労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成26年(不)第58号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成28年1月8日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人市の平成22年4月1日時点の自動車運送事業非常勤職員就業要綱(以下「就業要綱」)には、市バスの乗務員である非常勤職員が道路交通法の規定により免許を取り消されたとき、免許の効力を停止されたとき等は委嘱期間にかかわらず、その職を失う旨が規定されていたところ、申立人組合は市に対し、「免許の効力を停止されたとき」の文言を削除するよう要求し、これについて団交で協議が行われた。25年3月、市は申立外C1組合との間で協定書を締結したが、その第5項に、運転免許停止の行政処分を受けた場合でも、講習を受け、停止期間が1日に短縮されたときは職を失わないこととする旨が規定されていた。そして、市は同年4月1日付けで、上記協定書の規定と同様にして免許の効力停止期間が1日に短縮されたときは「免許の効力を停止されたとき」から除かれることとなるよう就業要綱を改正した。
 また、市は、組合活動を理由とする勤務変更の取扱いに関し、C1の組合員についてはこれを認め、執行委員長等から変更願が提出されると、市が交代する乗務員を探し、仕業を変更するという取扱いをしているが、組合の組合員についてはかかる措置を認めていない。
 本件は、以上のような状況の下で、①市がC1との間で締結した上記の協定と同内容の協定を組合との間では締結しないこと、②組合活動を理由とする勤務変更の取扱いについて組合とC1及び申立外組合C2との間に差があること、③これらのことを議題とする組合との団交における市の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、1 上記①の協定の締結申入れに応じること、2 組合の組合員に対し、C1の組合員に認めているのと同じ基準で、組合活動を理由とする勤務変更を認めること、3 文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人からの、非常勤嘱託員が道路交通法第103条の規定により30日間の運転免許停止の行政処分を受けた場合であっても、有給休暇、夏季休暇、公休日等により欠勤することなく停止処分者講習を受け、当該運転免許の停止期間が1日間に短縮されたときは、その職を失わないこととするとの協定の締結申入れに応じなければならない。
2 被申立人は、申立人の組合員に対し、申立外C1組合の組合員に認めているのと同じ基準で、組合活動を理由にする勤務変更を認めなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略) 
判断の要旨  1 申立人組合との間で申立外C1組合との協定と同内容の協定を締結しないことについて
 組合が被申立人市に対し、平成26年2月21日付けの文書で、C1との協定と同内容の協定を締結することを要求して以降、4回の団交を経て、本件申立て時においても、市が当該協定の締結に応じていないことが認められ、市は組合とC1との間で非常勤職員の労働条件に関し、異なる対応をしているといえる。
 この点について、市は25年3月にC1との協定締結に至った理由として、市が24年12月にC1と組合に労働条件の見直しについて協議を申し入れたところ、C1からは「処遇面での総合的な見直しの中で解決を図りたい。特に非常勤職員の処遇改善を検討できないか」との要望があったのに対し、組合は全て反対との姿勢を示し、両者が異なる対応をしたためである旨主張する。しかし、上記の市の協議申入れには非常勤職員の1日免停に関する事項は含まれていない。また、組合が団交の後、労働条件等の一部改定については組合との誠実な協議と合意の成立を待って実施するよう求めたにもかかわらず、市は25年4月1日付けで非常勤職員就業要綱等を改正し、それが組合の組合員にも適用されたことが認められ、市は組合の同意を得ないまま、C1と合意した内容で組合の組合員を含む非常勤職員の労働条件を改定したというのが相当である。
 以上のこと等からすると、同一の条件の下で組合とC1が異なる選択をしたために、C1との間のみで非常勤職員が1日免停となった場合に失職しない旨の条項を含む協定が締結されたということはできず、合理的な差異に基づく取扱いの相違であるとの市の主張には理由がない。
 市はまた、組合と協定を締結しない理由として、改正後の就業要綱に1日免停で失職しないことが盛り込まれたことを挙げる。しかし、就業要綱は使用者たる市がその考えにより設定、変更するものであるのに対して、協定書は労使間の合意であり、その内容を変更しようとすれば、相手方である組合の意向を無視できないのであるから、就業要綱が従前からの組合の要求を満たすように改正されたからといって、市が組合からの協定締結申入れに応じる必要がないというものではない。
 以上のとおりであるから、市が組合との間で協定を締結しないことは、組合員の労働条件に関する組合の要求事項について協定化を拒み、正当な理由なくC1に比して均衡を欠く扱いをしたものというのが相当であって、かかる行為は組合を弱体化するもので、組合に対する支配介入に当たり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
2 組合活動を理由とする勤務変更の取扱いについて組合と別組合との間で差があることについて
(1)組合とC1との差の有無等
 市は、組合活動を理由とする勤務変更の取扱いをC1には認め、組合には認めていない理由について、C1の役員の勤務変更に関し、住民監査請求がなされ、これに伴い、C1に廃止を申し入れており、このような状況下で、組合に新たにこれを認めることはできない旨主張する。
 しかし、市とC1がこの問題について協議した上、双方が見直しに向けて努力するとの覚書を締結してから2年が経過しているが、C1についての勤務変更の取扱いは変更されておらず、市がこれを廃止しようとしていたかについては疑問を持たざるを得ない。また、市が住民監査請求の結果を踏まえて制度の見直しをすることについて積極的な態度を取っていたともいい難い。さらに、組合が市に対し、C1との協議が終了するまでは組合に対しても組合活動を理由とする勤務変更を認めることを求めたが、市はこれに応じていない。
 以上のことからすると、組合とC1に対する取扱いの違いについて市の挙げる理由を合理的なものということはできず、市は両労働組合間の取扱いの差を放置していたというのが相当である。
(2)組合と申立外組合C2との差の有無等
 市には、前記の勤務変更の取扱いとは別に、乗務員が特定の日について他の乗務員の同意を得て、互いの仕業を入れ替えることを市に願い出る、仕業変更の制度がある。平成26年6月、C2の執行委員長は2回にわたり、この制度による市の許可を受けて他の乗務員と仕業を交代したが、これは、仕業変更は有給休暇が取得できない場合に認められるなどとする運用基準に反して行われたものであったと解される。そして、変更前の勤務時間中にはC3の執行委員会等の会議が設定されており、そのことが記載された連絡書が市の運行管理者にも提出されていた。そうすると、市は、C2の執行委員長が執行委員会への出席等の組合活動のため、仕業変更を求めたことを認識できる状況下で、同人からの仕業変更許可願いを運用基準に反して認めたと解され、C2に対して、実質的には組合活動を理由とする勤務変更を認めるに等しい取扱いをしていたというべきであって、組合に対し、合理的な理由なく差を設けたものと判断される。
(3)結論
 以上のとおりであるから、市の組合に対する組合活動を理由とする勤務変更の取扱いには、C1、C2のいずれと比較しても差があり、それに関して合理的な理由はないと判断され、かかる行為は組合に対する支配介入に当たり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
3 団交における対応について
 前記1の協定の締結を議題とする団交において、市は、組合とは協定を締結しないとの回答に固執し、真摯に協議を行う意思を欠いた不誠実な対応をしたというのが相当である。また、前記2の勤務変更の取扱いを議題とする団交において、市は、組合からの具体的な要求や質問に真摯に応じる姿勢を欠いた不誠実な対応をしたというのが相当である。これらの行為は、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
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