労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  American Apparel Japan 
事件番号  都労委平成25年不第13号 
申立人  一般合同労働組合東京西部ユニオン 
被申立人  American Apparel Japan有限会社 
命令年月日  平成27年2月17日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社の店舗でアシスタント・マネージャーとして勤務していたX2は、平成24年8月20日、従業員割引制度の不正利用等を理由に雇用契約期間中の解雇を通告された。同人は同日、申立人組合に加入し、組合が会社との団交において上記解雇の撤回を要求したところ、会社は同月31日、解雇を撤回した。組合はさらに解雇撤回の理由等に関し、団交を申し入れ、9月に第2回団交が行われた後、11月に3回目の団交を申し入れた。
 本件は、会社が①上記の3回目の団交の申入れに25年2月20日まで応じなかったこと、②同年3月31日をもってX2を雇止めとしたことが不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は会社に対し、1 X2との雇用契約が25年4月1日付けで更新されたものとして取り扱うこと等、2 文書交付、3 履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人American Apparel Japan 有限会社は、申立人一般合同労働組合東京西部ユニオンの組合員X2との雇用契約が平成25年4月1日付けで更新されたものとして取り扱い、同人を原職又は原職相当職に復帰させるとともに、同人に対し、同日から原職又は原職相当職に復帰させるまでの間の賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
記(省略)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 正当な理由のない団交拒否に該当するかについて
 被申立人会社は、3か月余にわたり団交に応じなかった理由は人事を統括する会社のアジア地域担当マネージャーY2が海外出張に従事していたためであると主張する。
 しかし、申立人組合が本件解雇の撤回の経緯等に係る団交を申し入れたのは、従業員割引制度の不正利用等を理由に組合員X2が雇止めをされる事態を危惧したためであると考えられるから、組合が3回目の団交を申し入れた平成24年11月8日以降、少なくとも本件不正利用等を含めた同人の雇用契約に関する議題は速やかに団交において協議されるべき状況にあったというべきである。このことを考慮すると、会社が3か月余にもわたり団交の交渉員を確保せずに団交に応じないことは正当な理由のない団交拒否に該当するというべきであり、Y2が海外出張に従事していたことをもって正当な理由と評価することはできない。
2 組合員X2の雇止めについて
(1)本件雇止めの理由 
 会社は、本件雇止めはX2の問題行為、特に本件不正利用を最大の理由とするもので、十分に合理的な理由がある旨主張するので、以下検討する。
 X2は、従業員割引制度を適用して商品を購入する際に同制度の対象外の商品をレジに入力しているので、少なくともこの点は問題視され得る行為であったといえる。しかし、会社は本件解雇の撤回後においても、別の店舗でX2に単独でのレジ操作権限を有する「キー・ホルダー」という役職を担当させており、その際、特に注意喚起等はしなかった。
 また、会社においては商品のタグの付け間違いが度々発生していたことから、過去に同様の違反行為もあったと思われる中で、会社は積極的に違反行為の有無を調査し、注意・指導を行うといった厳格な対応をしていたとは認められない。さらに会社は、従業員割引制度の利用に際して購入者自らがレジ操作を行ってはいけない等の禁止事項を含めて制度の内容を従業員に十分に周知していなかったのであるから、同制度に係る違反行為を防止するための対応を十分に行っていたとは認められない。
 したがって、会社が本件雇止め当時、本件不正利用を含め従業員割引制度に係る違反行為を真に問題視していたということはできない。
 そして、本件不正利用もタグの付け間違いに起因するレジ入力のミスである可能性があること等からすると、そもそもX2が購入手続を行った商品が同制度の対象外の商品であったと認めることもできない。
 さらに、X2の本件レジ操作ミスについて、会社が発生時点において警告や懲戒処分を行っておらず、特に問題視していなかったこと等からすれば、雇止めにつながるほどの重大なミスとまでは認められない。
 したがって、本件雇止めの理由に十分な合理性がある等とする会社の主張は採用できない。
(2)X2の組合加入の前後における会社の対応の差異等
 X2は、組合加入前にも本件不正利用と同様の違反行為を行ったことがあるが、その際、会社はそれを把握できたはずであるにもかかわらず、特に注意・指導等をせず、同人との雇用契約を継続している。このように、同人が組合に加入し、分会長に就任する前後で、会社は対応を異にしている。また、会社においてはX2以外の従業員についても同様の違反行為があったものと思われるが、従業員割引制度に係る違反行為を理由に雇止めとなったのはX2のみである。
(3)本件雇止めの時点における労使関係等
 分会長であるX2の雇用問題は組合の最大の懸案事項であったところ、会社は組合の再三の求めにもかかわらず、団交において本件解雇撤回の理由等に関する見解を示すことを避け続けていた。そして、組合も、このような会社の対応を受けて情宣活動を行い、本件申立てを行うに至っている。このことからすれば、会社が本件雇止めを通知した25年2月頃の労使の関係は緊張した状況にあったものといえる。そして、X2が分会長として団交や情宣活動等を行っていたことも考慮すれば、会社がX2を排除することを意図していたと推認せざるを得ない。
(4)結論
 以上からすれば、合理的な理由の認められない本件雇止めは、本件不正利用等を口実として、会社が分会長であるX2を排除するために行ったとみるのが相当である。したがって、本件雇止めは、X2が組合の分会長であるが故の不利益取扱いに該当する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約355KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。