概要情報
事件名 |
ZINZAN |
事件番号 |
岡委平成25年(不)第1号 |
申立人 |
労働組合岡山マスカットユニオン |
被申立人 |
株式会社ZINZAN |
命令年月日 |
平成26年9月25日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
|
事件概要 |
被申立人会社の飲食店で勤務していたX2は、平成23年11月16日、店長から度重なる遅刻等の勤務懈怠を理由に、1か月後に辞めてもらう、居づらいなら今日で終わりにしてもかまわない旨伝えられ、「今日で辞めます」と答えた。本件は、X2がその後、申立人組合に加入し、組合が同人の解雇予告手当及び未払い残業代を議題とする団交を会社に申し入れたのに対し、会社が一度はこれに応じたものの、25年10月3日及び同月10日に申し入れられた団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
岡山県労委は会社に対し、誠実団交応諾及び履行報告を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人株式会社ZINZANは、申立人労働組合岡山マスカットユニオンが、平成25年10月3日付け及び同年10月10日付けで申し入れた、組合員X2に関する解雇予告手当及び未払い残業代の支払いを議題とする団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、前項を履行したときは速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 |
判断の要旨 |
1 解雇予告手当に関する団交応諾義務について
被申立人会社は、組合員X2の離職は解雇ではなく、自主退職であり、その旨についても十分な説明を尽くしており、交渉の余地がないと主張する。
しかし、会社がX2からの依頼を受けて同人の離職理由を退職勧奨としたのは離職後のことであり、当初から自主退職であったとの会社の主張には理由がない。また、X2が平成23年11月6日に離職し、その後労務提供をしなかったのは、会社が即時解雇と受け取られる意思表示をしたためである。その際、同人は解雇予告手当について何ら告知をされておらず、同人が、解雇予告手当の支払義務が会社にあるとの認識を持った上で、それを免除する意思表示をしたとはいえない。このような状況の下で雇用契約が終了した本件については、結果として労基法20条に違反する即時解雇の状態が実現したと認めるのが相当である。
そして、会社は申立人組合との団交においても、解雇予告手当についてX2及び組合に十分な説明を行っておらず、離職に際して未清算の事項が存在するため、本件当事者間で協議する必要があるといえる。
以上のことから、会社がX2の合意退職等を理由に解雇予告手当の支払を議題とする団交に応じないことには理由がない。
2 未払い残業代に関する団交応諾義務について
会社は当初、組合に対し、X2の遅刻等の不就労時間を差し引くと1日の実労働時間は多くても8時間となり、時間外労働は生じていない旨回答したが、その後、同人の労働時間、休憩時間は正確に記録されておらず、時間外労働については特定できない旨回答している。また、社会保険労務士を通じて、X2の1日の実労働時間を営業日報に書かれている10時間と認めてほしい旨発言し、さらに、1か月分の賃金相当額の23万円を解決金とする和解を申し入れている。
このような会社の対応は、交渉の都度、主張が変遷するなど組合の理解と納得を目指した誠実な対応であったとはいえないから、説明を尽くしたとの主張は認容することができず、団交を拒否する正当な理由とは認められない。
3 和解案の拒否等が団交拒否の正当な理由に当たるか
会社はまた、①前述の和解案を組合が拒否し、交渉が行き詰まったこと、②労基署の調査により組合が要求する事項については解決済みであること、③組合が議題として要求する事項については別途民事訴訟で審理されていることが、会社が団交に応じないことの正当な理由である旨主張する。
しかし、上記①と③を団交拒否の正当な理由とすることはできないのみならず、②についても、労基署の調査結果は、解雇予告手当については即時解雇とは断定できないとするのみで、離職の態様の判断を留保し、時間外労働については明白な証拠がないので判断できないとしており、労基署の調査で決着済みとする会社の主張には理由がない。
4 結論
以上検討したとおり、会社の主張するX2に対する解雇予告手当及び未払い残業代に係る団交拒否の正当な理由はいずれも是認することができない。よって、会社が本件団交申入れに応じないことは労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 |
掲載文献 |
|