概要情報
事件名 |
大阪府労委平成25年(不)第15号 |
事件番号 |
大阪府労委平成25年(不)第15号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
Y市 |
命令年月日 |
平成27年1月21日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人市において平成24年8月に「Y市労使関係に関する条例」が施行された後、市水道局が①申立人組合に対し、「労使関係の基本事項に関する労働協約」の一部改定通知及び「Y市水道局とX労働組合との交渉等に関するガイドライン」の廃止通告をしたこと、②これらの事項に関して、団交に誠実に応じなかったことは不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は市に対し、1 上記労働協約を改正する旨の申入れ、上記ガイドラインを廃止する旨の通知等がなかったものとして取り扱うこと、2 文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、平成24年11月20日に申立人に対して行った、同21年3月31日付け「労使関係の基本事項に関する労働協約」の一部を改正する旨の申入れ及び「Y市水道局とX労働組合との交渉等に関するガイドライン」を廃止する旨の通知並びに同24年12月17日に申立人に対して行った、同21年3月31日付け「労使関係の基本事項に関する労働協約」を同25年3月31日をもって廃止し同年4月1日付けで新たな労働協約を締結することを提案する旨の通知がなかったものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)
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判断の要旨 |
1 本件労働協約の改定申入れ及び廃止通知について
認定した事実によれば、被申立人市水道局は遅くとも平成21年3月以降、本件労働協約に基づき継続して認めてきた申立人組合に対する便宜供与を24年11月20日の労働協約改定申入れないし同年12月17日の労働協約廃止通知により、廃止する旨申し入れたといえる。
一般に、使用者に便宜供与を行う義務はないが、本件のように継続されてきた便宜供与を廃止するには、合理的な理由とともに、労使間で十分に協議し、合意形成を行うための適正な事前手続を行うことが不可欠であるから、便宜供与の根拠となる労働協約の廃止理由や改定手続等の如何によっては不当労働行為となり得ると解すべきである。
まず、本件労働協約の改定理由についてみると、市水道局は同局において不適正な労使関係があったことを理由に本件労働協約の改定申入れを行ったとみることはできず、本件条例の制定・施行を理由に改定申入れを行ったとみるのが相当である。同局は、市全体で統一性をとるということで、本件条例の制定・施行を理由に本件労働協約の改定申入れを行っているところ、組合との労使合意の下に継続され、廃止によって少なからぬ影響が生じる便宜供与を廃止する理由としては一方的であり、合理性を欠くといわざるを得ない。
次に、事前手続についてみると、11月20日の労働協約改定申入れ以降、団交が2回開催されているものの、市水道局から労働協約の改定が必要な合理的理由が十分説明されたとはいえず、組合の合意を得るために同局が団交において誠実に対応したともいえない。
以上のとおりであるから、市は、継続して行われてきた便宜供与の根拠となる本件労働協約を改定する合理的な理由がないまま、一方的に改定・廃止等を行ったものであり、その後の対応においても改定が必要な合理的な理由を十分説明することなく、組合の合意を得る努力を尽くさなかったものであって、かかる申入れは組合に対する支配介入に当たる。
2 本件ガイドラインの廃止通知について
本件ガイドラインは、その成立過程をみると、形式的には市の内部指針であるが、本件労働協約と一体のものとして扱われてきたとみるのが相当である。また、内容をみると、本件労働協約と密接不可分な関係にあるといえる。そうすると、本件ガイドラインの廃止に当たっては、本件労働協約の場合と同様に、合理的な理由とともに、労使間で十分に協議し、合意形成を行うための適正な事前手続を行うことが不可欠である。
まず、廃止理由についてみると、本件条例の施行に伴うものであるとみるのが相当である。しかし、本件労働協約の場合と同様、本件条例の施行のみをもって廃止が正当化されるものではないから、廃止する合理的な理由があったとはいえない。
次に、事前協議の状況についてみると、本件ガイドラインに係る協議は本件労働協約と一体として行われるべきところ、本件労働協約に係る協議は前記1のとおり十分に行われたとはいえず、本件ガイドラインについて別途協議したとの疎明もないので、本件ガイドラインの廃止に当たっての協議も十分であったとはいえない。
以上のとおりであるから、市は、本件ガイドラインを廃止する合理的な理由がないまま、一方的に廃止通知を行ったものであり、その後も組合と十分な協議を行わなかったものであるから、かかる通知は、組合に対する支配介入に当たる。
3 団交における対応について
前記1のとおり、2回の団交において本件労働協約の改定が必要な合理的理由が十分説明されたとはいえず、組合の合意を得るために市が誠実に対応したともいえない。よって、これらの団交における市の対応は労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 |
掲載文献 |
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