労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  大阪府労委平成26年(不)第9号 
事件番号  大阪府労委平成26年(不)第9号 
申立人  X労働組合 
被申立人  学校法人Y 
命令年月日  平成27年2月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   被申立人法人が、法人の学校で司書教諭として勤務していた組合員Fを、職場内での言動を理由として職種を事務職員に変更した上、配置転換したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件異動発令の不利益性について
 組合員Fが事務職員として昇給していく場合を教育職員でいる場合と比較すると、将来に向けて昇給額が低くなることが認められ、本件異動発令によりFに不利益が生じることは明らかである。
2 本件異動発令の理由について
 被申立人法人は、本件異動発令の理由として、Fには平成25年6月21日の発言(以下「本件発言」)等についての真摯な反省が窺えず、今後も同種の言動を繰り返す恐れが非常に高いことから、図書館という生徒と接触のある職場に配置しておくことは是認できない旨主張する。一方、申立人組合は、本件発言に不適切な点はあったが、Fが反省し謝罪しているにもかかわらず、法人が本件異動発令を行ったことは、組合嫌悪から生じたものである旨主張する。
 認定した事実によれば、24年5月30日、組合、F及び法人の三者の間で、Fは図書室で司書教諭として勤務すること、学校長の指導の下、業務に専念し、生徒、教職員等法人の関係者とトラブルを起こさないこと、などを内容とする合意書が締結された。本件発言は、このような経過のある中で他の職員に対して行われた不適切な発言であるのみならず、教育現場で行われたものであることに鑑みると、Fを生徒と接触の多い職場に配置しておくことは是認できないと法人が判断したことをもって不当とはいえない。
 この点、組合は、本件発言は日常的なものではない、Fは反省も謝罪もしている、発言の一部は客観的にみて間違ったものではなく、セクハラやパワハラでもないなどと主張する。しかし、本件発言の後、Fと法人の校長、関係職員等との間で行われた話合い等におけるFの対応をみると、同人に真摯な反省がなく、今後も同種の言動を繰り返す恐れが非常に高いと判断した旨の法人の主張は理解できるところである。
 したがって、法人がFに対し、本件異動発令を行ったことには相当の理由があるといえる。
 組合は、法人の組合に対する嫌悪の表れとして、①校長の態度が急変したこと、②校長が25年7月26日にFに提示した誓約書案に、“してはならないこと”として、同人が「組合活動ではない」と主張している内容を書かせようとしたことなどを挙げている。
 上記①については、校長がFに誓約書案を提示し、異論があればそれも含めて月末までに文書を提出するよう求めた後、同年8月3日、同月22日までに反省的な文書を提出するよう再度求めたことが認められる。組合は、これは組合との交渉などを嫌悪した法人の理事長らの判断によるもので、この急変の結果、校長の解決努力が消滅した旨及び一方的な本件異動発令は組合嫌悪の態様としての強硬策であった旨主張する。しかし、上記誓約書案がすでに反省的な内容を含むものであり、異論は認めないと発言したわけでもないのであるから、校長の態度が急変したとはいえない。また、校長は期限を8月22日まで延期した上で文書の提出を求めているにすぎず、本件異動発令により校長が一転して組合嫌悪の態様としての強硬策をとったともいえない。
 上記②については、Fが勤務時間中に着用していたトレーナーについて、校長が勤務時間中の組合活動はだめだと述べたのに対し、Fが組合活動ではないと述べたこと、誓約書案にFが厳に慎む内容として「組合闘争の標語入りTシャツを勤務時間中に着たりする」の記載があることが認められる。しかし、何らかのスローガンの入ったトレーナーの着用が組合活動に当たるかどうかはともかく、学校職場で勤務中に着用する衣服について法人が意見をもつこと自体を否定できないのは当然であり、法人はFに異論があればそれも含めて文書を提出するよう求めているのであるから、校長の行為そのものが組合嫌悪の表れであるとはいえない。
 したがって、組合が主張するいずれの点についても、法人が組合を嫌悪している証左になるとは認められない。
3 結論
 以上のとおりであるから、本件異動発令は、労組法7条1号に該当する不当労働行為であるとはいえない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約327KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。