労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  都労委平成24年不第75号 
事件番号  都労委平成24年不第75号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y協会 
命令年月日  平成27年1月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   ①地域スタッフ(被申立人法人との間で業務委託契約を締結し、法 人と受信者との間の放送受信契約の取次業務や放送受信料の集金、収納業務等を行う者を指す。)が法人との関係で労組法上の労 働者に当たるか否か、②法人が、地域スタッフとして就労していた組合員X2との業務委託契約を解約したことは、同人が組合員 であること又は労働組合の正当な行為をしたことの故の不利益取扱いに当たるか否か、③上記業務委託契約の解約に関して行われ た団交における法人の対応は団交拒否に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 地域スタッフの労組法上の労働者性について
 労組法上の労働者に該当するか否かの判断は、契約の形式のみにとらわれることなく、現実の就労実態に即して、事業組織への 組入れ、契約内容の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性、業務の依頼に応ずべき関係、広い意味での指揮監督下での労務提 供、顕著な事業者性などの諸要素を総合的に考慮してなされるべきである。
 このことを前提に地域スタッフが労組法上の労働者に当たるかについて検討すると、地域スタッフは、①被申立人法人の業務の 遂行に不可欠ないし枢要な労働力としてその事業組織に組み入れられており、②法人がその労働条件や提供する労務内容を一方 的・定型的に決定していたということができ、③その報酬は、労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格をもった ものであるといえ、④法人からの業務の依頼に対して、基本的に応じざるを得ない関係にあり、⑤日時や場所について法人からあ る程度管理されながら、広い意味で法人の指揮監督の下に労務の提供を行っていると評価でき、⑥顕著な事業者性を認めることが できない。
 したがって、地域スタッフは、労働契約によって労務を供給する者又はそれに準じて団交の保護を及ぼす必要性と適切性が認め られる労務提供者に該当し、法人との関係で労組法上の労働者に当たるというべきである。
2 組合員X2の業務委託契約の解約について
 認定した事実によれば、法人は、X2の業績が目標に達していないため、同人に対し、平成22年2月から特別指導のステップ 1を開始したが、その後も業績が向上せず、8月からステップ2、24年2月からステップ3へと特別指導の段階を進めてきた。 そして、同年4月1日、X2は業務委託契約を更新するに当たり、法人からの業務改善要望に従って誠実に業務を遂行し、これに 反した場合は委託契約を解約されても異議はないとする誓約書を法人に提出した。法人は8月1日、X2の業績が著しく不良であ るとして、同人に対し、9月1日付けで業務委託契約を解約することを通知した。その後、申立人組合と法人との間で交渉が行わ れたが、9月1日、法人はX2との業務委託契約を解約した。
 組合は、X2の契約更新に当たって条件が付されなければならなかった根拠規定はどこにもなく、その適用基準、内容が全国一 律ではないと主張する。しかし、X2以外にも業績不振を理由に条件付契約更新や契約終了となった者が少なからず存在する一方 で、X2に対する特別指導、条件付契約更新及び解約という一連の時期において、その適用基準、内容が全国一律ではないとの主 張を裏付けるに足りる具体的事実の疎明はない。したがって、条件付契約更新の制度の運用について、X2が殊更に不利益に取り 扱われたということはできない。
 組合はまた、X2の特別指導の段階であれば、業務を継続できる業績状態であったと主張する。しかし、同人の業績が低迷して いる中で、同人は特別指導ステップ3の状態で条件付契約更新となった後、その条件に違反して契約が解約されるに至っており、 「『実施要領』のあらまし」(法人が地域スタッフに交付している資料)によれば、同人が業務を継続できる業績状態であったと はいい難かったといえる。
 組合はまた、法人が地域スタッフの削減計画の障害となる組合の存在を嫌悪し、24年の春闘交渉において「54年度における 委託契約の更新について」(条件付契約更新を行う際の取扱いはこの文書の内容に準じることとされている。)の全文を『実施要 領』に掲載することを要求したのを契機として、組合の弱体化を図り、組合の中で地域スタッフの分会として初めて結成された水 戸分会の分会長の片腕的存在であり、まじめに業務、組合活動を行っていたことから、X2との契約を解約したと主張する。しか し、組合から、法人が地域スタッフの削減計画の障害となる組合の存在を嫌悪したことを裏付けるに足りる具体的事実の疎明はな いことなどからすれば、X2との業務委託契約の解約を同人が組合員であること又は正当な組合活動をしたことと結びつけて考え ることは困難である。
 以上のとおり、法人のX2に対する業務委託契約の解約は、同人が組合員であること又は労働組合の正当な行為をしたことの故 の不利益取扱いには該当しない。
3 団交における対応について
 組合は、法人が、「54年度における委託契約の更新について」によらず、組合への通知も話合いもないままX2の業務委託契 約の解約を強行したことを組合から指摘されてもなお居直り続けたと主張する。しかし、24年3月13日頃、法人の水戸放送局 の副部長が分会に、X2が条件付契約更新者となる見込みであることを伝え、7月末前後には、条件違反により解約見込みである ことを伝えているが、8月7日の団交申入れまでに組合から異議や話合いの申入れはなかった。また、法人は8月8日と同月30 日の交渉において、X2の条件付契約更新及び解約について、分会に通知したという事実や交渉の経緯に即して説明しているとい えることから、組合の主張は採用することができない。
 組合はまた、X2に対して条件を付した理由や、付帯した条件内容について、明示された根拠規定や誓約書を示すこともなかっ たと主張する。しかし、8月8日の交渉において水戸放送局がX2に対する一連の取扱いの根拠を説明していることなどからすれ ば、法人の対応は不誠実なものとはいえない。
 以上のとおり、24年8月8日と同月30日の交渉における法人の対応は団交拒否には該当しない。 
掲載文献   

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