労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  兵庫県労委平成25年(不)第5号 
事件番号  兵庫県労委平成25年(不)第5号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成26年10月9日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   申立外労組のチェック・オフを実施している被申立人会社が申立人組合に対し、チェック・オフの申入れを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 兵庫県労委は会社に対し、チェック・オフの速やかな実施を命じた。 
命令主文   被申立人Y株式会社は、申立人X労働組合の組合員の組合費のチェック・オフを速やかに実施しなければならない。 
判断の要旨  1 申立人組合に対する支配介入について
 同一企業内に複数の労働組合が存在する場合、一方の労働組合に組合費のチェック・オフを行いながら、他方の労働組合に対して一切これを拒否することは、そのように取扱いを異にする合理的な理由が存在しない限り、他方の労働組合の活動を低下させ、弱体化を図ろうとする使用者の意図を推認させるものとして、労組法7条3号の不当労働行為に該当すると解される。
 そこで、被申立人会社がチェック・オフを実施しないことに合理的な理由があるか否かについて検討する。
 会社は、有効なチェック・オフを行うためには、当該労働組合との書面協定及び個々の組合員からチェック・オフについての委任を受けることが必要であるが、本件申立て前において組合はいずれの要件をも満たしていなかったと主張する。そして、書面協定については、労働組合の方針や併存労働組合との関係などを踏まえ、まずは基本労働協約を締結し、その中でチェック・オフについても定めるべきであると主張する。
 しかし、チェック・オフを実施するための労働協約だけを締結することは、両者にその意思があれば可能であり、必ずしも基本労働協約を締結してその中でチェック・オフについても定めなければならないという理由はない。また、会社は既に過半数労働組合である申立外労組との間でチェック・オフに関する協定を締結しているのであるから、組合とチェック・オフを実施するための労働協約を締結することに何の支障もない。
 会社はまた、組合の活動はチェック・オフの実施を求める以外に見るべきものはなく、組合活動の具体的取組については何ら明らかではないことが基本労働協約締結に至らなかった要因であるとも主張する。しかし、組合がどのような労働条件の要求を行うかはひとえに組合の自由であり、会社は組合の活動を評価して、その評価により対応を決定することは容認されるものではなく、チェック・オフの実施を拒否する合理的な理由にはならない。
 次に、組合員からの委任については、確かに本件申立て前には同意書は提出されていなかったが、組合は本件審査手続が進む中で同意書をとりまとめて会社に提出しており、会社が主張する要件の1つは充足されているのであるから、当委員会がこのことに関して何らかの言及をする必要はないと思料する。
 以上のとおり、組合費のチェック・オフについて組合に対する取扱いを併存する労組と異にすることに合理的な理由は存在しないのであるから、併存する労組に対してはチェック・オフを実施し、組合のチェック・オフには応じないという会社の取扱いは、組合に対する支配介入に該当する。
2 組合員に対する不利益取扱いについて
 組合の執行部が各組合員の勤務場所等を訪問して10日間ないし2週間ぐらいかけて組合費を集金していることが認められる。そのための労力は大きく、その意味で組合が組合活動を行う上で不利益を被っていると認められるが、このことはむしろ組合に対する支配介入行為と評価すべきものであり、これをもって直ちに組合員に対する不利益な取扱いがなされていると認めるに足る疎明はないと言わざるを得ない。
 よって、会社が組合のチェック・オフを実施しないことは、組合員に対する不利益取扱いには該当しないと判断する。 
掲載文献   

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