事件名 |
埼労委平成25年(不)第6号 |
事件番号 |
埼労委平成25年(不)第6号 |
申立人 |
X1労働組合、同労働組合X2地方本部、同労働組合X3支
部 |
被申立人 |
Y株式会社 |
命令年月日 |
平成27年4月15日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が浦和工場閉鎖に伴い、申立人組合支部の役員である
A2ら3名を解雇したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
埼玉県労委は会社に対し、A2の解雇の取消し等及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人X1労働組合、同X1労働組合X2地方本部
及び同X1労働組合X3支部の組合員であるA2の解雇を取 消し、同人を原職相当職に復帰させなければならない。
2 被申立人は、申立人X1労働組合、同X1労働組合X2地方本部及び同X1労
働組合X3支部の組合員であるA2に、平成25年10月1日から原職相当職に復帰する日までに同人が得
られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人X1労働組合、同X1労働組合X2地方本部及び同X1労
働組合X3支部に対し、下記の文書を本命令書受領の日から15日以内に手交しなければならない(下記文
書の中の年月日は、手交する日を記載すること。)。
記(省略)
4 申立人らのその余の申立ては、これを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員A2を解雇したことについて
A2に関し、同人が団交の場で被申立人会社に対し、同社神戸工場への異動希望を明らかにした事実及び同社東京センターへの
公募に応募した事実が認められるところ、会社は神戸工場への異動希望を認めなかった理由として、①同人が希望を明らかにした
時点では、同工場への異動対象者の選考はほぼ終了していたこと、②同人は同工場への異動を認めるに足るスキルを有していな
かったこと、③同人の勤務態度には問題があったことなどを挙げ、また、東京センターへの異動を認めなかった理由として、④同
人に英語の能力が不足していたことや⑤同人が同センターでの業務に消極的な姿勢であったことを挙げる。
しかし、認定した事実によれば、会社が主張する上記①~③及び⑤の理由はいずれも合理性に欠けるものであり、また、④の理
由は本件申立て後に考え出したものと考えるのが相当である。
他方、A2が浦和工場閉鎖に係る従業員説明会の際、工場閉鎖反対の意見を表明するとともに、過去の申立人組合支部との協議
を引合いに出して会社を批判する発言をしたこと、団交で支部書記長として工場閉鎖反対の主張を述べていたことなどから、会社
は同人を組合支部の中心的人物の一人として嫌悪していたと推認するのが相当である。
さらに、会社は、A2と同様に神戸工場への異動希望を明らかにしていた組合員2名について、組合支部脱退後に同工場への異
動の公示をしている。
これらのことを考え合わせると、会社は、A2が組合支部に所属し続けていること及び組合支部の中
心的人物の一人であること
が理由で同人を嫌悪し、神戸工場及び東京センターへの異動を希望したにもかかわらず、これを認めないことによって同人を異動
先がない状態にし、解雇したというべきである。したがって、会社による同人の解雇は労組法7条1号の不当労働行為に当たる。
また、同人を社外に排除したことで、組合支部だけでなく、組合及び地本の組織が弱体化したと考えるのが相当であるから、同条
3号の不当労働行為にも当たる。
2 組合員A3及び同A4を解雇したことについて
A3及びA4については、会社が実施した個別面談で具体的な異動希望を出さなかった上、A2の場合と異なり、団交の場で異
動希望を出したり、会社が行った公募に応募したりした事実もない。そうすると、会社が両名の異動を認めないことで異動先がな
い状態にし、解雇したものとはいえない。
仮に労働組合に加入していない従業員が公募に応募せず、かつ、希望退職に応じなかったために異動先がなかった場合には、
A3及びA4と同様、解雇されていたと推測できる。このため、会社による両名の解雇を支部組合員であるが故の差別的取扱いで
あったともいえない。
そして、会社が解雇予告後に組合支部と団交を複数回行い、その中でA3及びA4の解雇について協議したと認められることな
どからすると、会社が労働協約に基づく事前協議をしないで両名を解雇したとはいえない。
以上のことからして、会社によるA3及びA4の解雇を不当労働行為であると判断することはできない。 |
掲載文献 |
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