労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  埼労委平成25年(不)第1号 
事件番号  埼労委平成25年(不)第1号 
申立人  X1高等学校教職員組合、X2私立学校教職員組合連合、X3労働組 合 
被申立人  学校法人Y1 
命令年月日  平成27年3月26日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   人材サービスを業とする申立外会社Zに登録していたA2は、同社 からの紹介により、被申立人法人の設置する高校で外部講師として勤務することとなった。勤務開始に当たり、A2とZとの間及 び法人とZとの間で平成22年4月から1年間の業務委託契約が締結され、同契約は23年度についても更新されたが、24年2 月、法人は非常勤講師を1名採用したことに伴い、24年度については契約を更新しないこととした。このことを知ったA2は、 申立人組合に加入し、組合は同年5月、同人の雇用問題に関する団交を法人に申し入れた。これに対して法人は、本件議題は義務 的団交事項には該当しないが、任意の話合いには応じるとし、団交(話合い)が行われた。同年9月、組合はA2を来年度できれ ば常勤教諭として雇用することなど4項目の要求を記載した要求書を法人に提出し、同年11月、2回目の団交が行われた。その 後、組合が法人に対し、法人が義務的団交事項に該当しないと回答した根拠等について質問したところ、法人は回答する義務がな いと考える旨回答した。
 本件は、25年1月、上記のような法人の行為は労組法7条2号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件であ る。
埼玉県労委は法人に対し、上記4項目の要求のうち3項目について、これを議題とする団交に応じることを命じ、その余の申立て を棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人X1高等学校教職員組合、同X2私立 学校教職員組合連合及び同X3労働組合(X4ユニオン)が平成24年9月4日付け要求書及び同月21日付 け申入書で申入れた団体交渉の議題のうち、以下のものについて団体交渉に応じなければならない。
(1)学校法人Y1がA2を来年度できればY2高等学校の常勤教諭として雇用すること。できなければ同校の非常勤 教諭として雇用し、18コマを持たせること。
(2)学校法人Y1がA2を平成22年度及び平成23年度の2年間、遡って雇用保険及び私学共済に加入させること。
(3)(2)に係るA2の本人負担分を学校法人Y1が負担すること。
2 申立人らのその余の申立ては、これを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人法人は本件団交に関し、労組法7条の使用者に当たるか について
(1)組合員A2は労組法3条の労働者に当たるか 
 認定した事実によれば、A2、申立外会社Z及び法人の三者の関係は、同人の法人における労務提供、その供給先である法人の 同人に対する指揮命令及び供給元であるZと同人との間の支配関係などからすれば、実態としては職業安定法44条の禁止する労 働者供給であったと考えられる。このように、A2とZとの間に雇用契約は締結されておらず、業務委託契約が締結されているに すぎないとすると、同人は個人事業主として独立した事業主とみられる可能性がある。したがって、法人が労組法上の使用者に当 たるかどうかを検討するに当たっては、まず、同人がそもそも労組法上の労働者であることが前提となる。
 この点について検討すると、A2はZと業務委託契約を締結して法人に労務を提供し、その対価として報酬を受けており、ま た、その労務提供につき法人から指揮命令を受けていたことが認められるから、労組法上の労働者であることが明らかである。
(2)法人は労組法7条の使用者に当たるか
ア 「A2を来年度できれば常勤教諭として雇用すること。できなければ、非常勤教諭で18コマを持たせること」の議題につい ての使用者性
 法人は、A2の基本的労働条件等のうち、就労の諸条件にとどまらず、同人の雇用そのもの、すなわち採用、配置、雇用の終了 等の一連の雇用の管理について、労組法の適用を受けるべき雇用関係が成立していると言える程度に現実的かつ具体的に支配・決 定できる地位にあったといえる。したがって、法人は、この議題について団交に応じるべき労組法7条の使用者に当たるといえ る。
イ 過去2年間遡って雇用保険及び私学共済に加入させること並びにこれに係る本人負担分も法人が負担することの議題について の使用者性
 この議題は、A2の平成22年度及び23年度における高校での勤務における福利厚生に関する権利主張事項、すなわち個別労 使紛争処理的な事項といえる。そして、前記アのとおり、法人は同人の一連の雇用管理について労組法の適用を受けるべき雇用関 係が成立していると言える程度に現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったといえるのであるから、この議題に係る団交 に応じるべき労組法上の使用者であるといえる。
ウ 賃金差額2年分170万円を支払うことの議題についての使用者性
 この議題に係る団交に応じるべき労組法上の使用者とは、高校におけるA2の労務提供の対価について現実的かつ具体的に支 配・決定できる地位にあっった者とすべきである。A2が受領できた労務提供の対価とは、法人がZに支払った金員からZの収入 となる金員を控除したものであるところ、後者の金員は専らZが現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったといえる。こ のため、法人が、A2が実際に受領できた労務提供の対価について現実的かつ具体的に支配・決定できる地位にあったとはいえな い。
 したがって、法人はこの議題に係る団交に応じるべき労組法上の使用者には当たらない。
2 法人の団交拒否に正当な理由はあるかについて
 本件団交事項のうち、前記1(2)のア及びイの議題に係るものについては、法人が団交に応じるべき労組法上の使用者であ る。また、これらの議題に係る事項はいずれも義務的団交事項である。
 したがって、法人による、これらの議題についての団交拒否は、いずれも労組法7条2号の不当労働行為に当た る。 
掲載文献   

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