事件名 |
神労委平成25年(不)第25号 |
事件番号 |
神労委平成25年(不)第25号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
独立行政法人Y機構 |
命令年月日 |
平成27年4月16日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人法人が、閣議決定を踏まえた国からの要請を理由に、退職
手当を国家公務員の削減率により減額することを申立人組合に提案し、団交を行ったが、抽象的な説明をするにとどまり、退職手
当の減額を国家公務員と同一の率で行わなければならない理由についての説明や資料提供を全く行わず、平成25年8月20日に
は一方的に団交を打ち切り、同年9月1日から制度の改定を強行実施するとしたことは不当労働行為であるとして、救済申立てが
あった事件である。
神奈川県労委は法人に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人独立行政法人Y機構は、本命
令受領後、速やかに下記の文書を申立人X労働組合に手交しなければならない。
記
当機構が、大幅な退職手当引下げについて貴組合に十分な説明を行わず、必要な資料を提示しないまま引下げを実施したこと
は、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
平成 年 月 日
X労働組合
中央執行委員長 X1 殿
独立行政法人Y機構
理事長 Y1
2 その余の申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 被申立人法人が誠実に団交を行ったか否かについて
認定した事実によれば、申立人組合は法人に対し、主に①退職手当を引き下げなければならない理由(法人の経営状況等)、②
引下げに当たり国家公務員の調整率等を適用する根拠、③引下げを実施しない場合に法人が被る不利益の内容、④平成25年8月
20日で団交を打ち切り、同年9月1日に引下げを実施しなければならない理由についての説明及び資料提出を求めた。
しかし、上記③及び④について法人が団交で説明した内容は、他の独立行政法人・地元自治体の実施状況などの外部的要因や、
法人だけが未実施となった場合にそれが公表されれば法人が指弾され、秋から始まる独立行政法人の見直しに負の影響を及ぼすお
それがあること、地元自治体の理解が得られないと事業が円滑に進まないこと等の漠然としたものにとどまっている。また、上記
③及び④についての具体的な資料は提出されていない。
他方、法人は団交において、退職手当引下げの提案の根拠が閣議決定を踏まえた国からの要請に尽きる旨の説明を繰り返し行う
とともに、国からの指示や圧力があったことについては否定し、自主的な判断で提案をしていると繰り返し説明している。した
がって、閣議決定や国からの要請など全ての独立行政法人が共通して影響を受けると思われる事項とは別に、法人独自の外部的要
因について、特に詳細かつ具体的な説明が必要とされているにもかかわらず、これらの点についての具体的な事情や対策、今後の
取組み等については全く言及していない。
さらに法人は、組合が交渉の継続を求めているにもかかわらず、8月20日で団交を打ち切り、組合の合意が得られなくても引
下げを実施する方針を7月24日の団交時点であらかじめ決めていた。そして、実際に8月1日をもって法人以外の国土交通省所
管独立行政法人の全てが引下げを実施したため、交渉打切りの翌日である8月21日には規程を改正した。
以上のとおり、法人は義務的団交事項である退職手当引下げについて、十分な説明を行ったとは言い切れない状況の下で、他の
独立行政法人の動向という外部的要因を主な理由として団交を打ち切り、組合の合意が得られないまま、組合員に極めて大きな不
利益を与える労働条件の変更を強行した。したがって、組合との交渉経過における法人の対応は誠実なものであったとはいえない
と判断する。
2 法人が平成25年9月1日付けで退職手当制度を改定したことが支配介入に当たるか否かについて
団交を一方的に打ち切り、組合の合意が得られないまま退職手当の引下げを実施した法人の行為は、組合の団交権を侵害すると
ともに、組合を軽視するものであり、組合の弱体化をもたらすおそれがあることから、支配介入に当たると判断す
る。 |
掲載文献 |
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