労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件名  Dash 
事件番号  都労委平成24年不第49号 
申立人  一般合同労働組合東京西部ユニオン 
被申立人  株式会社Dash 
命令年月日  平成26年8月26日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①再雇用契約において火曜日と金曜日は休日とされていながら火曜日しか休んでいなかった組合員X2に対し、平成23年10月以降、金曜日は契約どおり休むよう通告したこと、②24年5月23日付労働契約書(再雇用者更新用)においてX2の労働条件を引き下げたこと、③X2に対し、年次有給休暇を取得したことを理由に皆精勤手当を支払わなかったこと、④X2及び組合員X3に対し、2時間ごとの統計情報ポスレジ入力指示に関する始末書の提出命令を発したこと、⑤花小金井店をフランチャイズ店化し、これに伴い、X2及びX3に対して他の店舗への異動命令を発したこと、及び⑥これらの問題等に関して8回にわたって行われた団交における会社の対応は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は会社に対し、1 X2に対し23年11月11日以降、金曜日に業務に従事したものとして取り扱うこと等、2 文書の交付・掲示、3 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人株式会社Dashは、申立人一般合同労働組合東京西部ユニオンの組合員であるX2に対し、平成23年11月11日から24年5月31日までの間の金曜日に業務に従事したものとして取り扱い、その間の賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、本命令書交付時にX2が勤務している会社の店舗内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記(省略)
3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2に対し、金曜日は休むよう指示したことについて
 被申立人会社が①X2の金曜日出勤を認めてきた運用を変更し、就労をやめるよう指示したことについて、その合理的な理由を説明していないこと、②会社が金曜日の就労をやめるよう指示した時期は、同人が申立人組合に加入し、団交が開催された直後であること、③団交において同人の金曜日出勤のことが話されるとともに、組合が同人の年次有給休暇に係る要求も行っていたこと等を総合的に考慮すると、会社が同人の金曜日出勤に係る運用を変更したのは、同人が組合に加入し、団交が行われたことを理由としたものであると強く推認される。したがって、会社が上記の指示をしたことは、同人の組合加入及び組合活動を理由とした不利益取扱い並びに組合活動の抑制を企図した支配介入に該当する。
2 平成24年5月23日付労働契約書によりX2の労働条件を引き下げたことについて
 会社の掲げるX2の労働条件見直し(時給の100円減額及び1日の就業時間の1時間短縮)の理由は、全体として不自然であるとはいえず、変更後の同人の時給も他の再雇用者と比較して低額とはいえないのであるから、会社が同人の労働条件を引下げたことは同人が組合員であるが故の不利益取扱いに該当するとはいえず、また、組合の運営に対する支配介入にも該当しない。
3 X2に対し、皆精勤手当を支給しなかったことについて
 会社は以前、組合員X3に対して皆精勤手当の過去2年間分の年次有給休暇取得による不支給分を支払ったことがあるが、その時は従業員の中で組合員はX3のみであったことからすれば、支払対象が同人1人であるから紛争解決のために支払ったとする会社の主張ももっともである。そして、その時、今後は新たに従業員が組合員となった場合に同様に扱うということを合意したような事情は認められないから、会社がX2についてX3と同じ対応をしなければならないとはいえない。
 そもそも年次有給休暇を取得した場合に皆精勤手当を不支給とするのは、従業員全員に対して賃金規程に基づき一律に行っていたことであり、また、これまで過去の不支給分の支払を受けたのは組合員であるX3一人だけであるから、会社がX2に対して皆精勤手当の不支給分を支払わなかったことは他の従業員に対する扱いと比較して組合員に対する差別的扱いということにはならない。
 したがって、会社がX2に対し、皆精勤手当の不支給分を支払わなかったことは、同人が組合員であるが故の不利益取扱いであるということはできず、また、組合の運営に対する支配介入にも当たらない。
4 ポスレジ入力に関する始末書の提出を命じたことについて
 X2とX3が勤務していた花小金井店でのポスレジ入力の未入力が他の店舗と比較して際立って多いことからすれば、会社が始末書の提出を求めたことには相応の理由があるといわざるを得ず、その他、組合員であるが故に始末書の提出を命じたことを推認させる具体的な事実の疎明もない。
 したがって、会社がX2及びX3に対し、ポスレジ入力指示に関する始末書の提出を命じたことは、同人らが組合員であるが故の不利益取扱いに該当せず、また、組合の運営に対する支配介入にも該当しない。
5 花小金井店をフランチャイズ店化したこと等について
 組合は会社が組合の副分会長であったX4を取り込んで花小金井店をフランチャイズ店化させたと主張するが、認定した事実によれば、同人が会社との間でフランチャイズ契約を締結したのは自らの意思に基づく行動であったとみるのが相当である。また、フランチャイズ店化に伴うX2及びX3の異動は会社における通常の手続のとおりであって、非組合員と比較して差別的な扱いがあったとはいえず、その他、会社の不当労働行為意思を推認させる具体的な事実の疎明もない。したがって、同店のフランチャイズ店化並びにこれに伴うX2及びX3に対する異動命令は、いずれも同人らが組合員であるが故の不利益取扱いに該当せず、また、組合の運営に対する支配介入にも該当しない。
6 団交における会社の対応について
 X2の再雇用契約の更新に当たり、会社は義務的団交事項である同人の再雇用条件について実質的な交渉を行っておらず、同人は団交における協議を経ずに再雇用契約の更新をせざるを得なかったのであるから、会社の対応は不誠実な団交に当たる。
 また、X2の週5日勤務に係る団交において、会社はそれまで同人の金曜日出勤を認めてきた運用を変更する理由を説明しておらず、第6回団交ではこの件に係る交渉を拒否してしまったのであるから、このような会社の対応は不誠実な団交に当たるといわざるを得ない。
 上記以外のX2の皆精勤手当その他に係る団交については、会社の対応が不誠実であったとはいえない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約792KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。