労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  大阪府労委平成26年(不)第5号 
事件番号  大阪府労委平成26年(不)第5号 
申立人  Y労働組合 
被申立人  学校法人Z 
命令年月日  平成27年9月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   Y2は被申立人法人との委嘱契約書に基づき、平成24年4月1日から法人の経営する短大で任期限付専任教員として勤務していたが、25年4月1日付け委嘱契約書には委嘱期間を同日から26年3月31日までとし、本契約をもって更新を終了する旨が記載され、25年7月29日、短大の学長から同委嘱契約書の委嘱期間終了後は契約を更新しない旨の通告を受けた。Y2は同年10月、申立人組合に加入し、組合と法人との間で同人に対する雇止め解雇通知の撤回等に関する団交が行われた。
 本件は、法人が①団交においてそれまでの雇止め理由を変更し、Y2の業績に問題があるとの理由で雇止め解雇を強行しようとしたこと、②団交の申入れから開催に至る間の調整について、不誠実に対応したこと、③団交において組合の求める資料を提示せず、会場使用時間制限を理由に一方的に団交を打ち切ったこと、④別組合とは学内で団交を開催しているにもかかわらず、組合とは学外での団交に固執したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人法人が平成26年3月31日以降、組合員Y2との委嘱契約を更新しなかったことについて
 短大の学長が本件雇止め通告を行ったのは、Y2が申立人組合に加入する前であり、本件雇止め通告が、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらないことは明らかである。
 組合は、法人が団交開始後、本件雇止めの理由を、Y2の業績に問題があり、教員として不適格であるという懲戒解雇的な理由に言い換えた旨主張する。しかし、Y2との委嘱契約が更新されていないこと自体は本件雇止め通告時の法人の同人に対する対応と何ら相違はないのであり、上記判断のとおり、本件雇止め通告を行ったことは組合員であるが故の不利益取扱いに当たらないのであるから、法人が2回の団交の後に本件雇止めを行ったことは組合員であるが故の不利益取扱いには当たらないといわざるを得ない。
2 団交開催前及び2回の団交の間における調整について
 組合は、組合が法人の提案を受け入れなければ、法人はいつまでも学外での団交開催に固執し、団交を拒否し続けたことは明白である旨主張する。
 しかし、団交開催場所に関する法人の対応により、組合やY2に格別の不利益をもたらしたり、団交の進行に支障が生じたとまではいえないこと等を考慮すると、組合のこの主張は採用することができない。
 組合はまた、法人がZ5理事の身内に不幸があったことを理由に第2回団交の期日を延期してほしい旨通知してきたことに関し、法人が同人以外の理事の出席により予定どおりの期日で団交を開催する努力を行わなかったことは不誠実団交に当たる旨主張する。
 しかし、上記の理由は法人が団交期日を延期する理由としては相当であるといえる一方、当初の予定であった25年12月27日に必ず団交を行わなければならない特段の事情があったと認めるに足る疎明はない。したがって、かかる法人の対応をもって直ちに不誠実団交に当たるとはいえない。
3 団交において組合の求める資料を提示せず、会場使用時間制限を理由に一方的に団交を打ち切ったことについて
 組合は、第1回団交において法人がY2の業績について根拠となる資料を提出しなかった旨主張する。しかし、団交で使用者が資料提示を求められた場合、その場で直ちに提示する義務があるとまではいえず、また、組合が上記の資料の提示を事前に求めていたと認めるに足る疎明もない。したがって、かかる法人の対応が不誠実団交に当たるということはできない。
 組合はまた、法人が第2回団交の団交時間を会場の都合として1時間半に制限した上、一方的に打ち切った旨主張する。しかし、法人が事前に送信した文書に10時から11時30分までと記載されているところ、組合はこれについて事前に特段の異議を述べてはいないといえる。また、法人は団交において本件雇止めの理由について組合の質問に対応しながら説明をしており、組合が更に説明を求めるのであれば、新たな団交申入れをすることも可能であるところ、それをしていない。以上のことからすると、確かに同団交で法人が団交を終了するとして退室したことについて組合が同意していないといえるものの、法人が交渉時間を一方的に制限し、又は団交を一方的に打ち切ったとまではいえず、かかる法人の対応のみをもって不誠実団交に当たるということはできない。
4 別組合とは学内で団交を開催しているにもかかわらず、組合との団交を短大の構内で開催することを拒否したことについて
 ある労働組合が組合員の労働条件や組合に対する便宜供与に関する事項について他の労働組合と競合関係にある場合に、使用者が合理的な理由なく各労働組合を差別的に取り扱うことは差別的に取り扱われた労働組合の団結権に不当な影響を及ぼすものとして支配介入に当たるといえるが、本件においては、別組合と組合とが短大の教職員の労働条件等に関して競合関係にあるとはいえない。また、本件は団交開催場所に係る事案であって、複数組合併存下における便宜供与に関する不平等な取扱いの事案でもないのであるから、法人は別組合と組合との間で中立的な態度を保持することを要請される立場にはなく、団交開催場所に関する取扱いを異にしても、直ちに支配介入として問責されるものではない。
 さらに、法人と組合との間に団交開催場所に関する協定ないし労使慣行があったということはできないし、両者は学外で2回団交を開催しているが、法人の対応により団交開催に支障が生じたともいえない。
 以上のとおりであるから、法人が組合との団交を短大の構内で開催しなかったことは、組合に対する支配介入とはいえない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約382KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。