事件名 |
大阪府労委平成25年(不)第40号・26年(不)第4
号 |
事件番号 |
大阪府労委平成25年(不)第40号・26年(不)第4
号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y |
命令年月日 |
平成27年7月28日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が①申立人組合と事前協議を行うことなく、従業員に
平成24年12月分給与と併せて寸志として金員を支給したこと、②上記金員の支給に係る団交の申入れを拒否したこと、③春闘
要求等に係る団交において組合に財務諸表の持帰り及び書写しを行わせなかったこと、④組合員Fの復職問題に係る団交が行われ
ている状況において同人に対し、出社するよう通知し、業務に従事させたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった
事件である。
大阪府労委は会社に対し、1 上記②の団交に応じること、2 文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人から申入れのあった、平成24年12月29
日に被申立人が寸志として支給した金員に係る団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 A 様
株式会社Y
代表取締役 B
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められまし
た。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)平成20年4月3日付けで貴組合と締結した確認書に反して、同24年12月29日に寸志として金員を支給したこと
(第3号違反)。
(2)貴組合から申入れのあった、平成24年12月29日に当社が寸志として支給した金員に係る団体交渉を正当な理由なく
拒否したこと(第2号違反)。
(3)平成25年2月8日、同月27日及び同年3月28日の団体交渉において、貴組合に対し、貴組合の要求に応じられない
理由を十分に説明することなく、財務諸表の持ち帰り及び書き写しを行わせなかったこと(第2号違反)。
3 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 申立人組合と事前協議を行うことなく、寸志として金員を支給し
たことについて
被申立人会社が寸志として支給した金員は、従業員の勤務状況に応じて金額に差を設けており、査定を行った上で支給している
ものということができ、また、少なくとも平成24年12月の支給以前は源泉徴収を行って支給していた。そうすると、本件金員
は単なる恩恵的な金銭ではなく、一時金に類する賃金の一部であり、労働条件に該当するものといえる。
会社は、本件金員を従業員に支給するに当たり、組合との事前協議を経ないまま、一方的に支給したということができ、こうし
た会社の対応は明らかに20年4月の組合と会社との間の確認書に反している。また、会社は24年5月から11月までの間に行
われた4回の団交において、一貫して一時金の支給には応じられない旨回答しているのであるから、本件金員を支給したことは交
渉時の回答と矛盾しており、これら団交が開催されたことをもって会社が真摯に事前協議を尽くしたとはいえない。
以上のことからすると、本件金員の支給は組合に対する支配介入に当たり、労組法7条3号に該当する不当労働行為である。
2 本件金員の支給に係る団交の申入れへの対応について
前記1の判断のとおり、本件金員は一時金に類する賃金の一部であって、これに係る交渉事項は義務的団交事項に当たる。した
がって、会社が正当な理由なく団交に応じていないことは労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
3 団交において組合に財務諸表の持帰り等を行わせなかったことについて
会社は3回の団交において、24年春闘要求の金銭的要求のいずれに対してもゼロ回答とする根拠について、貸借対照表を示し
て一応の説明をし、また、負債を返済しながら、正社員の雇用を守ることを重視している旨の意向を説明したといえる。
他方、組合は団交において、経営を圧迫している問題点が分かれば、改善策を議論できる旨や、財務諸表を見なければ、会社が
提示した数字について検証できず、組合の要求に代わる代替案を検討することもできない旨を述べており、代替案の検討も含めた
協議の打開策を探るため、持ち帰っての資料の検討を求めていたものといえる。
ところが、①前記1のとおり、会社は24年5月の団交で春闘一時金要求等についていずれもゼロ回答とした一方で、23年末
に寸志として金員を支給していたこと、②25年2月の団交で会社が説明したのは24年8月31日現在の貸借対照表のみであっ
たことが認められ、これらのことからすると、会社は持参した資料すら一部のみを組合に示しただけであり、組合要求には全く応
じられないとする回答の根拠を積極的に説明し、組合の理解を得る努力を怠ったといえる。
会社は、資料の持帰り等に応じない理由として、組合が会社側の情報を組合のビラに掲載し、目的外利用することを懸念するが
故であるとも主張する。しかし、会社の主張に沿う具体的事実の疎明はなく、また、会社が組合に対し、目的外利用に関する具体
的事実を指摘したり、その防止を要請したことの疎明もないから、この点に係る会社の主張は採用できない。
そうすると、会社は団交において組合の要求に応じられない理由を十分に説明し、組合の理解を得る努力をすることなく、組合
が求めた資料の持帰り等を拒否したのであって、かかる行為は不誠実であり、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
4 組合員Fに出社するよう通知したこと等について
会社がFに対して出社命令を発したのは、組合と会社が同人の復帰条件を巡って交渉を継続していた途中であったといえる。し
かし、出社命令に至るまでの経過をみると、団交継続中に発せられたことについては、必ずしも会社のみに非があったとはいえな
い。また、20年4月の確認書の第2項は労働条件の変更等を行うに当たり組合との事前合意を要する、事前協議合意約款であっ
たとまではいえないし、会社は出社命令を発するまでの間に組合に対し、Fの職場復帰後の業務内容について具体的な提案を行っ
ており、同確認書に反していたともいえない。
したがって、会社がFに出社命令を発したこと等は、同人の職場復帰に係る一連の団交についての団交拒否又は不誠実団交に当
たるともいえないし、組合に対する支配介入に当たるともいえない。 |
掲載文献 |
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