労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  (株)想石 
事件番号  茨労委平成25年(不)第2号 
申立人  X(個人) 
被申立人  株式会社想石 
命令年月日  平成26年11月20日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   申立人Xは、石材業を営む申立外会社Zで従業員として勤務していたが、平成21年頃から同社において給与の遅配や欠配が目立つようになった。22年6月頃、Zの社長Z1は経営不振に陥った同社の再建についてY1に助言等を求め、その後、同人が実質的に経営を掌握することとなった。Y1は、Zの行ってきた石材業を新しい会社で行う方針を固め、23年1月、被申立人会社を設立し、社長に就任した。Xは、Zにおいて未払賃金の早期支払をY1に要求していたが、会社の設立に際し、同人から話をもちかけられて取締役製造部長に就任し、Z時代と同様の業務を続けることとなった。24年4月14日、Xの主導の下、会社の従業員により構成される労働組合(以下「組合」)が結成され、同人も役員に就任した。組合がZの未払賃金の支払等を内容とする要求書と団交申入書を会社に提出したところ、会社は、取締役であるXの組合参加資格について疑義があること等を記載した回答書を組合に交付した。同月25日、Xは会社に対し、取締役を辞任する旨記載した辞任届を提出した。同年7月19日、会社の臨時株主総会において新たな取締役1名が選任された後、Y1はXの取締役としての一切の義務及び権利が無効となり、会社との一切の関係が消滅したとする通知書を同人に届けた。
 本件は、会社がその翌日以降、Xの就労を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 茨城県労委は会社に対し、上記の就労拒否の意思表示がなかったものとして、同人を製造部長又はこれに相当する職に復帰させること等を命じた。 
命令主文  1 被申立人株式会社想石は、平成24年7月19日付けの申立人Xに対する就労拒否の意思表示がなかったものとして、同人を製造部長またはこれに相当する職に復帰させなければならない。
2 被申立人株式会社想石は、申立人Xが復帰するまでの間に同人が受け取るはずであった賃金相当額を支払わなければならない。 
判断の要旨  1 申立人Xの労働者性について
 被申立人会社は、Xが取締役であり、取締役としてのみ会社との間で権利義務が存在したにすぎない、雇用契約書は存在せず、労務の対価である賃金の支払の約束も支払った事実もないなどとして、雇用関係は存在しなかったと主張し、同人の労働者性を否定している。
 しかし、Xは「取締役製造部長」の肩書きを付与されていたが、製造部長としての業務内容に関しては同人が従業員として勤務していた申立外会社Zの頃と大きく変わっていないことについて、当事者間で主張の隔たりは見受けられない。また、Xのタイムカードを会社が毎月準備していたこと等からすれば、会社には同人の労働時間を管理又は把握する意図があったものと考えるのが自然である。さらに、Xが会社から支給されていた賃金は、明細書に「基本給」と記載され、他の従業員の賃金と比較して必ずしも高額とはいえず、Z時代に得ていた賃金よりもやや低い水準であった。これらの事情を勘案すると、Xは事業遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み込まれ、製造部門の業務に従事し、タイムカード打刻により労働時間を管理又は把握され、労務の対価としての報酬を受けていたものと評価できる。
 そうすると、Xは会社との間で実質的な雇用関係にもあったものと考えるのが相当である。
2 本件就労拒否が不当労働行為に当たるか否かについて
 会社は、①会社がXを解雇した事実はなく、同人自ら取締役辞任により会社との関係を終了させたものであること、②組合は労組法2条の要件を欠くものであって、本件救済申立ては不当労働行為の救済申立てとなり得ないことから、棄却されるべきであると主張する。
 しかし、上記①に関しては、Xが本件辞任届提出後も拡大役員会議の欠席を除けば、従来どおりの勤務を続け、会社もこれを受け入れていたこと等が認められ、本件辞任届はその文言どおり専ら取締役のみを辞任するとの意思表明にすぎず、会社との実質的な雇用関係まで解消する意思は含まれておらず、会社もそのことを認識していたものと考えるのが相当である。
 上記②に関しては、労組法2条但書1号の「役員」や利益代表者に該当するか否かは、問題とされた組合員である労働者の職制上の名称から形式的に決せられるべきではなく、担当職務の実質的内容や当該労働者の労働組合への加入がその運営に与える影響等を個別的、具体的に判断すべきものである。Xは、取締役を辞任してからは専ら製造部長としての業務のみを行っていたものであり、取締役としての実際の業務を行っていた事実は認定できないことからすると、新たな取締役が選任されて辞任の登記がなされるまでの間のXの取締役としての権利義務は会社法346条1項の規定によりおよそ法律上抽象的に課されていたものにすぎないと考えるのが相当である。加えて、Xの組合加入により組合の運営等に関して使用者の意向等が反映されたと思われるような事実は一切認め得られないこと等を勘案すると、同人は「役員」や利益代表者に当たるとまではいえず、組合も労組法2条の要件を欠くものではないと判断するのが相当である。
 そして、本件就労拒否は、①Y1がZの未払賃金等に関し、組合から強く要求されることを一貫して嫌悪していたとみられること、②組合結成直後から本件就労拒否までの間、使用者と組合が極めて緊張した状態にあったものと推認させるいくつかの出来事があったこと、③Xは組合の中心的人物であったこと、④Y1は組合との団交を嫌悪又は軽視していると思われることからして、組合を嫌悪した会社が本件辞任届の提出を奇貨として組合の中心的人物であるXを職場から排除することにより、組合の弱体化等を企図したものであると判断される。
 以上のとおり、本件就労拒否は会社がXを職場から排除することによって組合の組織や活動を弱体化することを企図した解雇であったと考えざるを得ないことから、労組法2条1号及び3号の不当労働行為に当たると判断する。 
掲載文献   

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