概要情報
事件名 |
大阪府労委平成26年(不)第25号 |
事件番号 |
大阪府労委平成26年(不)第25号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
有限会社Y、株式会社Z |
命令年月日 |
平成27年9月4日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成24年11月、Cは知り合いであった被申立人会社Yの社長Bから300万円を借り入れ、同年12月、不動産業を営む被申立人会社Zを設立して、その社長に就任した。25年9月頃、資金不足によりZの事業継続が困難な状況となったところ、Bの考えによりYからZに500万円が振込入金された。26年2月27日、EがZと雇用契約を締結し、翌月から同社で就労を開始したが、同月末日頃、Cから同年4月末をもってZを閉鎖する旨の通告を受けた。Eはその後、申立人組合に加入し、組合がY及びZに団交を申し入れた。
本件は、Zは上記の団交申入れに応じたものの、Yが応じないことから、両者が共同して団交に応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てをいずれも棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人会社Yは組合員Eの使用者に当たるかについて
申立人組合は、被申立人会社Zは設立当初からYによる全面的な資金のバックアップで運営されてきたのであり、Yから派遣されたパート従業員が事務作業を行うなど、登記された法人ではあっても形式的に存在しているだけであって、その実態はYそのものであることから、YがEの使用者責任をとるべきであり、Eの雇用問題について組合と誠実に団交に応ずべき義務がある旨主張する。
しかし、平成25年9月末頃からYがZの預金通帳及び印鑑を預かっていたことが認められるものの、Zの業務に必要な経費等の出金等はZの社長CがYの従業員に指示して行っており、Yが当該預金通帳等を自由に使用していたとはいえず、貸付金の担保として預かったとのYの主張も一定首肯できる。したがって、ZはYから貸付等により資金面で影響を受ける立場にあったことが認められるものの、その実態がYそのものであるとまではいえない。
また、Yの事務員がZに派遣され、Zの事務所でYの事務をしながら、留守番及び情報収集等を行っていたこと等が認められるが、同人は両社を兼務、兼任していたというべきである。そして、YはZに対し、情報提供料を毎月支払っていたことからすると、両社の業務が混然一体となっていたとまではいえない。
以上のことからすると、ZはYとは異なる事業を行う別会社であり、Cがその株式を100%保有する会社として独自の利益を追求していたといえ、その活動がYの指示で運営されていたと認めるに足る疎明もないことから、Zの実態はYそのものであったとまでみることはできない。
さらに、EはCから業務上の指示を受け、Zの業務に従事しており、また、ZがEの雇用の可否を含む労働条件を主体的に決定していたというのが相当であるから、YがEの基本的な労働条件について雇用主と部分的に同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったともいうことができない。
よって、YはEの労組法上の使用者には当たらないことから、同社が本件団交申入れに応ずべきとの申立ては棄却する。
2 本件団交申入れに対するZの対応は不誠実団交に当たるかについて
組合は、Zが単独で団交に応じ、その席で経緯を説明したからといって雇用責任を果たしたことにはならず、Yと共同して団交に応じる義務がある旨主張する。
しかし、前記1での判断のとおり、YはEの労組法上の使用者に当たらないことから、本件団交申入れに応じる義務はない上、Zは団交に応じていることから、この点に関する組合の主張は採用できない。よって、本件団交申入れに対するZの対応が労組法7条2号に該当する不当労働行為であると認めることはできない。
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掲載文献 |
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