概要情報
事件名 |
大阪府労委平成26年(不)第52号 |
事件番号 |
大阪府労委平成26年(不)第52号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y |
命令年月日 |
平成27年10月23日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
組合員Cは被申立人会社でミキサー車乗務員として勤務していたが、平成22年11月、他の乗務員とともに整理解雇により解雇された。同人は、会社に対し、雇用契約上の地位確認等を求める訴訟を神戸地裁に提起し、24年12月、請求を認容する旨の判決が言い渡され、その後、同判決が確定するに至った。この判決に基づき会社がCに支払うべき金員に関し、25年10月、Cの代理人弁護士が会社代理人弁護士に対し、既支払額の残額を支払うよう要請し、更に26年4月、Cが会社の銀行預金を差押債権とする債権差押命令の申立てを同地裁に行った。
本件は、その後、26年7月、会社がCの上記債権差押命令の申立ては懲戒事由に該当するとして同人を解雇したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は会社に対し、文書の手交・掲示を命じた。
なお、本件は、大阪府労委平成25年(不)第48号事件の関連事件である。 |
命令主文 |
被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル×横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、被申立人本社の正面玄関付近の従業員の見やすい場所に2週間掲示しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 A 様
株式会社Y
代表取締役 B
当社が、平成26年7月30日付けで貴組合員C氏を懲戒解雇したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
認定した事実によれば、本件懲戒解雇の理由は、①組合員Cが自らの計算違いを差し置いて、②連絡なきまま突然に、③債権差押命令を申し立て、④その結果、会社の経済的信用を毀損し、会社に損害を与えたこととされている。しかし、上記①と②については事実に反しており、Cの上記申立ては事前に十分な折衝を重ねた上での正当な権利行使であるといえる。また、当該申立てにより、会社の経済的信用を毀損し、会社に損害を与えたと認めるに足る疎明はない。したがって、会社が上記の理由によりCを懲戒解雇したことは、著しく合理性を欠くものといわざるを得ない。
次に、懲戒解雇当時までの労使関係についてみると、Cが雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する旨の判決の確定に合わせて、会社が同人に自宅待機を命じたことから、会社と申立人組合とは対立・緊張関係にあったといえる。また、懲戒解雇に至る手続をみても、Cが自らの計算違いを差し置いて、連絡なきまま突然に、債権差押命令を申し立てたというのが事実に反することは、同人又は組合に確認すれば、すぐに判明するところ、会社がこのような確認を行ったとの疎明はない。さらに、会社が慎重な検討の結果、懲戒解雇という最も重い処分を選択したとの疎明はなく、即断で不適切であったといわざるを得ない。したがって、会社がCを懲戒解雇したことは、会社の組合嫌悪意思に基づくものであると推認される。
以上のことからすると、本件懲戒解雇には合理性がなく、Cが組合員であることを理由とした不利益取扱いに当たる。
また、会社は懲戒解雇通知書をCに送付する時点において、組合員に影響を与える問題については、組合と締結した協定書に基づき事前に組合と協議する必要があったにもかかわらず、これを行うことなく懲戒解雇を行っている。このような会社の対応は組合を軽視ないし無視したものといわざるを得ず、組合に対する支配介入に当たる。 |
掲載文献 |
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