概要情報
事件名 |
郵便事業(岡山支店) |
事件番号 |
中労委平成24年(不再)第39号 |
再審査申立人 |
郵政産業労働者ユニオン中国地方本部(「地本」) |
再審査申立人 |
郵政産業労働者ユニオン岡山支部(「支部」。「地本」と合わせて「組合ら」) |
再審査被申立人 |
日本郵便株式会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成26年10月15日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、岡山支店所属の支部組合員A1(以下「A1」)を同支店X1集配センターへ 、同支店所属の支部組合員A2(以下「A2」。A1とA2を併せて「A1ら」)を同支店X2集配センターへそれぞれ配置換えを行ったこと (以下、「本件配置換え」)が、労組法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして岡山県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審岡山県労委は、本件配置換えは不当労働行為に当たらないと判断して、 組合の救済申立てを棄却する旨の初審命令書を交付したところ、組合らは、 これを不服として、 再審査を申し立てたものである。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 本件配置換えは、組合員であることを理由とする不利益取扱いに該当するか。(争点1)
(1) 本件配置換えは「不利益な取扱い」に該当するかについて
ア 業務内容や勤務時間等の労働条件上の不利益について
A1及びA2は、業務内容及び勤務時間の変化による不利益は存在するが、不利益の程度は比較的軽微なものにとどまる。 さらに、 本件配置換えまでの間の1年間で10回にわたって支店から集配センターへの配置換え(昇任・降職を伴わない)を含む外務社員の人事異動が行われ、 本件配置換えでA1らを除く5名が集配センターへ配置換えとなっている実態からすると、 A1らの業務内容や勤務時間等の労働条件上の不利益は、支店における外務社員の通常の配置換えによって生ずる不利益の範囲を超えるものではない。
イ 通勤時間に関する不利益について
A1の通勤時間は40分程度長くなった点で不利益があるが通勤圏内といえ、 本件配置換え前のA2の通勤時間 (1時間5分) を併せ考えると支店における外務社員の通常の配置換えの不利益の範囲を超えるとは認められない。 A2の通勤時間は40分に短縮され、 利益となる方向に変更された。 以上から、 A1の不利益は支店における外務社員の通常の配置換えによって生ずる不利益の範囲を超えるものではなく、 またA2には不利益はなかった。
ウ 私生活上の不利益について
A1に私生活面の変化があった証拠はない。 A2は、 通院時間や病院の変更によって持病の療養に悪影響が出た証拠はなく、 施設入所中の弟の外出介助等に支障を来した証拠もないから、 A1らに私生活上の不利益があったとは認められない。
エ 組合活動上の不利益について
A1は、支部執行委員で窓口担当副委員という立場にあり、組合活動上の不利益があったが、支部において容易に対応できる程度の不利益にとどまり、A2は、組合員獲得の組合活動は配置換え先でも可能であったことから、組合活動上の不利益は存在しない。
オ 小括
以上を総合考慮すると、本件配置換えは労組法第7条第1号の「不利益な取扱い」には該当するが、不利益の程度は比較的軽微で支店における外務社員の通常の配置換えによって生ずる不利益の範囲を超えるものではない。
(2) 本件配置換えがA1らが組合員であること、または正当な組合活動を行ったことの 「故をもって」 実施されたといえるか。
ア 本件配置換えの経緯及び業務上の必要性
Y1支店長は、郵政事業の民営化、分社化後の会社の状況や中国支社の人事異動方針の下、営業面、品質管理面等で全国低位の状況である支店の改善のため、①外務社員の営業活動の活性化を図り、営業力を強化すること、②無駄を排した効率的かつ適正な要員配置、社員の勤労意欲の高揚、業務能率の増進を図ることの2点を最重要課題とし、その克服のために本件配置換えを含む人事異動を行ったもので、 業務上の必要性があったといえる。
イ 人選基準及び具体的な人選の相当性
人選基準(支店の主任及び一般社員のうち、営業成績及び業務成績が低迷している者を対象として支店本体から集配センターへ配置換えすることとし、①営業成績、②業務成績、③概ね35歳ないし55歳で支店集配営業課外務正社員として概ね10年以上勤続の中堅社員から人選する)は、Y1支店長が営業面等の改善点として、①外務正社員の営業活動の活性化等、②効率的かつ適正な要員配置等を挙げていたことに照らすと、不自然さは認められない。
具体的な人選は、上記人選基準に基づいて営業成績及び業務成績の得点を総合した評価が低位であったA1ら3名を対象者としたもので相当性を欠くとはいえない。
ウ 本件配置換えによる組合活動への影響等
A1の組合活動上の不利益は支部で容易に対応できる程度にとどまり、A2には組合活動上の不利益はないから、A1らの組合活動や組合運営に支障が生じたとはいえない。
エ 本件配置換えに至るまでの時期における会社と申立人らとの労使関係等
本件配置換え前の労使関係は、 やや円満さを欠くものではあったが、 会社の組合差別の意図や組合嫌悪を推認させるような厳しい対立・紛争状態にあったとは認められない。
オ 小括
以上の事実を総合考慮すると、本配置換えはA1らが組合員であること又は正当な組合活動を行った故をもって行われたとはいえない。
(3) 以上により、本件配置換えは、A1らが組合員であることまたは正当な組合活動を行ったことを理由とする不利益な取扱い(労組法第7条第1号)には該当しない。
2 本件配置換えは、組合運営に対する支配介入に該当するか。(争点2)
本件配置換えは不利益取扱いに該当せず、A1らの組合活動に支障が生じたとは認められないから、組合らの運営に影響が生じたとはいえず、他の社員に支部への加入を躊躇させた証拠もない。また、会社が組合間差別を行い、嫌悪し敵視する姿勢を取ってきたことも認められないから、本件配置換えが支配介入に該当するとは認められない。
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掲載文献 |
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