を開示しなかったこと。
 東京都労委は会社に対し、1 組合に対する財務諸表等必要な資料又は具体的な数値の提示、2 社内定期便利用禁止の通知をなかったものとして取り扱うこと、3 A1に対する配転命令をなかったものとして取り扱うこと等、4 組合員に対する組合からの脱退勧奨の禁止、5 A1に対する25年冬季一時金の額の是正等、6 組合に対する26年夏季一時金の平均支給率の開示、7 文書の交付・掲示、8 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y会社は、申立人X1組合及び同X1組合X2支部に対し、経営状況が厳しいことを説明する場合は、財務諸表等必要な資料を提示し、又は具体的な数値を示すなどしなければならない。
2 被申立人会社は、平成25年6月25日付社内定期便利用禁止の通知をなかったものとして取り扱わなければならない。
3 被申立人会社は、申立人組合らの組合員A1に対する25年7月8日付配置転換命令をなかったものとして取り扱い、同人を原職若しくは原職相当職に復帰させなければならない。
4 被申立人会社は、申立人組合らの組合員に対し、組合からの脱退を勧奨してはならない。
5 被申立人会社は、申立人組合らの組合員A1に対し、25年冬季一時金について、0.7か月分の支給率で計算した額に是正し、是正した額と既支払済額との差額を支払わなければならない。
6 被申立人会社は、申立人組合らに対し、26年夏季一時金の平均支給率を開示しなければならない。
7 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社の本社及び各営業所の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
記(省略)
8 被申立人会社は、第2項、第3項、第5項、第6項及び第7項を履行したときは速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
9 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 財務諸表の提示について
 認定した事実によれば、被申立人会社は、経営陣が交代して以降、申立人組合の力が強かった過去の労使関係が経営の障害であり、見直すべきであるという方針の下に、誤った数字が機関紙に掲載されたとして、これを殊更に取り上げ、組合に対し、財務諸表等の経営状況の分かる資料を一切開示しないことによって組合の交渉力の弱体化を企図していたといわざるを得ず、このことは、組合の運営に対する支配介入に当たる。
2 団交への参加人数に異議を唱えたことについて
 団交の冒頭、会社の代表取締役専務B1が組合側の参加人数に異議を唱え、退出しようとした経緯が認められるが、会社の常務がこれを制止し、引き続き団交が行われたことなどからすると、組合の運営に対する支配介入に該当するとまではいえない。
3 24年12月14日の会食時におけるB1の言動について
 B1の発言の趣旨は、当時、組合が未払残業代の支払について裁判所に提訴することを検討していた中で、組合からその検討状況を聴取し、経営の再建に向けて協力を求めたものであるとみるのが相当であり、組合を威嚇したり、動揺させようとしたものとはみられない。したがって、同人が当時の組合の支部執行委員長A4らを脅して提訴を阻止しようと働きかけたとはいえず、組合の運営に対する支配介入を行ったという組合の主張は採用できない。
4 残業代清算について従業員の同意を取り付けたことについて
 組合と会社が未払残業代の支払について交渉中で、組合が会社の提案に異論を唱えていた中で、組合員を含む従業員と個別に面談して同意を取り付けようとした会社の行為は、組合の存在を殊更に無視したものであり、組合の運営に対する支配介入であるといわざるを得ない。
5 「お年玉」を従業員に支払ったことについて
 会社は、組合の存在を軽視し、一時金について、組合の関与を排除して決定、支給しようとして、組合からの要求を拒否した上で「お年玉」を支給したものであると評価するのが相当である。したがって、会社が「お年玉」を従業員に支払ったことは、組合の運営に対する支配介入に当たる。
6 組合の提出した車両貸出申請を拒否したことについて
 会社は、組合との間で真摯に協議して合意形成を図る意思もなく、一方的に社有車両の貸出しを禁止したと評価せざるを得ず、前記4や前記5に係る一連の経緯を勘案すると、組合を弱体化させることを企図して組合の貸出申請を拒否したとみるのが相当である。したがって、会社が組合の貸出申請を拒否したことは組合の運営に対する支配介入に該当する。
7 タイムカードを廃止したことについて
 会社は、残業代の支払を求める組合の要求を排除し、残業代の抑制を実現するために、組合と十分な協議をせずに、一方的にタイムカードを廃止したものと評価するのが相当である。したがって、タイムカードを廃止したことは、組合の運営に対する支配介入に当たる。
8 従業員協議会代表者選挙を実施したこと等について
 会社の設立した従業員協議会は、労働組合が果たす役割と近似する機能を有するといわざるを得ない。そして、会社は、必要性が乏しいにもかかわらず、組合の機能を代替する従業員協議会を早期に設立することで、組合との団交を形骸化させ、組合の弱体化を図ったとみることができる。したがって、会社が従業員協議会代表者選挙を実施したことは組合の運営に対する支配介入に当たる。なお、その際、支部副執行委員長A2の所属する川崎営業所で選挙をしなかったこと及び支部書記長A3が東京事業部で立候補できなかったことについては、不利益取扱いに当たるとはいえない。
9 三六協定締結のための従業員過半数代表者選挙説明会におけるB1の言動等について
 説明会においてB1が支配介入と評価され得る発言を行った事実を認めるに足りる疎明はなく、組合の主張は採用できない。また、本社及び物流センターでの選挙においてA3及び当時の支部執行委員長A4が落選したことに関しては、会社が両人に投票しないよう従業員に働きかけた事実は認められず、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。
10 集会及び社内定期便の利用の禁止を通知したことについて
 集会の開催等を禁止する通知については、争議行為の際の会社敷地内、施設内での組合集会の開催が労使慣行上、認められてきたことについて、具体的な疎明がないことから、組合の主張は採用できない。社内定期便の利用禁止の通知については、会社が組合活動を妨害し、組合を弱体化させることを企図して行ったとみるのが相当であり、組合の運営に対する支配介入に当たる。
11 A3に対して25年7月以降の給与支給停止を通知したこと等について
 会社は、組合に対する嫌悪の念から、組合専従として活発な組合活動を行うA3の活動に大きな打撃を与え、組合を弱体化させることを企図して、労使の合意により相当期間継続してきた組合専従制度を十分な協議もなく性急に変更し、同人への給与支給を停止したといえる。したがって、給与停止を通知したこと等は、組合の組織、運営に対する支配介入に当たるというべきである。 
12 A3に対して団交を経ないで人事異動を通知したことについて
 A3の組合専従からの職場復帰に際して、会社が組合と協議せずに人事異動の通知をしたことは異例の取扱いであったといえる。そして、前記11のとおり、会社が同人に給与支給停止を通知したこと等を考慮すると、会社は一方的に人事異動を通知して組合の存在を軽視するとともに、組合の弱体化を企図した支配介入行為を行ったと評価するのが相当である。
13 A1に対する配置転換について
 会社は、人事異動等について組合との合意が必要であったことを経営の支障と考え、組合の存在を軽視して組合の関与を排除することを企図し、その上で、組合の中心的な存在として会社の方針に異を唱えるなどしていたA1に対する嫌悪の念から、入社以来従事してきたルート営業を外して同人の評価を下げるとともに、職場内で孤立させることを企図して本件配置転換を実施したものとみざるを得ず、このことは組合の弱体化及び組合活動の萎縮効果をもたらすものであるといえる。したがって、A1の配置転換は同人に対する不利益取扱いであるとともに、組合の運営に対する支配介入に当たる。
14 組合員A5の復職を認めなかったことについて
 A5は、産業医の意見書等によれば、会社において正社員としての業務を行うことが難しい状態であったといわざるを得ない。そして、パート又はアルバイトとしての復職に向けて適性検査を受けたものの、目標水準を満たさなかったため、組合が同人の自主的な練習の後、再度、検査の申入れをすることになっていたが、申入れはなされていない。このような経緯からすると、会社が同人の復職を認めなかったことは、やむを得ないものといわざるを得ず、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。
15 組合員A6及びA7に対する組合脱退勧奨について
 認定した事実によれば、会社は、A6に対し、組合からの脱退を勧奨して支配介入を行ったといえる。一方、A7については、会社が脱退勧奨をしたとはいえない。
16 組合員7名に対する25年冬季一時金の支払について
 会社は、組合及びその中心的な存在であるA1を嫌悪し、同人を会社から排除すべく、同人がそれなりに良好な勤務成績を上げていたにもかかわらず、恣意的な評価基準により、同人の評価を下げたものとみざるを得ず、同人に対する25年冬季一時金の支払は同人の組合活動を理由とした不利益取扱いに当たる。その他の6名の組合員については、不利益取扱い又は支配介入に当たるとはいえない。
17 A1に対して残業を禁止したことについて
 A1に対する会社の東京事業部次長の発言の趣旨は、不必要な時間外労働を行わないように伝えたものと評価すべきであり、会社が他の従業員に対しても同様な呼びかけをしていることなどからすると、会社がA1に対し、残業を禁止して不利益取扱いを行ったとはいえない。
18 A2及びA1に対する残業代不払について
 A2については、残業代の計算について組合と会社が協議した上、同人がその支払について会社と合意しており、組合の主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。
 A1については、残業代の計算について組合と会社が協議中であったと評価することができ、会社が支払っていないことをもって不利益取扱いに当たるとはいい難い。
19 団交において、26年夏季一時金の平均支給率を開示しなかったことについて
 一時金の支給率は組合が交渉を行うに当たって必要な情報であるといえ、これを開示しようとしなかった会社の姿勢は団交で妥結しようとする意思を欠いたものであり、従来の慣行を一方的に変更して団交を無力化することにより、組合の弱体化を企図したものとみざるを得ない。また、会社は団交において、組合の要求に真摯に対応しておらず、合意達成の可能性を模索する姿勢がみられない。したがって、夏季一時金の平均支給率について具体的な数字を開示しなかったことは、組合の運営に対する支配介入及び不誠実団交に当たる。 
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