労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  埼玉県国民健康保険団体連合会 
事件番号  埼労委平成26年(不)第4号 
申立人  自治労埼玉県国保連合会臨時パート職員ユニオン 
被申立人  埼玉県国民健康保険団体連合会 
命令年月日  平成27年10月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①組合員の雇用契約更新に当たり、申立人組合と交渉することなく、組合員に対し、雇用契約更新回数の制限などの条件を個別的に提示したこと、②団交において組合と合意するに至った組合員の雇止めに関する事項について書面化しなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 埼玉県労委は法人に対し、上記②の書面化及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人埼玉県国民健康保険団体連合会は、申立人自治労埼玉県国保連合会臨時パート職員ユニオンとの平成26年8月18日の団体交渉において合意に至った組合員の雇止めに関する次の事項について速やかに書面化しなければならない。
(1)通算契約期間が6年未満で「2年限度」条項が適用される組合員の雇止め問題について、引き続き交渉していく。
(2)交渉期間中は当該組合員を雇止めしない。
2 被申立人埼玉県国民健康保険団体連合会は、申立人自治労埼玉県国保連合会臨時パート職員ユニオンに対し、下記の文書を本命令書受領の日から15日以内に手交しなければならない(下記文書の年月日は、手交する日を記載すること)。
記(省略)
3 申立人のその余の申立ては、これを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員に対し、雇用契約更新回数の制限などの条件を個別的に提示したことについて
 被申立人法人が、契約期間が平成26年3月31日までの臨時職員に対して、4月1日以降の契約更新に係る個別面接を2月下旬に行うことは、対象者の更新希望の有無を確認し、更新を決定するのに必要な行為であり、その内容、時期からして合理的なものといえる。また、その態様・程度も例年どおり更新希望の確認と勤務条件等の書面への署名又は押印を求めるもので、個別面接の趣旨からして合理的な範囲にとどまっている。
 申立人組合は、かねてから個別面接前に団交を行うことを申し入れていたにもかかわらず、法人が団交をすることなく、個別面接を行ったことは、組合の存在を否定し、無力化させ、団結権を侵害するものである旨主張する。
 しかし、個別面接が行われる前に4回の団交が行われ、2月19日の団交では法人が自らの方針を伝えた後、組合らと法人との間でやりとりがなされたことが認められるから、法人が自らの方針を一方的に通告しただけで団交は行われなかったとの組合の主張は採用することができない。
 よって、法人が2月24日、組合員に対し、雇用契約更新回数の制限などの条件を個別的に提示して面接を行ったことは、組合嫌悪の念から組合の存在を否定し、あえて個別面接を行ったものとはいえず、労組法7条3号で禁止する支配介入に該当しない。
2 組合と合意するに至った事項を書面化しなかったことについて
 平成26年8月18日の団交において、組合と法人の間で、①通算契約期間が6年未満で「2年限度」条項が適用される組合員の雇止め問題について、引き続き交渉していく、②交渉期間中は当該組合員を雇止めしないという2つの合意があったこと及び合意内容について書面化する旨の合意があったことが認められる。
 そして、書面化については、組合が同年8月21日に「臨時職員の雇止め問題については今後とも継続して労使で話し合っていく。結論が得られるまでは、連合会はA、B両臨時職員の雇止めは行わない。」との文案を法人に提示したのに対し、法人は、組合のいう「結論」が法人の意図する交渉の打切りを含まず、雇止め撤回の結論とされるのでは趣旨が異なるとして、組合に別の文案を提示した。その後、法人は組合の意見も踏まえながら、4回にわたって文案を修正・変更したが、結局、組合が応諾するには至らず、書面化はなされずに終わった。しかし、前記のとおり、組合と連合会との間で「交渉期間中は雇止めをしない」旨の合意があったことは明らかであるから、この点を含めた書面化に応じなかった法人は、合意内容の書面化を拒否したものと評価できる。
 次に、法人が書面化を拒否したことに正当な理由があったかどうかについてみると、組合の文案中の「結論が得られるまで」との表現は、一方当事者である組合が納得する結論を得るまでを意味すると解することは困難であり、「交渉期間中は」と解するのが相当である。このことは、「協議の間は、当該組合員の雇止めは行わない。」との文言を加筆した法人の2回目の文案でも組合は受け入れる考えであったことから明らかである。
 したがって、法人が「結論が得られるまでは」との表現を「連合会が組合の要求を応諾して雇止めを撤回するまでは」を意味すると固執し、書面化を拒否したことに正当な理由はない。よって、法人が上記合意事項の書面化を拒否したことは、労組法7条2号で禁止する不誠実団交に当たる。 
掲載文献   

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