労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  奈良市 
事件番号  奈労委平成26年(不)第1号 
申立人  自治労奈良市従業員労働組合 
被申立人  奈良市 
命令年月日  平成27年10月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合は、労働協約の締結など5つの事項について被申立人市との間で交渉を行ったが、市の対応が不十分であるとして、改めて市長の出席による団交を市に申し入れた。本件は、この団交申入れに対する市の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 奈良県労委は市に対し、1 上記の団交申入れに関し、市長の出席を求める部分を除き、労働協約の締結についての団交に応じること、2 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が被申立人に対して平成26年3月3日付け書面「団体交渉の申し入れ」で行った団体交渉申入れに関し、団体交渉に市長の出席を求める部分を除き、労働協約の締結についての団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、本命令受領後すみやかに、下記内容の文書を申立人に手交しなければならない。
記(省略)
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨   本件団交申入れに係る5つの交渉事項についての従前の交渉の経緯をみると、被申立人市は合意に向けて一定の説明及び努力を行ったものと認められるが、下水道事業の企業局への統合(地方公営企業化)に係る事項を除く4項目については、説明及び交渉がなお十分でなく、したがって、本件団交申入れに対し、市は当該4項目について誠実に交渉に応じるべきであったというべきである。
 ただし、本件団交申入れのうち、市長の出席を求める部分については、本件の場合、市長自身が団交に出席すること自体が誠実交渉義務の不可欠の要素であるとまではいえない。
 本件団交申入れは書面により行われたが、それには交渉内容について「賃金・労働条件およびその他必要に応じた内容」とのみ記載され、また、市長の出席を求めること、申立人組合の都合の良い日を幾日か列挙しておくが、市長の都合が合わない場合はできる限り市長の都合に合わせるので、申し出てほしい旨の記述とともに、平成26年3月中の5カ日の日付けが記載されていた。これに対し、市は書面で、副市長の出席で対応する旨の回答を行ったが、それ以上の記載はなく、その後、本件団交申入れに応じた交渉が行われた事実もない。また、交渉実施に当たっては、交渉課題の特定、日程調整の事前準備が必要であるが、組合から5カ日の提案がなされていたにもかかわらず、市が日程調整を行った事実は認められない。
 以上の経緯を検討すると、本件団交申入れに対して、市は前記のとおり対応する必要があったものであるが、その申入れを受理した後、書面による回答以外に何らの対応もとっておらず、これは労組法7条2号の不当労働行為に当たるというべきである。
 救済の方法に関し、上記4項目のうち労働協約の締結を除く3項目については、市は一定程度の説明及び交渉を行っており、また、既に実施済みであって、相当の日時が経過しており、改めて団交を実施することはかえって市政及び労使関係に混乱を生じさせるおそれがある。したがって、これら3項目については、団交応諾を命じることに代え、市に今後の誠実な団交の実施等を促すため、文書手交を命じるものとする。 
掲載文献   

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