概要情報
事件名 |
大阪府労委平成25年(不)第53号 |
事件番号 |
大阪府労委平成25年(不)第53号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成27年5月11日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社で従業員として勤務していたCは、平成25年1月30日の昼頃帰宅した後、うつ病と診断され、それ以後、出勤しなくなった。同年3月4日、申立人組合は会社に対し、Cが組合員である旨通知するとともに、同人に係る時間外労働、パワハラ等を議題とする団交を申し入れた。その後、10回にわたり団交が行われたが、パワハラの有無や職場復帰の可否等について意見が一致するには至らなかった。同年10月21日、労基署からCに上記うつ病に係る労災認定通知が送付された。同月25日、会社はCに対し、休職期間満了日においても傷病が治癒していないことから退職となる旨通知した。
本件は、会社が①上記のとおり組合員Cを退職扱いとしたこと等、②上記の団交において不誠実な対応をしたこと、③その後の2回の団交申入れに応じなかったこと、④Cに退職を通知する際、「休職期間満了・退職通知書」を同人に直接送付したこと、⑤組合に対し、社員への直接の連絡等を控えるよう求めた文書を送付したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は会社に対し、1 Cに対する退職扱いがなかったものとして取り扱うこと、2 25年10月25日付け団交申入れに応じること、3 文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員Cに対する平成25年10月24日付けの退職扱いがなかったものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人が平成25年10月25日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)
4 申立人のその他の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員Cを退職扱いとしたこと等について
認定した事実によれば、被申立人会社は、平成25年2月4日にCの親族が会社を訪問した際には同人のうつ病発症に関する責任を認めるかのような言動をとっていたが、3月4日に同人の申立人組合加入が通知され、同月21日に第1回団交が行われた後は、同月26日付けの組合に対する回答書に業務外傷病であるとの評価をした旨記載し、その後、一貫してこれと同じ旨の主張をしている。このような経緯からすれば、会社はCの組合加入を契機として、同人の傷病に対する評価にかかわる主張を変化させたとみざるを得ない。
また、会社は、同年10月17日までは、長時間労働及びパワハラの事実の有無やうつ病発症との因果関係の有無について労基署の判断を仰ぎ、労災認定がなされれば、それに従い、同人の休職を業務上傷病による休職と認める余地があるかのような言動をとっていながら、その後、労災認定がなされたことを知って直ちに同人に退職通知を送付しており、このような会社の扱いには不自然な点があるといわざるを得ない。
以上のことを総合的に考えると、会社は、Cを組合員であるが故に退職扱いにしたと推認でき、このような会社の対応は同人に対する不利益取扱い及び組合を弱体化させるための支配介入に当たるといわざるを得ない。
2 団交における会社の対応について
組合は、①10回にわたり開催された団交において会社がパワハラの具体的事実関係などを誠実に回答せず、Cの傷病は業務外傷病であるとの主張の根拠を示さなかったこと、②会社が第10回団交を一方的に打ち切り、開始後30分で途中退席したことが不誠実である旨主張する。
しかし、認定した事実によれば、会社は文書及び団交における回答として、パワハラの具体的事実関係について一定回答し、Cの傷病は業務外傷病であるとの主張の根拠を述べているのであるから、上記①の主張は採用できない。また、第10回団交においては、組合と会社の主張は平行線に至っていたとみることができるから、上記②の主張も採用できない。
3 25年10月11日付け及び同月25日付けの団交申入れに応じなかったことについて
10月11日付け団交申入れに関しては、会社が同月17日付け回答書により、Cが業務上の原因によりうつ病を発症したか否かについて双方の主張が相容れない状況が続いており、労基署の判断もまだ出ておらず、団交を重ねても平行線をたどるのみであるとして団交に応じない旨回答していることからすると、正当な理由のない団交拒否に当たるとはいえない。
同月25日付けの団交申入れに関しては、会社は労基署の判断が出るまでの間、組合に対し、労基署の判断を重要視する姿勢を明確に示していたのであるから、10月21日に労災認定通知が送付された後においては、労基署の判断を踏まえた上で会社の考えが変わらない理由を改めて組合に説明すべきであったと考えられる。したがって、会社が団交申入れに応じなかったことに正当な理由は認められず、正当な理由のない団交拒否及び組合に対する支配介入に当たるといえる。
4 休職期間満了・退職通知書をCに直接送付したことについて
会社がCに対し、25年10月24日限りで退職となる旨通知するという手続自体は、就業規則に記載されている事項を通知しただけであり、問題があるとはいえず、Cに通知書を直接送付したからといって、組合員を組合から孤立させたり、組合の弱体化を図ったともいえない。
5 組合に社員への直接の連絡等を控えるよう求めた文書を送付したことについて
組合は、職場の労働者に働きかけることは労働組合として当然の活動であり、会社が社員への直接の連絡等を差し控えるよう文書で求めたことは組合に対する支配介入である旨主張する。しかし、当該文書は、会社から組合に対する要望であり、このような要望を行ったこと自体に問題があるとはいえず、組合員を組合から孤立させたり、組合の弱体化を図ったともいえないのであるから、組合を弱体化させるような支配介入に当たるとまでみることはできない。 |
掲載文献 |
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