労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岡委平成26年(不)第1号 
事件番号  岡委平成26年(不)第1号 
申立人  X大学教職員組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成27年7月23日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①2012年度春季要求書及び2013年度春季要 求書に係る団交申入れに対し、速やかな開催に応じなかったこと、②上記の団交申入れに係る団交において、賃金関係資料等を開 示せず、また、人勧準拠を理由として団交に誠実に応じなかったこと、③個人研究費及び旅費を議題とする団交に応じなかったこ とは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 岡山県労委は法人に対し、1 申立人組合から団交申入れを受けた場合、速やかに応じること等、2 平成25年度春季要求に関する団交において、主張の根拠となる資料等を提示し、回答の根拠について十分に説明すること、3 上記③の団交に誠実に応じること、4 文書手交等、5 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人から団体交渉の申入れを受けた場合、速やか にこれに応じなければならない。申入れを受けた日時に応じられない正当な理由があるときは、その理由及び応じることができる 日時を明らかにして期日の変更を申立人に申し入れ、速やかに開催日時を調整してこれに応じなければならない。
2 被申立人は、申立人から申入れのあった平成25年度春季要求に関する団体交渉において、被申立人の賃金額の決定に関し主 張の根拠となる必要な資料及び前歴換算や昇給基準を定めた賃金に関する支給要領等を提示して、回答の根拠について十分に説明 し、誠実に交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人からの個人研究費及び旅費に係る団体交渉の申入れを拒否してはならず、誠意をもって団体交渉に応じな ければならない。
4 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を本命令書受領の日から1週間以内に手交し、あわせて学内イントラネット(ガルー ン)に同文書を手交した日から30日間掲載しなければならない。
記(省略)
5 被申立人は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
6 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交の開催時期について
 2012年度春季要求書に係る申立人組合からの団交申入れのうち平成24年12月21日付けの団交申入れに対しては、団交 が開催されないまま、同一の団交事項を含む25年4月4日の団交申入れがなされたことによって、同年6月20日の団交の開催 に至ったことが認められる。また、2013年度春季要求書に係る団交は、同年10月10日の団交申入れに対し、3か月余り後 の26年1月21日に開催された。
 これらの団交に至る経過をみると、いずれも被申立人法人は組合の団交申入れに対して速やかに返答せず、組合から日程調整の 督促を受けて対応している状況が認められ、こうした法人の対応は誠実な態度と認めることができず、誠実交渉義務に違反するも のである。
2 賃金に関する交渉について
(1)人勧準拠の説明
 組合が法人から、賃金は人勧に準拠しているとの説明を受けたのは平成2年11月の団交申入れ時であり、組合は給与が人勧準 拠することの理由を長年、法人に求めていたが、法人からは「『人勧準拠じゃ。』と繰り返されるだけ」であった。
 法人が組合の理解を得られるように人勧準拠が合理的であるとする根拠を具体的な資料等を示して説明するなどの努力をしたか どうかが問われるところ、本件救済申立てまでの法人の態度は、人勧準拠という結論を述べるにとどまっており、誠実な交渉態度 と評価することはできない。
(2)賃金支給要領の開示
 法人は、26年1月21日の団交において初めて、再任用の基準、前歴換算の仕方などは公表していない資料に基づくものであ ることを明らかにしたが、これらを公表する予定はないと回答した。
 しかし、組合が開示を求めている賃金支給要領が労働条件に関するものであることは明らかであり、その運用の基準が明らかに ならない限り、これに関する労働条件について話し合う基礎となるものがないことになるから、仮に手元資料的なものしかないと しても、その内容を組合に示し、その運用について真摯に話し合うのが適切な団交のやり方である。組合の設立以降、長年にわた る開示要求に対して開示をしていない状況が継続していたことを踏まえると、上記の団交における法人の対応も誠実な交渉態度で あったと認めることは困難である。
(3)財務資料の開示
 法人が合意の成立に向けて誠意をもって対応したと認められるためには、組合の求める小科目の開示まで必要な場合もあると考 えられるが、どこまでの資料の開示が必要であるかは個々の団交の進展の度合いによって判断されるべきものである。本件におい ては、24年12月21日の団交申入れ以降は、組合から特に小科目の開示を求めたことは窺えず、しかも、その後の団交におい て小科目の開示まで必要であったとの事情も特に認められないことからすると、法人が小科目の開示までしていないことをもって 不誠実な対応と認めることはできない。
3 個人研究費及び旅費について
(1)個人研究費
 個人研究費の予算や配分方法は教員の「労働条件その他の待遇」に関する事項に該当するものであり、また、法人において個人 研究費の配分方法の変更は実質的には教授会ではなく法人が決定している。したがって、個人研究費は義務的団交事項である。
 25年6月20日の団交において法人は、組合の意見は聞くが、基本的にはこれは団交の議題にはならないという説明で対応し ており、誠実に交渉したものとはいえない。
(2)旅費(交通費・宿泊費・日当等)
 宿泊費及び日当の改定は義務的団交事項であるところ、26年1月21日の団交において法人は、改定について十分な根拠を説 明することなく、旅費規程は労働条件ではないという認識を示して対応しており、誠実に交渉したものとは認められな い。 
掲載文献   

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