労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  広労委平成27年(不)第2号・第3号
羽釜水産・丸羽水産不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y1(個人)、Y2会社 
命令年月日  平成28年1月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①被申立人Y1が中国人技能実習生である組合員A1及び同A2を、また、被申立人会社Y2が同じく中国人技能実習生である組合員A3及び同A4を平成26年10月24日をもって解雇し、組合分会つぶしを図ったこと、②Y1及びY2が団交を拒否し、及び不誠実な団交を行ったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 広島県労委はY1及びY2に対し、上記組合員の解雇日の翌日から再就職の日までの賃金相当額等の支払及び文書交付を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1は、申立人組合員A1及び同A2に対して、同人らの解雇日の翌日から各再就職の日までの賃金相当額及び賃金支払日の翌日から支払済に至るまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払わなければならない。
2 被申立人Y2会社は、申立人組合員A3及び同A4に対して、同人らの解雇日の翌日から各再就職の日までの賃金相当額及び賃金支払日の翌日から支払済に至るまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払わなければならない。
3 被申立人Y1は、本命令書受領の日から2週間以内に、後記(1)の文書を申立人に交付しなければならない。
4 被申立人Y2会社は、本命令書受領の日から2週間以内に、後記(2)の文書を申立人に交付しなければならない。
5 申立人X組合のその余の申立てを棄却する。
記(1)(省略)
記(2)(省略)
判断の要旨  1 技能実習生である組合員を解雇したことについて
 被申立人Y1及び被申立人会社Y2(以下、両者を「会社」という。)の解雇理由証明書に記載された解雇理由は、「時間外労働の割増賃金を理由に紛争(裁判)となる為、健全な信頼関係による労使の関係を築くことが出来なくなったこと」、「社員寮での喫煙を禁止しているが、何度注意しても改善されなかったこと」及び「無断欠勤をしたこと」であるが、これらはいずれも合理的な解雇理由とは認められない。また、会社は本件審査において解雇理由を、申立外個人事業主Cの下でのアルバイトという不正行為により実習が不可能であると判断したこと等に訂正したが、これらも合理的な理由とは認められない。
 他方、会社は平成26年10月17日に組合員4人に対して解雇告知をしたが、それは第3回団交が行われ、その結果を受けて申立人組合が裁判を行うことを決定した日の翌日であり、解雇の決定時期と組合活動の時期とが極めて近接している。また、上記のとおり、合理的な解雇理由がない中、上記4人が組合に加入し、正当な組合活動として時間外労働の割増賃金の支払の要求を開始し、裁判を行うことを決定したことが唯一の変化であった。加えて、解雇当時、会社に在職し、上記4人と同様に勤務していた他の技能実習生は解雇されることなく、その後も就労を続けており、この時期に解雇されたのは上記4人のみであったことに鑑み、組合活動を理由として解雇されたものと推認され、組合に対する不当労働行為意思が認められる。
 以上のとおりであるから、本件解雇は組合及び組合員4人の組合活動を嫌悪してなされた不利益取扱いであると認められ、それは同時に、会社から組合員4人を排除し、組合の分会を消滅させ、組合活動を弱体化させる行為でもあり、労組法7条3号の支配介入に該当する。
2 団交申入れに対する対応及び団交における対応について
(1)団交拒否
 組合からの26年7月28日と9月3日の団交申入れについて、Y1及びY2は何ら返答をしなかったことが認められる。また、9月3日の団交申入れに係る団交指定日である同月6日に組合がY1及びY2の事業所を訪れたところ、会社の代理人(Y1の次男)は不在であり、団交を行うことができなかった。このことについて、組合が会社に抗議の電話をかけたところ、会社は団交は必要ないなどと返答しており、団交を拒否する態度であったと認められる。このほか、会社が組合の団交申入れを拒否する正当な理由が存するとの疎明はなく、また、会社が団交申入れに対して日程調整を行わず、団交日に不在にしたことについて、正当な理由があったものとは認められない。
 以上のとおりであるから、団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由なく団交を拒否するものであり、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
(2)団交における不誠実な対応
 Y1が26年7月21日及び8月1日の団交に、Y1及びY2が同年10月16日の団交にそれぞれ形式上応じているものの、時間外労働の割増賃金に係る会社の考え方について、具体的、合理的な説明を欠いていたこと、当初から自らの見解に固執し、団交での話合いに応じる姿勢ではなかったこと、組合員4人の解雇・帰国に関する威圧的な発言があったことから、団交における誠実さを欠いていたものといわざるを得ず、同条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約217KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。