労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成25年(不)第32号 
事件番号  大阪府労委平成25年(不)第32号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成27年1月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   申立人組合が、分会所属の組合員4名の雇用主である申立外会社Zが労働基準監督署から受けた是正勧告等を議題として、その親会社である被申立人会社に団交を申し入れたのに対し、会社が交渉する立場にないとして応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社は申立人組合の分会員の労組法上の使用者に当たるかについて
 組合は、申立外会社Zは独立した法人格を有してはいるものの、その経営は会社の支配下にあり、実質は会社の一事業部門にすぎず、また、会社はZの従業員の基本的な労働条件等について具体的に決定しているので、会社は組合の分会員4名の使用者に当たる旨主張する。
 しかし、認定した事実によれば、会社は株式保有や役員派遣等を通じ、Zに対して一定の影響力を有しているといえるものの、それは一般的に親会社が100%出資の子会社に対してもつ影響力以上のものであるとみることはできず、これらのことから、直ちに会社が分会員4名の基本的な労働条件等について、Zと同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるということはできない。むしろ、①Zの従業員475名のうち442名が同社のプロパー社員であったこと、②Zと会社の賃金体系は別個のものであり、関連したりしていなかったこと、③Zの賃金以外の労働条件についても会社とは別個のものであり、会社の直接の関与はなかったこと、④Zが組合との団交を2年足らずの間に複数回行っていること等が認められることからすれば、Zは独立した事業者として会社から受託した路線バス事業を行っており、会社とは別個に賃金等の労働条件を決定し、組合にも独自に対応しているものとみることができ、組合の主張するように実質は会社の一事業部門にすぎないものとまで認めることは困難である。
 組合は、Zが独立した事業者性を有しない根拠として、さらに、①Zの給与計算等やZの人員募集への応募の受付は会社が行っていた旨、②Zの人員採用や入社式、社員研修等に会社が関与していた旨、③会社がZの乗務員に業務に係る指示を発していた旨などを主張する。
 しかし、上記①については、会社とZとの事務等委託契約に基づいて行われていたものとみることができる。②については、地理的な条件等からみてやむを得ないと考えられる点もあり、また、このことだけでは会社がZの社員の採用決定に何らかの影響を与えていたとまで認めることはできない。③については、会社がZの乗務員に業務に係る指示を発しているとまではいえず、むしろ、日常的に指揮命令を行うことはなかったとみることができる。
 なお、組合は、Zは本件団交事項について決定権限を有しておらず、同社を相手方として団交を継続しても解決が期待できない旨主張するが、本件団交事項についてZに決定権限がないとはいえない上、同社は人員募集など是正勧告への対応をし、団交でそのことを説明するなどしているのであるから、解決能力が欠如しているとの組合の主張は採用できない。
 以上のとおりであるから、会社はZの経営を支配し、Zの実質は会社の一事業部門にすぎないとする組合の主張は採用できず、その余の点について判断するまでもなく、これを前提として会社が分会員4名の労組法上の使用者に当たるとの組合主張には理由がない。
2 特定の団交事項に関して会社に部分的な使用者性が認められるか否かについて
 組合は、本件団交事項は運行ダイヤ、勤務シフト、賃金、安全などであり、会社はこれらの事項について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定している旨主張する。
 しかし、認定した事実によれば、最終的な乗務シフトを決定しているのはZであるということができ、乗務員の運転時間や拘束時間を会社が決定しているとの組合の主張は採用できない。また、Zにおける人員採用に関し、人件費割合や個々の乗務員の給与まで会社が決定しているとの疎明はなく、Zの採用乗務員数について会社が拘束している旨の組合の主張は採用できない。乗務員の賃金について、路線バス事業の受託料はZと会社との協議で決定されており、Zからの当該協議への参加者は会社からの出向者であることが認められるが、そのような間接的な影響関係をもって会社がZの従業員の賃金を支配しているということはできない。
 以上のとおりであるから、会社が本件団交事項について、Zと部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定している旨の組合の主張は採用できない。
3 結論
 以上のことを総合的に判断すると、会社がZの経営を支配し、同社の実質は会社の一事業部門にすぎず、その基本的な労働条件等について会社が現実的かつ具体的に支配している旨の主張も、本件団交事項について、会社が部分的とはいえZと同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有するとする旨の主張も、いずれも採用することができない。
 よって、会社が労組法7条に規定する使用者に当たるとすることはできず、その余の点について判断するまでもなく、本件申立ては棄却する。 
掲載文献   

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