労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成26年(不)第27号
チルディー不当労働行為審査事件 
申立人  X組合 
被申立人  Y会社 
命令年月日  平成28年1月8日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   組合員Aは雇用期間を平成25年10月1日から26年3月31日までとする有期雇用契約に基づき、被申立人会社の工場で夜間の製造業務に従事していた。会社は同年2月5日の朝礼において、同年4月以降、製造業務の始業及び終業の時刻を2時間後ろにずらす旨従業員に説明し、同年3月上旬、Aに対し、就業時間がこのように変更になる旨記載された雇用契約書(労働者の氏名欄等は無記載)を手交した。申立人組合は、Aの就業時間の変更の問題に関する団交の開催を求める要求書を会社に送付し、同年4月1日に団交が開催された。
 本件は、会社が①26年3月31日付けでAを雇止めしたこと、②同年4月28日にAに郵送した「雇用保険被保険者離職票-2」に同人から契約の更新又は延長を希望しない旨の申出があった旨の記載をしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成26年3月31日付けで組合員Aを雇止めにしたことについて
(1)不利益性の存否
 Aは本件雇止めにより労働者としての身分を喪失しており、身分上及び経済上の不利益があることは明らかである。
(2)不当労働行為性の存否
 Aが申立人組合に加入してから本件雇止めに至るまでの労使事情についてみると、被申立人会社は同人の組合加入を認識して以降、本件雇止めに至るまで雇用契約を2回更新しており、これらの契約更新に関し、組合からの更新限度年数の設定問題に関する団交申入れに応じ、雇用契約書の一部に抹消線等を付記する方法で雇用契約を更新する旨を組合と確認し、他の従業員とは異なる形式で雇用契約を更新することを認めるなどの配慮をしている。以上の事実からすると、会社が組合員であるAを殊更に嫌悪し、同人の排除を企図していたとする事情はうかがえない。
 次に、本件雇止めの経緯についてみると、会社は、雇用契約が締結されていない状態となった26年4月1日、Aが提出した「第4条①項については、納得していません。今までどおりの時間で働らきます。」と加筆記載された加筆済26.4.1雇用契約書を受け取らず同人の就労を拒んだものの、会社が先に手交した雇用契約書によるのであれば雇用契約の更新をする意思がある旨を組合に通知している。以上の事実からすると、少なくとも本件雇止め時点において、会社にはAの雇用契約の更新を殊更に拒む意思はなかったことがうかがえる。一方、Aは、同年4月中旬頃まで従前の始業時間である午後9時に間に合うように出勤し続けていたことから、あくまでも従来どおりの就業時間での就労を求める堅固な意思を表示し続けていたものといえる。
 そして、そもそも就業時間の変更は組合員であるAだけではなく、製造業務に従事する全従業員に一律に行われており、変更を行った理由は新規の取引を始めるに当たり、商品の納入時間を調整する必要があったことによるものであることから、Aのみを狙い撃ちにしたものではなく、業務上必要かつやむを得ない措置であったといえる。加えて、Aの従事する製造業務は共同で行う流れ作業であったことから、会社がAのみを2時間早い従前の始業時間で勤務させることができなかったのは当然のことといえる。
 これらのことからすると、雇用契約の更新に至らなかった理由について、Aが組合員であったとする事情はうかがえないことから、本件雇止めが組合員であることを理由とした不利益取扱であったとはいえない。
(3)合理性の存否
 組合は、Aについては配置転換が可能であったことから、本件雇止めは合理性がない旨主張する。
 しかし、冷蔵庫業務への配転については、Aの日本語能力が同業務で求められる水準に十分に達していたとはいえないことから、困難であったといわざるを得ない。
 また、盛付業務への配転については、同業務は製造業務に比べ作業が容易で時給が200円ほど低く設定されており、製造業務との間の人事異動は行われていないことやAとしても不本意な異動となることが想像に難くないことからすると、容易に行い得るものであったとはいえない。
 そして、Aは就業時間の変更に応じられない具体的な事情等について何ら説明しておらず、このような状況の下では、会社が同人のみを就業時間の変更がない業務に配転してまで契約を更新するといった特別扱いをすべき事情はないものといえる。
 これらのことからすると、会社がAを配転することなく、雇止めとしたことについては合理性が認められる。
(4)小括
 以上のとおりであるから、本件雇止めは労組法7条1号の不当労働行為には当たらない。
2 離職票に労働者から契約の更新又は延長を希望しない旨の申出があったと記載したことについて
(1)不利益性の存否
 当該記載により、Aは雇用保険の受給に3か月間の受給制限がかかることになったことからすれば、経済上の不利益があるのは明らかである。 
(2)不当労働行為性及び合理性の存否
 認定した事実によれば、本件雇止め以降も就業時間の変更には応じないとするA及び組合の堅固な意思がうかがえることに加えて、前記1(2)のとおり、会社には同人の雇用契約の更新を殊更に拒む意思はなかったものといえ、組合員である同人を嫌悪し、不利益を与える目的をもって、離職票に労働者から契約の更新又は延長を希望しない旨の申出があったとの記載をしたとする事情まではうかがえない。
 また、Aが会社に対し、就業時間の変更に応じることができない理由を具体的に説明しないまま、会社の依頼に反した加筆済26.4.1雇用契約書を再び提出したことをもって、会社が同人には雇用契約を更新する意思がないとの評価をするに至ったことは無理からぬ面があるといえ、会社が離職票に上記のような記載をしたことが不合理であったとはいえない。
 これらのことからすると、会社が離職票に労働者から契約の更新又は延長を希望しない旨の申出があったと記載したことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、全体として不合理とはいえない。
(3) 小括
 以上のとおりであるから、会社が、本件離職票に労働者から契約の更新又は延長を希望しない旨の申出があったと記載したことは、労組法7条1号の不当労働行為には当たらない。  
掲載文献   

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