労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成26年(不)第30号 
事件番号  大阪府労委平成26年(不)第30号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y、Z協同組合 
命令年月日  平成27年9月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①申立人組合が被申立人会社Y及び同社で勤務する外国人の研修・技能実習生の監理団体である被申立人協同組合Zに対し、外国人の研修・技能実習生である組合員2名に関する団交を申し入れたところ、Y及びZが組合員名簿及び組合規約の提出を求めるなどして団交を引き延ばしたこと、②その後、退去強制により本国に帰国した上記組合員らに対し、Zが組合脱退を働きかけたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委はYに対し、文書手交を命じ、Zに対する申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社Yは、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
 X労働組合
  委員長 B 様
株式会社Y
代表取締役C
  貴組合の平成26年2月4日付け及び同年5月21日付けの団体交渉の申入れに対する当社の対応は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

2 被申立人Z協同組合に対する申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人協同組合Zは、組合員らの労組法上の使用者に当たるかについて
 本件団交に係る組合員らとZとの間に雇用関係がないことについては、争いがない。
 また、認定した事実によれば、Zは技能実習生である組合員らの技能実習、在留期間更新に一定の影響を及ぼし得る立場にあると認められるが、その影響力は技能実習生の受入れを在留資格等の面で適正に行うため、技能実習制度上、要請された結果というべきもので、この範囲を超えて、Zが組合員らの基本的な労働条件に直接の影響力を及ぼしたと認めるに足る疎明はなく、また、受入れ企業と技能実習生との労使関係に対し、強い支配力を及ぼしたり、実質的に労働契約関係の基礎となる役割を果たしていたと認めるに足る疎明もない。
 申立人組合は、①組合員らの賃金はZが決定していること、②Zに所属する技能実習生の雇用契約書は配属先企業が異なってもすべて同一書式であり、組合員らと被申立人会社YはZが用意した契約書に署名捺印しているにすぎないことを根拠に挙げ、組合員らの労働条件は実質的にZによって決定される旨主張する。しかし、Zが組合員の賃金を決定したこと等を認めるに足る疎明はなく、Zが組合員らの基本的な労働条件等について、Yと部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるとはいえない。
 以上のとおりであるから、Zは組合員らの労組法上の使用者には当たらない。
2 団交申入れに対する対応について
 Zについては、前記1の判断のとおり、組合員らの労組法上の使用者に当たらないことから、Zに対する申立ては棄却する。
 Yについては、組合員名簿及び組合規約の提出に固執したとまではいえないものの、組合が団交の前提として提示する性格の書類ではない旨通知した後も、重ねて組合員らの加入・不加入の事実の確認を求めている。また、組合が具体的な期日を複数記載した上で2回、団交を申し入れているのに対し、Yは組合員らが組合に加入しているのであれば、団交を実施することに異議はない旨回答する一方で、具体的な団交期日については言及していない。これらのことから、Yは団交開催の前提条件として、組合員らの加入・不加入の事実の確認を求め続けたといわざるを得ず、団交を積極的に開催する意思を欠いていたものとみざるを得ない。
 Yは、2名の組合員のうちGからは組合脱退届が提出されており、もう1人のEについても類似の情報を得ていたため、同人らの組合脱退の事実確認を促したにすぎない旨主張する。しかし、組合員であることについて疑義があるのであれば、まず、団交に応じた上で、団交の場で確認すればよいのであるし、少なくともEについては組合脱退の意向を示したと認めるに足る疎明はないのであるから、Yが組合脱退に関する事実の確認を求め続けたことに照らし、Yは積極的に団交を開催する意思を欠いていたものといわざるを得ない。
 以上のとおり、Yは団交開催の前提条件として、組合員らの加入・不加入の事実の確認を求め続け、団交を開催しようとしなかったといえるのであるから、本件団交申入れに対する対応は正当な理由のない団交拒否であって、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
3 Zによる組合脱退の働きかけについて
 前記1の判断のとおり、Zは組合員らの労組法上の使用者に当たらないことから、その余のことを判断するまでもなく、この点に関する申立ては棄却する。  
掲載文献   

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