労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  札幌大学 
事件番号  平成25年道委不第3号 
申立人  札幌大学教職員組合 
被申立人  学校法人札幌大学 
命令年月日  平成26年10月10日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①給与規程の改正について、申立人組合に対して改正理由を資料を示して説明することなく、団交継続中に改正を一方的に施行するなどしたこと、②教員の定年後の勤務延長に係る教員勤務延長任用規程の改正について、組合に協議を申し入れずに一方的に実施したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は法人に対し、1 給与規程及び教員勤務延長任用規程の改正に係る団交への誠実な対応、2 前項の団交で不誠実な対応をすることによる支配介入の禁止、3 文書の掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、被申立人の給与規程の改正及び教員の勤務延長任用規程の改正に係る団体交渉につき、平成23年3月に申入れをしていた労働条件の不利益変更の内容を更に不利益なものに変更する理由のみならず変更内容が適正なものであることを説明するとともに、必要に応じて資料を提供するなどして誠実に対応しなければならない。
2 被申立人は、前記1に係る団体交渉において不誠実な対応をすることにより申立人の運営に支配介入してはならない。
3 被申立人は、次の内容の文書を、縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載し、被申立人の中央棟の正面玄関の見やすい場所に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
記(省略)
4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 不誠実な団交について
 被申立人法人が平成24年9月に申立人組合に通知した本件給与規程及び本件教員勤務延長任用規程の改正の内容を、法人が23年3月に行った申入れの内容と比較すると、労働条件をより一層不利益なものに変更したものがあることが認められる。また、法人は上記通知の際、既に給与規程の改正の実施・施行日を決定した旨も通知している。
 そうすると、法人は上記規程改正に係る団交において、改正の必要性のみならず、変更内容が適正なものであることを説明するとともに、必要に応じて資料を提供するなどして誠実に対応する義務があると考えるのが相当である。すなわち、財政状況の健全化のため人件費の削減が必要であることを説明するだけでなく、上記規程改正が財政状況の健全化にどの程度寄与し、今後どのように財政状況を健全化していくのか、財政状況の見通しや中長期的な経営方針などを明らかにするなどして、上記規程改正によって労働者の被る不利益の程度が必要以上に過大なものではなく、また、特定の労働者だけが不利益を被るものではないなど、経過措置や代替措置などの他の施策も含めて上記規程改正が財政状況を健全化する施策として適正なものであることを説明しなければならない。
 しかし、法人は、専ら事業団資料(日本私立学校振興・共済事業団が作成した法人の財務分析に関する資料)によって財政状況の健全化のために人件費の削減が必要であることを説明するにとどまっており、労働条件の不利益変更につき、改正の具体的な実施・施行日を決定した旨通知していることも併せて考えれば、本件給与規程及び本件教員勤務延長任用規程の改正を早急に実施することが必要であり、かつ適正なものであることを十分に説明するなどして組合の理解を得るように努めたとはいえない。
 以上のとおりであるから、本件給与規程及び本件教員勤務延長任用規程の改正に係る団交における法人の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
2 支配介入について
 法人は前記1のとおり、本件給与規程及び本件教員勤務延長任用規程の改正に係る団交につき不誠実な対応をし、上記規程改正を実施したものであるから、このような法人の対応は組合の運営に介入したものと認めるのが相当である。
 よって、上記団交における法人の対応は、労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
 
掲載文献   

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