労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  都労委平成22年不第89号・26年不第61号 
事件番号  都労委平成22年不第89号・26年不第61号 
申立人  X1労働組合、同X2地方本部、同X3支部 
被申立人  Y1株式会社、Y2株式会社 (Z) 
命令年月日  平成27年11月10日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社Y1は、平成22年6月16日、被申立人会社Zを設 立 し、Y1が運営していた自動車教習所A校の自動車教習事業を承継させる会社分割を行った。Y1はその際、A校の自動車教習事業に 従事する労働者の労働契約を承継させた。上記会社分割後、Zは申立人組合(支部)に対し、会社施設利用及びチェック・オフの 休止を通告した。また、Zは、平成22年から25年までの夏季及び冬季賞与について19年以前の支給額よりも大幅に減額した 金額を提示し、支部との合意に至らないまま、その提示した額で組合員に支給した。
 本件は、①Y1がZを会社分割したこと、②当該会社分割を議題とする団交におけるY1の対応、③Y1及びZが組合(支部) に対 し、会社施設利用及びチェック・オフの休止を通知し、その後、再開していないこと、④Y1及びZが上記の賞与について大幅に減 額した額を提示したこと、⑤賞与を議題とする団交におけるY1及びZの対応が不当労働行為に当たるか否かが争われた事案であ る。
 東京都労委はZに対し、1 組合(支部)に対する会社施設利用休止の通知をなかったものとすること等、2 組合(支部)の 組合員に対し、上記の賞与として一定額を支払うこと、3 賞与に関する団交について、必要な資料を開示するなどして誠実に応 じることを命じるとともに、Y1及びZに対し、文書の交付・掲示及び履行報告を命じ、その余の申立て を棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y2株式会社は、申立人X1 労働組合X2地方本部X3支部に対する平成22年7月15日付通知をなかったものとし、同支部から、利 用希望日の10日前までに会社施設利用の申出があった場合には、業務や施設管理に支障がない限り、同支部に対し会社施設を利 用させなければならない。
2 被申立人Y2は、申立人支部の組合員に対し、22年夏季賞与として金24万3,000円、22年冬季賞与とし て金14万7,000円、23年夏季賞与として金22万6,000円、23年冬季賞与として金13万円、24年夏季賞与とし て金18万6,000円、24年冬季賞与として金12万円、25年夏季賞与として金17万1,000円、25年冬季賞与とし て金10万3,000円を支払わなければならない。
3 被申立人Y2は、申立人支部の組合員の賞与に関する団体交渉において、①申立人組合らから、20年冬季賞与、 21年夏季及び冬季賞与として各5万円を提示した根拠の説明を求められたときには、提示額の算定根拠となる具体的な資料を開 示してこれを説明し、また、②各季賞与の参照期間におけるY2の売上高及び入所者数に関 する資料を開示する等し て、団体交渉に誠実に応じなければならない。
4 被申立人Y1株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同 一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に楷書で明瞭に墨書して、Y2本社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなけ ればならない。
年  月  日
  X1労働組合
  中央執行委員長 A1 殿
  X1労働組合X2地方本部
  執行委員長 A2 殿
  X1労働組合X2地方本部X3支部
  執行委員長 A3 殿
Y1株式会社
代表取締役 B1
   当社が、①平成22年6月16日を効力発生日とする会社分割を議題とした団体交渉及び②22年夏季賞与を議題とした団 体交渉において、必要な資料を開示して具体的説明を行わなかったことは、いずれも東京都労働委員会において不当労働行為であ ると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
   (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
5 被申立人Y2は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同一 内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に楷書で明瞭に墨書して、Y2本社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなけれ ばならない。
記(省略)
6 被申立人Y1及び同Y2は、第2項、第4項及び前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しな ければならない。
7 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社Y1が同Zを会社分割したことについて
 申立人組合らは、被申立人会社Zは資本金995万円の資産的基盤の乏しい会社であり、また、Y1に支払う不動産賃料が高額 で あること等により、いつでも破産や清算に陥る状態になっており、組合員が解雇され、組合(支部)が破壊されるおそれにさらさ れている旨主張する。しかし、資本金は計算上の数値にすぎないこと、金融機関からの借入金はないこと、不動産賃料は不動産鑑 定に基づき決定されており、Y1が恣意的に決定したものではないこと等からすれば、本件会社分割は組合のある自動車教習所A 校 をY1から排除し、もって組合らの弱体化を図ろうとしたものとは認められず、組合らに対する支配介入に当たるとはいえない。
2 会社分割を議題とする団交におけるY1の対応について
 Y1は実効的な団交を行うために、組合らが要求したY1及びA校の決算書、Y1とZの資産及び負債の明細、A校の分割計画 書 と いった経営資料を開示する必要があったといえるが、団交において必要な資料を開示して十分な説明を行ったとはいえない。した がって、本件会社分割を議題とする団交におけるY1の対応は不誠実な団交に当たる。
3 本件会社分割後のY1の使用者性について
 Y1はグループ会社の一員としてZの経営に関与していたとはいえるものの、Zの労働者の賃金、労働時間等の基本的な労働条 件 等に関して雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位を有していたと認めることはできない。したがっ て、Y1は本件会社分割後、Zの労働者のとの関係で労組法上の使用者に該当しない。
4 会社施設利用及びチェック・オフの休止とその後のZの対応について
 本件便宜供与(会社施設利用及びチェック・オフ)は少なくとも8年以上の期間、継続されてきたものであって、労使間の自主 的ルールとして尊重されるべきものであり、当事者がこれを破棄するためには相手方に対し、その理由を示してルール変更のため の交渉を行うことを要請されるといえる。しかし、Zは、本件便宜供与に関する労使協定の締結について団交が行われていたとこ ろであるにもかかわらず、組合らと協議することもなく一方的に便宜供与を休止したものであって、このような態様は組合らの組 織・運営に影響を及ぼすものといわざるを得ない。また、会社が本件便宜供与を継続することに格別の負担があったとはいえない し、休止しなければならない業務上の必要性があったとの疎明もない。他方、組合らが本件便宜供与を受けられなくなることは、 その活動にとって支障が大きい。
 以上のような事情を踏まえると、Zが本件施設利用を一方的に休止し、その後、再開しなかったこと、また、本件チェック・オ フを休止したことには合理的な理由がなく、組合活動を不当に制約するものであるから、組合らの組織・運営に対する支配介入に 該当する。
5 平成22年から25年までの夏季及び冬季賞与とこれらを議題とする団交について
 Zは前件(都労委平成21年不第106号事件)当時と異なる事情がないにもかかわらず、前件命令発出以降も、19年以前に 提示・支給していた賞与を基礎とすることなく、前件命令が不当労働行為であると認定した賞与提示額(5万円)を基礎として、 夏季及び冬季賞与を算出して提案しており、現在においても、賞与について組合(支部)の存在及び組合活動を嫌悪し、あえて意 図的に合理性のない金額を提示していると考えられ、支部組合員を殊更不利益に取り扱う意図があると強く推認される。
 したがって、Zが22年から25年までの夏季及び冬季賞与について19年以前の額よりも大幅に減額した額を提案したこと は、組合員に対する不利益取扱いに当たるとともに、組合らの団結ないし交渉力を減退させ、弱体化させる支配介入にも当たると いわざるを得ない。
 また、これらの賞与を議題とする団交において、Y1及びZが組合との合意達成に向けて、自らの回答が合理的であり、妥当な も のであることを具体的に説明し、納得を得ようとしていたとは到底認められない。したがって、Y1の22年夏季賞与に関する団交 における対応及びZの22年冬季から25年冬季までの各賞与に関する団交における対応は不誠実な団交に当たる。 
掲載文献   

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