労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  タマル工業 
事件番号  神労委平成25年(不)第16号 
申立人  神奈川シティユニオン 
被申立人  株式会社タマル工業 
命令年月日  平成27年6月30日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社でメッキ作業等に従事していたX2は、平成22年3月10日頃から病気のため欠勤し、病院で手術を受けた。同年4月29日に退院後、会社を訪問して職場復帰の意向を示したところ、会社の専務から、仕事はない旨告げられ、その後も会社から仕事がある旨の連絡はなく、以後、出社することはなかった。また、X2の妻X3は、18年12月まで会社で就労した後、その親会社である申立外会社Zで就労していたが、22年4月上旬、就労中のトラブルを契機として退社した。X2及びX3は25年5月17日、申立人組合に加入し、組合は両人の解雇や社会保険未加入等の問題を議題とする団交を同年6月3日付けで会社に申し入れた。
 本件は、会社が上記の団交を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は会社に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交しなければならない。
  当社が、貴組合からの平成25年6月3日付け団体交渉申入れに対し、何ら応答することなく団体交渉を拒否したことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
    平成  年  月  日
  神奈川シティユニオン
    執行委員長 X1 殿
株式会社タマル工業
代表取締役 Y1
2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2及び同X3は被申立人会社との関係において労組法7条2号の「使用者が雇用する労働者」に当たるか
 被申立人会社は、X2及びX3の雇用関係の終了が解雇によるものか自主退職によるものかについて争いはあるものの、同人らとの雇用関係が本件団交申入れ時において終了していたことに争いはないから、同人らは会社との関係において「使用者が雇用する労働者」には当たらない旨主張する。
 しかし、かつて雇用関係があった労働者でも、解雇された場合や雇用関係が存在していた期間の清算されていない労働関係上の問題をめぐって争われているような事情が存在する場合には、なお「使用者が雇用する労働者」に該当すると解するのが相当である。本件についてみると、申立人組合がX2及びX3の解雇そのものを争っていることは明らかであり、また、社会保険未加入等の問題は同人らが会社と現実に雇用関係が存在していた当時の労働条件に係る事項と解され、在職中における清算されていない労働関係上の問題についての争いであるといえる。
 したがって、本件団交申入れの時点において、X2及びX3は会社にとって「使用者が雇用する労働者」に該当する。
2 会社が団交に応じなかったことは正当な理由のない団交拒否に当たるか
 会社は、雇用関係が終了していた場合であっても、一定の場合には団交応諾義務があるとするいわゆる「駆込み訴えの法理」が存在するが、これは合理的な期間内になされた団交申入れに対して生じるに過ぎず、本件の場合は団交申入れが合理的期間内になされたものとはいえないから、同法理は適用されず、会社に団交応諾義務は生じない旨主張する。
 しかし、労働者がいついかなる労働組合に加入するかは、当該労働者自身の自由意思に委ねられるべきものである。そして、労働者が労働組合に加入した後、速やかに団交申入れをしている本件のような場合においては、当該事項が発生してから団交を申し入れるまでに相当な期間が経過しているときであっても、当該事項に関する労働組合の団体交渉権が消滅することはないから、会社は組合の団交申入れに応じた上で誠実に交渉しなければならない。したがって、会社の上記主張は採用することができない。
 なお、会社は、本件団交申入れが合理的期間内になされたものとはいえないとの疑念を組合に伝えたり、団交申入れの趣旨や団交事項について組合に問い合わせたりすることもできたはずであるが、そのような対応もせず、一方的に団交申入れを無視したのであり、この点からも、本件団交拒否に正当な理由を認めることはできない。
 よって、本件団交申入れを拒否した会社の対応は、正当な理由があるものとは認められず、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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