労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  埼労委平成26年(不)第2号 
事件番号  埼労委平成26年(不)第2号 
申立人  X1ユニオンX2支部、X1ユニオンX3地方本部 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成27年10月7日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社のC郵便局で勤務していた組合員A2は、不注意によ り交通事故を起こしたとして会社から懲戒処分を受けた。同人はこれに納得できず、労働協約に基づく苦情処理制度に則り、支部 会議(会社の支店と申立人組合の支部を設置単位とする苦情処理機関)に苦情申告を行ったが、事案の内容が「個別的人事権の行 使、個別的労務指揮権の発動等に属する事項」(労働協約85条3項2号)に該当するとして、却下された。
 本件は、その後、組合の支部及び地方本部がそれぞれ上記の懲戒処分を議題とする団交を申し入れたのに対し、会社が、個々の 懲戒処分は団交の対象事項ではないとの理由により、これらを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事 件である。
 埼玉県労委は会社に対し、団交応諾及び文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人Y株式会社は、申立人X1ユニオンX2支部が、平成 25年9月5日付けで申し入れた組合員A2の平成25年3月27日付け懲戒処分を議題とする団体交渉に応じ なければならない。
2 被申立人Y株式会社は、申立人X1ユニオンX3地方本部が、平成25年9月30日付けで申し入れた組合 員A2の平成25年3月27日付け懲戒処分を議題とする団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人Y株式会社は、下記の文書を本命令書受領の日から15日以内に申立人らに手交しなければならない(下記文 書の中の年月日は、手交する日を記載すること)。
記(省略) 
判断の要旨   組合員A2の懲戒処分に関する本件団交事項は義務的団交事項であ るが、個別的人事権の行使については、本件労働協約等に基づき、団交の対象事項から除外し、苦情処理制度の下で処理される仕 組みとなっている。しかし、苦情処理の手続においては、形式審査に付されることとなっており、そこでは懲戒権者である被申立 人会社の委員が会社のなした処分及びその量定を組合側委員に説明・確認するのが実態であり、被処分者や組合側委員が労使対等 の立場で当該処分に関する苦情や意見を述べる機会が公正かつ十分に確保されているとはいい難い。かつ、実質的な審査すなわち 事実審査を行うのは労使委員双方の合意の下、「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合」に限られ、例外として位置 づけられている。さらに、「不当に利害を侵害されたと客観的に認められる場合」と判断するに当たり、その拠り所となる具体的 な基準も存在しない。よって、本件苦情処理手続は、労使対等・団結尊重の下にある団交の代替機能を果たす手続とは認め難い。
 次に、支部会議での形式審査の実態をみると、会社側委員が本件懲戒処分に関してA2の非違行為は重大なものであり、処分量 定は適切であると説明しているが、それは量定が適切であることの理由を示したものとはいえず、会社も自認するように、懲戒処 分に関する客観的基準も目安もない。そうすると、A2に対し、形式審査で却下された際、本件量定が不当に利益を侵害されたと の特段の事情があることの理由を示すよう求めることは無理を強いるものということができ、同人がその時、「はい」と発言した としても、却下について了承したことを意味するとはいえないと解するのが合理的である。以上によれば、支部会議段階での苦情 処理手続は実態的にも、実質的な審理を行っているとはいい難い。
 また、支部会議の上位機関である地方会議の苦情処理手続は、制度的には支部会議の場合とほぼ同様に取り扱われることになっ ている。したがって、苦情処理手続の規定上の問題点については、支部会議の場合と同様の指摘が成り立つ。また、本件に関して は、支部会議の終了後、組合が会社に対し、地方会議として対応するよう再三にわたって申し入れたが、会社は支部会議の形式審 査で却下された旨報告を受けていると回答して取り合わなかったことが認められる。こうした会社の対応に関して、団交の代わり となるような実質的協議が行われたとする疎明もなく、地方会議については形式審査すら開催されていないのであるから、下位機 関の制度上の欠陥を補っているとはいえない。
 以上によれば、本件苦情処理手続は、個別的人事権の行使に関する事項について、団交に代わって実質的で慎重な協議や審理が 行われることが制度的に担保されているとはいえない。また、そのような運営がなされていると評価することもできない。した がって、実質的に団交に代わる手続として機能しているとみなすことはできない。
 よって、本件団交拒否に正当な理由があるということはできないから、会社の対応は労組法7条2号の不当労働行為に該当す る。 
掲載文献   

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