労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  民事法務協会 
事件番号  都労委平成25年不第10号・第106号 
申立人  全労連・全国一般労働組合東京地方本部(X)、民事法務労働組合(Z) 
被申立人  一般財団法人民事法務協会 
命令年月日  平成27年7月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人は、従前、各地の法務局及び地方法務局から、証明書や謄抄本の交付、閲覧等を行う業務(以下「乙号業務」)を随意契約により受託してきたが、平成19年度から民間競争入札が導入され、22年度の入札で落札できたのは2か所のみであった。この結果、法人の職員約750名が職場を失うこととなった。申立人組合(X及びZ)と法人との間で、職場を失うこととなった組合員の処遇について団交が行われ、これに関連して東京都労委に不当労働行為救済申立てが行われた(都労委平成23年不第18号・46号事件)。24年4月10日、この事件について、「平成24年度に実施される乙号業務入札で落札し、当該落札分に再雇用を行うと協会が判断した場合、組合に連絡の上、利害関係人12人に連絡する。なお、利害関係人12人の再雇用に当たっての身分及び労働条件については、和解後に労使で協議する」という内容を含む和解が成立した。その後、24年度の入札が行われたが、法人が落札したのは1か所のみであった。
 本件は、①この入札結果を受け、24年12月から翌年1月にかけて行われた組合員の再雇用に関する団交における法人の対応、②その後、再雇用されて就労していた組合(Z)の執行委員長に対する法人の業務管理者らの発言及びその後の法人の対応が不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は法人に対し、文書交付及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人一般財団法人民事法務協会は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人全労連・全国一般労働組合東京地方本部及び同民事法務労働組合に交付しなければならない。
年  月  日
 全労連・全国一般労働組合東京地方本部
 中央執行委員長 X1 殿
 民事法務労働組合
 執行委員長 Z1 殿
一般財団法人民事法務協会
会長 Y1
  平成24年12月ないし25年1月に開催された貴組合組合員の再雇用に関する団体交渉における当協会の一連の対応は、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)

2 被申立人協会は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員の再雇用に関する団交における対応について
 認定した事実によれば、被申立人法人は平成25年3月1日までに全ての配置人員の名簿を東京法務局に提出することを求められており、本件団交は同年2月末までに終わらせなければならないとの労使双方の認識の下に行われたものであったといえる。団交の経緯についてみると、申立人組合は上記の期限が迫る中で合意達成の可能性を模索するため、相応の努力をしていたといえるが、法人は組合の要求に対して入札額等の問題、財政上の問題等とのみ抽象的な回答を繰り返すだけで具体的にどのような問題があるのかなどの説明を行っておらず、また、自らの主張の根拠となる資料を適切に提示したともいえない。法人は、組合の求めどおりに資料の提示や説明をすることができないと考える部分については、その理由を説明して組合の理解を得るよう努めるべきであったが、そのような対応も見られない。
 こうした法人の姿勢については、3月1日までに自らの主張である契約職員という条件をそのまま組合に承諾させるべく、それ相応の根拠を示して組合の理解を得るよう努力しているとの評価をすることができず、本件団交における法人の一連の対応は不誠実なものといわざるを得ない。
 この点、法人は、本件救済申立て後の団交において、資料を提示して具体的に説明しており、このような経緯を踏まえれば、法人の対応は不誠実団交には当たらないなどと主張する。
 しかし、本件団交においては、3月1日に間に合う期間内での妥結に向けた交渉のあり方が重要な意味を持つのであり、また、団交事項は前件事件の和解時から交渉が行われてきた組合員の再雇用における労働条件なのであるから、法人は具体的な説明を行うための準備や資料を用意するための十分な時間を有していたといえる。
 したがって、法人が本件救済申立て後の団交において資料を提示して具体的な説明を行ったとしても、それ以前の団交における不当労働行為性が否定される、あるいは消滅したとの評価はできない。
 以上のとおりであるから、本件団交における法人の一連の対応は不誠実な団交に当たる。
2 法人の業務管理者らの発言について
 認定した事実によれば、法人の業務管理者らは組合(Z)の執行委員長Z1から職場の問題について質問等を受けた際、同人に対し、これは組合としての話である、職場に組合の委員長がいるなどあり得ない、Z1とは今後、話はしないなどと発言した。
 しかし、法人がこれらの発言に関与した事実は認められず、また、法人はその後、当該業務管理者らからの事情聴取等を経て同人らの処分を行い、組合には謝罪するなど相応の対応をしている。さらに、同人らは法人に雇用されたばかりで、労務を担当する立場にないこと、当時、法人と組合との労使関係が特に悪化した事実も認められないこと等を考慮すると、本件発言はZ1とのやり取りにより感情的になる中で同人らが突発的に行った個人的な発言とみるのが相当である。
 以上によれば、本件発言は、法人の意を体したものであると評価することはできない上、その後に法人が相応の対応をしていることも併せ考慮すると、法人が組合の弱体化を図ったものとはいえないから、組合の運営に対する支配介入には当たらず、また、法人が、Z1が執行委員長であるが故に行った不利益取扱いにも当たらない。 
掲載文献   

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