労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  えどがわ環境財団 
事件番号  都労委平成24年不第57号 
申立人  東京公務公共一般労働組合 
被申立人  公益財団法人えどがわ環境財団、江戸川区 
命令年月日  平成26年8月5日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人の管理運営する江戸川区立自然動物園に勤務していた法人の職員X2ら3名は、平成23年10月、職員希望調査票の自由意見記載欄に職員Y5が獣舎の掃除をしない、職員に対する言動がひどいなどと記載し、法人に提出した。同年11月、被申立人区から派遣されている法人の事務局長Y4は、面談において、女性職員に対し、仕事、恋愛及び結婚に関する話をするとともに、朝礼で、Y5を手伝わなかった人も悪いなどと述べ、X2に対し、「あなたが仕切りたいんじゃないの」などと述べた。同月28日、法人は、Y5らを飼育班のチーフとすること等を記載した「自然動物園組織運営改善計画(平成23年度)」を作成するとともに、X2に対し、12月いっぱいで動物飼育業務から一切離れるよう指示した。X2ら3名は、申立人組合に加入し、X2が江戸川動物園分会の分会長、X3が副分会長、X4が書記長となった。24年2月、組合は財団に対し、「組合結成通知書」と「団体交渉申入れ書」を送付し、来年度の勤務場所、職場環境の改善等についての団交を申し入れた。その後、同年3月2日以降4回にわたって団交が行われた。法人は、同年4月1日付けでX2に対して法人事務局の「みどりの推進係」への配置転換を、X3に対して篠崎ポニーランドへの配置転換を命じた。
 本件は、①上記X2及びX3に対する配転命令、②上記配転命令や上記Y4の発言等を議題とする団交における法人の対応、③Y4の区からの派遣に関する問題等を議題とする団交の申入れに区が応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 東京都労委は法人に対し、1 X2及びX3に対する上記配転命令をなかったものとすること、2 文書の交付・掲示、3 履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人公益財団法人えどがわ環境財団は、申立人東京公務公共一般労働組合の組合員X2及びX3に対する平成24年4月1日付配置転換命令をなかったものとして取り扱い、同人らを江戸川区立自然動物園の職務に復帰させなければならない。
2 被申立人財団は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、財団内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記(省略)
3 被申立人財団は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件配転について
 認定した事実によれば、動物飼育職としての技能を長年にわたり培ってきた組合員X2は、本件配転後、その技能を活用できるとの展望を見出せない状況にあり、本件配転により不利益を被っていないとはいえず、同X3の配転についても同人の長年の経験をないがしろにするもので、さしたる理由もなく本人の意に沿わない配転がなされたこと自体が不利益取扱いであるとみることができる。また、X2らの申立人組合加入通知よりも先に本件配転が決定していたとは認められず、また、本件配転に真に業務上の必要性があったのか疑いを持たざるを得ない。さらに、被申立人法人は当時、組合加入者の拡大を阻止しようと考えていたものと推認されるとともに、配転を正式に決定したのは組合結成通知のわずか約1か月後、第1回団交の約10日後であることが認められる。
 これらを併せ考えれば、本件配転が平成22年から検討が重ねられてきた組織改革の一環としてなされたものであり、X2らの組合活動とは全く関係がないとの法人らの主張は採用することができない。むしろ、本件配転は、X2及びX3が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、本件配転により分会三役が別々の職場に勤務することになったことからすれば、組合の弱体化を企図した、組合の運営に対する支配介入にも当たるとみざるを得ない。
2 団交における法人の対応について
 法人は団交において、本件配転の必要性につき十分に答えているとはいえない。また、組合が自然動物園で飼育経験者11人のうち4人が転出し、残った7人のうち2人が新人であり、仕事が回らないなどと抗議したのに対し、協力体制で相談しながらやっていくといった抽象的な説明をするにとどまっている。それどころか、法人の専務理事Y3は、人事権は絶対である、発令したものについては交渉する気もないなど、組合との協議を事実上、拒否する対応をしている。こうしたことからすると、法人の対応は誠実さを欠くものであったといわざるを得ない。
 一方、法人の事務局長Y4の発言問題に係る対応については、Y4自身が団交に出席して説明していること、一定程度の対策を示していること、第3回及び第4回の団交には上位の職である専務理事が出席していることからすれば、不誠実な団交に当たるとまではいえない。
3 被申立人区の団交拒否について
 Y4の言動の存否、内容は、法人の職員の作業環境という基本的労働条件にかかわるものであるが、区がこうした基本的労働条件について、雇用主である法人と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあることを示す具体的な事実の疎明はない。また、本件において、区がY4の派遣を解除しなければ、法人職員の基本的労働条件の維持・回復が図れない事態に陥っている等の状況にあることを示すに足りる具体的な事実の疎明もなされておらず、区は法人職員の基本的労働条件について現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあるとはいえない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、区は上記事項について団交に応じるべき使用者に当たるとはいえない。 
掲載文献   

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