概要情報
事件名 |
ファビルス |
事件番号 |
福岡労委平成27年(不)第1号 |
申立人 |
福岡地区合同労働組合 |
被申立人 |
株式会社ファビルス |
命令年月日 |
平成27年12月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
申立人組合は被申立人会社に対し、福岡労委平成25年(不)第5号事件に係る福岡県労委の命令の履行を求める旨及びこれに関する団交の開催を申し入れる旨を記載した平成26年4月25日付け要求書を発した。本件は、①この団交申入れに対する会社の対応、②組合が会社の本社総務部長Y2を団交に出席させるよう要求したのに対し、会社が同人を出席させなかったこと、③会社が執行役員福岡支社次長Y3を団交の責任者としたこと、④Y3が同年10月29日に組合員X2に対し、「組合を辞めて会社に戻ってきてくれ」などと述べたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
同労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 平成26年4月25日付け団交申入れに対する対応について
申立人組合は、被申立人会社が組合への回答書で、福岡労委平成25年(不)第5号事件の命令に対し、取消訴訟を提起すると回答したことは団交拒否に該当すると主張する。
しかし、会社は上記命令の履行要求については拒否の意思を示したものの、団交要求については何らの意思も示していない。また、本件要求書には「日時、場所については追って協議する」と付記されており、会社が団交については具体的な協議があってから対応しようと考えたとしても、うなづけないではない。さらに、会社の回答書を受けた後の組合の対応をみると、団交の諾否についての記載がないことに関し、会社に確認等を行った事実は認められず、また、日時、場所についての協議を申し入れてもいない。
これらのことからすると、本件において団交が開催されなかったのは組合側の姿勢によるところが大きく、会社が回答書に諾否の意思を示していないからといって、会社が団交を拒否したものとみることはできない。したがって、会社の対応は労組法7条2号の不当労働行為に該当しない。
2 会社の本社総務部長Y2の団交出席について
会社が、総務的な仕事についての経験がないY2を団交に出席させなかったことや団交に参加した経験のある福岡支社次長Y3を団交責任者としたことには、相当の理由があると認められる。また、団交にY2が出席せず、Y3が出席したことにより、交渉に支障が生じ、又は交渉が形骸化した事実は認められない。
したがって、会社がY2を団交責任者として団交に出席させなかったことは労組法7条2号の不当労働行為に該当しない。
3 Y3を団交責任者に選任したことについて
組合は会社がY3を団交責任者に選任したことが労組法7条3号の不当労働行為に当たる理由として、①同人はX2に対する組合脱退勧奨等の組合員差別を行った当事者であること、②組合が要求するY2を出席させず、Y3を団交責任者としたことは組合軽視であること、③Y3は自らの負担でX2と飲食を共にしており、組合員とそのような関係の生じた者を団交責任者とすることは、組合が会社を追及するときにX2が躊躇する場面が生じかねず、組合の方針に混乱を来し、団交に支障が生じることを挙げる。
しかし、認定した事実によれば、これらの理由はいずれも認められない。ちなみに、上記③についてはY3が費用を負担したとはいえ、“組合のことについては気にする必要がない”旨のX2の同意を得た上で行われたものであり、同人が自らの意思でY3と飲食を共にした以上、それは組合内部の問題にすぎないのであって、そのことを理由に会社の団交責任者の選任に異を唱えることは認められない。
加えて、前記のとおりY3が団交責任者を務めた団交において、そのことにより支障が生じた事実もうかがえないことを併せ考えると、会社が同人を団交責任者としたことは労組法7条3号の不当労働行為に該当しない。
4 平成26年10月29日のY3のX2に対する言動について
同日の飲食は、X2への組合脱退勧奨を目的として行われたものとは認められないこと及びY3の発言に至る経緯、発言時の状況、発言の内容を併せ考えると、同人の言動をもってX2に対し、組合からの脱退を勧めようとしたものであったとまでいうことはできず、また、組合の活動を阻害するものであったということもできない。
したがって、同日のY3の言動は労組法7条3号の不当労働行為には当たらない。 |
掲載文献 |
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