概要情報
事件名 |
東京航業研究所 |
事件番号 |
都労委平成25年不第93号 |
申立人 |
東京統一管理職ユニオン |
被申立人 |
株式会社東京航業研究所 |
命令年月日 |
平成27年10月20日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社は、X2が主宰する個人事務所である文化財整理室に対し、平成13年春頃から文化財の調査・整理業務を発注してきた。16年6月、X2は会社の社長の依頼により同社の取締役に就任した。その後、会社とX2との間で、会社が発注した業務の範囲や代金をめぐってトラブルが生じるようになり、25年以降は発注が行われなくなった。同年7月、X2及び文化財整理室の従業員X3ら3名が申立人組合に加入し、組合は労働環境及び雇用条件等についての団交を会社に申し入れた。
本件は、会社が上記の団交申入れを、会社は組合員X2らとの関係で労組法上の使用者に該当しないとして拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
東京都労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員X2らの労働者性について
X2は、文化財整理室の主宰者として、被申立人会社との間で文化財整理業務の受注契約(業務請負契約)や建物賃貸借の契約を締結していたが、労働契約を締結した事実はない。同人は、会社との委任契約に基づく取締役であり、かつ、外注先の事業者であったと認められる。
申立人組合は、X2が使用人兼務取締役であって、その実態は取締役ではなく労働者であり、また、文化財整理室は会社の業務遂行に不可欠な労働力として会社組織に組み込まれていたと主張する。しかし、同人について、①事業組織への組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、⑥顕著な事業者性の有無などの諸要素を総合的に考慮しても、同人は労働契約によって労務を供給する者又はそれに準じて団交の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる労務供給者には該当せず、会社との関係において労組法上の労働者に当たるとはいえない。
組合はまた、組合員X3らが会社と事実上の雇用関係にある労働者であると主張するが、この主張は、労働者性の問題というよりも、会社が同人らとの関係で労組法上の使用者に当たるか否かの問題であると解されるから、後記2で判断する。
2 会社がX3らとの関係で労組法上の使用者に当たるかについて
認定した事実によれば、①X3らは文化財整理室の従業員であり、前記1記載のとおり、文化財整理室が会社の事業組織に組み込まれていたということはできず、②同人らは文化財整理室が会社から受注した業務に、X2の指示や進行管理の下に従事していたのであり、会社の指揮監督の下に業務を行っていたとはいえず、③会社が同人らの労働条件を支配・決定していたとも認められないから、会社が同人らとの関係において労組法上の使用者であるということはできない。
3 団交拒否について
前記1及び2のとおり、X2の労働者性は認められず、また、会社はX3らの使用者とは認められないのであるから、組合がX2らに関して申し入れた団交について会社に応諾義務があったとはいえず、会社が本件団交申入れに応じなかったことは正当な理由のない団交拒否には当たらない。 |
掲載文献 |
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