労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成23年(不)第66号・24年(不)88号 
事件番号  大阪府労委平成23年(不)第66号・24年(不)88号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成27年1月13日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   ①組合員X2の平成22年度下期賞与及び変形労働時間制に係る年間カレンダーを議題とする22年12月7日開催の団交における被申立人会社の対応、②会社が団交の開催時間等を一方的に限定し、申立人組合がそれに応じなければ交渉に応じないとの態度をとって団交を拒否したこと、③X2の23年度上期及び下期の賞与を議題として24年8月及び10月に開催された3回の団交における会社の対応、④会社がX2の上記の賞与を低額で査定して支給したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、1 X2の上記の賞与について標準的な評価又はB評価がなされたものとして取り扱うこと等、2 文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員X2の平成22年度夏期賞与につき、標準的評価(平成22年12月7日に行われた団体交渉において、被申立人が、その従業員の約60パーセントの者が該当する評価であるとしたもの)がなされたものとして、同23年度上期及び下期賞与につき、B評価がなされたものとして、それぞれ取り扱い、当該各評価がなされていれば得られたであろう賞与相当額と既に支払われた賞与額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記(省略)
3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成22年12月7日開催の団交における被申立人会社の対応について
 認定した事実によれば、団交において会社は、組合員X2の平成22年度下期賞与について、前回の協議で指摘した、就業時間中に業務に関係のない行動を慎むこと及び長時間離席することが多いことの2点がその後も改善されていないという報告を所属部門長から受けており、今回は普通より一段下の評価としている旨述べた。しかし、会社は、申立人組合がX2の業績評価についての客観的な証拠を提示するよう要求したのに対し、証拠となる資料を提示しなかった上、評価の根拠となる事実の信憑性を明らかにする具体的な事実関係に言及せず、説明を回避しているといわざるを得ない。また、組合の求めに応じて、何らかの形で評価の基準を提示する必要性があったとみるべきであるにもかかわらず、提示していない。
 以上のことからすると、この団交における会社の対応は、賞与に係る業績評価についての自らの主張を組合に納得させようとする努力をしたものとはいえず、誠実交渉義務を果たしたものとはいえない。したがって、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとともに、組合の団交権を侵害するものであり、同条3号に該当する不当労働行為である。
 一方、同団交における年間カレンダーの議題に係る会社の対応については、不誠実であったということはできず、この点に係る申立ては棄却する。
2 団交拒否について
 認定した事実によれば、平成23年4月21日の団交から24年8月17日の団交までの間、団交が行われなかったのは、組合と会社の双方が団交開始時間に係る自らの主張を譲らなかった結果によるものとみるのが相当であり、団交が開催されなかった原因を専ら会社のみの責めに帰することはできない。したがって、会社による正当な理由のない団交拒否によるものとはいえない。
3 平成24年8月及び10月に開催された3回の団交における会社の対応について
 団交において会社は、X2の平成23年度上期賞与及び同下期賞与に係る評価が5段階のうちの下から2番目であるBマイナスに該当する旨述べた。しかし、そのような評価の理由について十分な説明を行ったとはいえない。したがって、これらの団交における会社の対応は、賞与に係る業績評価についての自らの主張を組合に納得させようとする努力をしたものとはいえず、誠実交渉義務を果たしたものとはいえないのであるから、労組法7条2号に該当する不当労働行為であるとともに、組合の団交権を侵害するものとして同条3号に該当する不当労働行為である。
4 X2の上記の賞与を低額で査定して支給したことについて
 会社の賞与に係る業績評価制度について検討すると、公正な評価を保障するものとはいえず、評価に恣意的な要素が介在する余地が十分にあるものであったというべきである。
 そして、本件賞与の評価対象期間中、X2に業務の進行に支障が生じるほどの問題点があったとみることはできないにもかかわらず、会社が挙げる評価の理由には不合理又は不自然な点がみられる。このことに、前記1及び3のとおり、本件賞与を議題とする団交において会社が評価の理由の根拠となる事実の信憑性を明らかにする具体的な事実関係についての説明を回避する対応を繰り返していることを併せ考えると、会社は本件賞与に係る評価を恣意的な要素が介在する余地が十分にある業績評価制度を利用して、合理的な根拠なく行ったものといわざるを得ない。
 また、会社が本件賞与に係る評価を行った時点及びその前後における労使関係をみると、X2の組合加入以降2年余りの間、組合と会社との間で組合の活動及びこれに対する会社の対応をめぐって抗議と謝罪要求の応酬が繰り返されていたことなどが認められ、通常以上に緊張した関係にあったものといわざるを得ない。
 以上のことからすると、会社がX2の本件賞与を低額で査定して支給したことは組合員であるが故の不利益取扱いであるとみるのが相当であり、また、そのことによって組合の組織の弱体化を図ったものというべきであるから、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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