労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  小城新生興業社 
事件番号  佐労委平成26年(不)第1号 
申立人  全日本建設交運一般労働組合佐賀県本部 
被申立人  有限会社小城新生興業社 
命令年月日  平成26年10月20日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が賃金引上げに関する団交において財務諸表等の開示を拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 佐賀県労委は会社に対し、両当事者間で提示方法、公開の可否等について協議することを条件として、売上高及び人件費等の経費の内訳を示して誠実に団交に応じることを命じた。 
命令主文   被申立人有限会社小城新生興業社は、申立人全日本建設一般労働組合佐賀県本部が平成26年2月21日付け2014年春闘要求書で申し入れた賃金引上げを議題とする団体交渉に、賃金交渉に必要な範囲で、売上高及び人件費を含めた経費の内訳を示して、誠実に応じなければならない。
 但し、有限会社においては、財務諸表等の公告が要求されていないことから、両当事者間で、掲示方法、公開の可否、機関紙等への掲載適否等について協議し、合意することを条件とする。 
判断の要旨   認定した事実によれば、申立人組合と被申立人会社との間で平成26年の春闘要求に関する団交が2回行われたが、いずれの団交においても、組合が賃上げに関し、会社回答の具体的根拠となる財務諸表等を提示するよう求めたのに対し、会社は「経営の根幹にかかわる部分は公表できない」「公開の義務はない」などと述べ、売上額等の具体的数値は示さなかった。この点に関し、会社は、必要な資料を提出した上で、経営環境の現状、売上げや人件費の推移、経費アップの項目といった具体的根拠を示して組合の要求に応じられない理由の説明や反論も行っている旨主張する。
 しかし、組合が賃金を一律2万1千円引き上げることを求めたのに対し、会社は基本給を1人当たり平均3,317円(定昇分)プラスベア800円を引き上げると回答してはいるものの、回答について具体的根拠を示した説明をしておらず、会社が提示した資料からは経費に占める人件費の割合やその内容が全く読み取れないのであるから、このような状況の中で、組合が会社の財務資料の提示を求めたことには一定の理由があるというべきである。
 会社はまた、財務諸表を提示しなかった理由として、株式の譲渡制限がなされた閉鎖会社であり、株主を除いて財務諸表の提出義務はないことを主張する。しかし、特例有限会社が会社法上、貸借対照表・損益計算書の公開義務はないとしても、労働組合が使用者と対等な交渉を行うには賃金交渉において必要な範囲で財務諸表の一部開示を要求でき、特例有限会社の決算の非公開は団交における組合要求との関係において一定の制約を受けるものと考える。
 会社はさらに、財務諸表を提示しなかった理由として、それを提示することにより組合が事実と異なる情報を外部に伝える可能性を否定できず、その結果、経営に打撃を受けるおそれがあると考えたからであると主張する。
 確かに、組合と会社との間では分会結成以来、労使紛争が生じ、労委に対する不当労働行為救済申立てに至っていたこと、組合が会社の経営者を名指しで批判する記事等を機関紙に掲載していたことなどが認められる。組合の機関紙の内容をみると、表現に行きすぎの点があり、また、不確定な事実を誇大に表現しているものが見受けられる。組合の情宣活動において表現に行きすぎの点があることが正常な労使関係を構築する上での阻害要因となっているものと推測でき、会社が財務資料を提示すれば、組合が外部に情報を伝えることにより経営に打撃を受けるおそれがあるという会社の主張には理由がある。
 以上のとおり、本件団交における会社の対応については、団交の場で必要な範囲で一部具体的数値を示して組合との合意を目指すという姿勢が認められず、労使の対等な立場での交渉を妨げるものであり、実質的な意味での団交拒否として労組法7条2号の不当労働行為であると判断する。ただし、前記認定のとおり、組合発行の機関紙の表現や団交の経過をみると、組合と会社間の相互不信は根強く、正常な労使関係が構築できない現状を鑑みると同時に、労使関係の将来における安定のためという救済命令の目的を踏まえ、特に条件を付すものである。 
掲載文献   

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