労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  廣川書店 
事件番号  都労委平成25年不第117号 
申立人  日本出版労働組合連合会、廣川書店労働組合 
被申立人  株式会社廣川書店 
命令年月日  平成27年10月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   平成24年春闘要求、同年夏季一時金、同年冬季一時金、25年春闘要求、同年夏季一時金及び同年冬季一時金を議題とする一連の団交における被申立人会社の対応が労組法7条2号に該当するか否かが争われた事件である。
 東京都労委は平成24年11月30日以前の団交に係る申立てを却下するとともに、会社に対し、上記の団交の誠実応諾、文書交付及び履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人株式会社廣川書店は、申立人廣川書店労働組合が申し入れた、平成24年春闘要求、同年夏季一時金、同年冬季一時金、25年春闘要求、同年夏季一時金及び同年冬季一時金を議題とする団体交渉に、財務資料(それぞれ少なくとも直近3年分の貸借対照表、損益計算書等)を提示して速やかかつ誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の内容の文書を申立人組合らに交付しなければならない。
記(省略)

3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 24年春闘要求、同年夏季一時金要求及び同年冬季一時金要求を議題とする同年11月30日以前の団体交渉に係る申立てを却下する。 
判断の要旨  1 平成24年11月30日以前の団交に係る申立てについて
 平成24年春闘要求、同年夏季一時金及び冬季一時金に係る団交は24年5月18日から同年11月30日までの間に計7回開催されたが、これらはいずれも25年12月27日の本件申立ての1年以上前の行為であるから、これらの団交に係る申立ては期間徒過により却下を免れない。
2 団交及び団交申入れに対する被申立人会社の対応について
 認定した事実によれば、会社には定期昇給制度がないところ、会社は平成11年度以降、申立人組合の春闘要求に対し、賃上げなしとのいわゆるゼロ回答を繰り返しており、同年以降、組合員の賃金は全く上がっていない。また、会社は同年以降、一時金の支給額を切り下げ、16年以降は組合の夏季一時金及び冬季一時金要求に対し、「30万円±20万円」との回答を繰り返している。組合は団交の席で会社に対し、財務諸表を開示するなどして回答の根拠を説明するよう求めたが、会社は組合の資料開示要求には応じていない。
 このように会社が賃上げについては25年まで15年連続でゼロ回答に、一時金については25年冬季まで10年連続で「30万円±20万円」との回答に終始していること自体、会社回答の合理性を疑われるものであって、会社としては、自らの回答を根拠づける資料を開示した上で、賃上げができない理由や一時金の金額の根拠を誠実に説明し、組合との交渉に真摯に臨む必要があった。しかし、会社は団交において一貫して自らの結論を述べるのみであり、組合が会社回答の根拠を求めても、これまでの実績と同額であるとか、考えを変えるつもりはない、何も言うことはないなどと応答するのみで、何ら回答の根拠を示さず、交渉によって妥協点を見出そうとする態度を示すことはなかった。
 以上のとおりであるから、会社が本件団交において自らの回答を根拠づける財務資料等を提供して誠実に対応したということはできない。したがって、25年の春闘要求、夏季一時金要求及び冬季一時金要求を議題とする団交における会社の対応は、不誠実な団交に該当する。
 また、24年及び25年の春闘要求、夏季一時金要求及び冬季一時金要求を議題とする団交については、実施された団交において会社が誠実に対応しておらず、未妥結のままであるにもかかわらず、その後の組合の再三にわたる団交申入れに応じていないのであるから、会社のこのような対応は正当な理由のない団交拒否に該当する。 
掲載文献   

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