概要情報
事件名 |
東陽ガス |
事件番号 |
都労委平成25年不第78号 |
申立人 |
全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合、同東陽ガス支部 |
被申立人 |
東陽ガス株式会社 |
命令年月日 |
平成27年5月19日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社は、LPガスボンベの配送、保安(LPガス設備の点検)等の業務を、会社と雇用契約及び業務委託契約を結んでいる配送員に委託していたが、平成23年以降、配送員との合意に基づき、雇用契約を解除し、業務請負基本契約への切替えを進めた。しかし、組合員である配送員の一部は雇用契約の合意解除に応じなかった。 25年2月、会社は発注元である申立外会社Aから保安業務委託契約を解除され、会社の事業は赤字事業である配送事業のみとなった。そして、同年6月、事業の継続を断念して、Aとの配送業務委託契約を7月末日付けで解除するに至った。これに伴い、会社は、配送員が希望する場合には同社と同様の配送システムを採用している別会社に紹介することとした。このため、6月27日及び28日に配送員に対する説明会を開催し、また、7月24日には申立人組合と団交を行い、希望者を募った。この結果、6月時点で雇用契約の合意解除に応じていなかった配送員11名(うち組合員10名)のうち、5名(同4名)が雇用契約等を解除することとなった。7月21日、会社は残りの6名(同6名)に対して8月31日付けでの雇用契約等の解除を通知し、8月21日、株主総会で解散を決議した。
本件は、①配送員である組合員らが労組法上の労働者に当たるか否か、②会社の事業廃止及び解散とそれに伴う上記8月31日付けでの雇用契約等の解除が不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員の労組法上の労働者性について
配送員の労務供給等の実態に即して検討すると、①配送員はガスボンベの配送及び保安業務という被申立人会社の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力としてその組織に組み入れられており、②会社は配送員の労務供給に係る契約内容を一方的かつ定型的に決定していたといえ、③配送員の報酬は労務提供の対価とみるのが相当であり、④配送員は会社からの配送業務の依頼に応ずべき関係にあったものといえ、⑤配送員は配送業務につき会社から指揮監督を受けるとともに、一定の時間的場所的拘束も受けていたといえる。一方、配送員には独立した業務受託者としての性質を有するほどの顕著な事業者性は認められない。
したがって、配送員は、会社との関係において労組法上の労働者に当たるというべきである。
2 会社の事業廃止及び解散と、それに伴う組合員らとの雇用契約等の解除について
会社が申立外会社Aから保安業務の委託契約を解除された理由は、会社が法定の定期保安検査を懈怠するなど度重なる債務不履行を起こしたためであった。その後、会社の事業は通期で赤字であった配送事業のみとなり、会社はAに対し、委託料の引上げ等を申し入れたが、受け入れられず、赤字解消の見込みがないと判断し、配送業務委託契約の解除に合意するに至った。
このような経緯及び申立人組合支部結成以降の会社と組合との関係をみると、Aと業務上も人事上も強い結び付きのあった会社が最終的に事業廃止を決断し、解散したことについて、組合の主張するような不自然な点が全くなかったとはいえない。しかし、会社が殊更組合を嫌悪し、組合員を会社から排除した上で支部を解体するために事業を廃止し、解散したとまで推認するに足りる具体的な事実の疎明はなされていない。その他、会社が不当労働行為意思をもって事業廃止及び解散を行ったと判断するに足りる事情も窺えない。
以上のことから、会社の事業廃止及び解散は、組合員を同社から排除し、支部の解体を企図して行われたとまではいえず、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入には当たらない。
また、会社が事業廃止及び解散を決定した以上、配送員との雇用契約等は全て終了せざるを得ず、上記のとおり、本件事業廃止及び解散は不当労働行為に該当しないのであるから、それに伴う雇用契約等の解除も基本的には不当労働行為に該当しないといわざるを得ない。結果的には組合員6名のみが契約解除となっているが、これは組合員であったが故になされたものではなく、この6名が最後まで雇用契約等の合意解除に応じず、別会社との請負契約の下での就労を希望しなかったためである。
したがって、本件雇用契約等の解除は、組合員であるが故の不利益取扱い又は組合の運営に対する支配介入には当たらない。 |
掲載文献 |
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