労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  鴻池運輸 
事件番号  福岡労委平成25年(不)第11号 
申立人  福岡地区合同労働組合 
被申立人  鴻池運輸株式会社 
命令年月日  平成26年7月25日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   平成23年10月21日、福岡県労委は、本件申立人組合及び被申立人会社を当事者とする平成22年(不)第3号事件について不当労働行為の成立を認め、会社は組合が申し入れた場合には団交ルールの設定を議題とする団交を拒否してはならない旨の命令を発した。会社は中労委に再審査を申し立てたが、中労委は25年5月15日付けでこれを棄却した。会社はこの命令を不服として、東京地裁に取消訴訟を提起した。
 本件は、組合が同年6月10日、改めて団交を申し入れたのに対し、会社が①団交ルールの設定については東京地裁の判決を待って対応する、②組合側の交渉人数を5名以内に限定されたいと回答したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
福岡県労委は会社に対し、団交応諾を命じた。 
命令主文   被申立人鴻池運輸株式会社は、申立人福岡地区合同労働組合の団体交渉申入れに対して、団体交渉ルールの設定については東京地方裁判所の判決を待って対応する旨、又は、交渉人数については同組合に5名以内に限定するよう求める旨回答することなく、団体交渉に応じなければならない。 
判断の要旨  1 団交ルールの設定については東京地裁の判決を待って対応するとの回答について
(1)団交ルールの設定に関する団交の応諾義務
 認定した事実によれば、本件労使間で団交が開催されたのは平成23年10月4日が最後であるが、団交ルールについて協議がなされた事実は認められない。また、本件回答時に至っても団交の出席人数を巡って労使が対立していたことに鑑みれば、団交ルールについての協議の必要性はいまだ失われていないというべきである。
 また、当委員会が発した「団交ルールの設定を議題とする団交を拒否してはならない」旨の命令の効力は取消訴訟が提起されたとしても否定されないことはいうまでもなく、被申立人会社としては命令の内容に異議を留めると明言した上で、とりあえず団交に応じるなどの対応も考えられるところである。
 したがって、本件回答時においても、会社には団交ルールの設定についての団交に応諾する義務があったといえる。
(2)不当労働行為の成否
 これまでの経緯に鑑みれば、本件労使間で組合からの再三の団交要求にもかかわらず、2年以上にわたり団交ルールの設定に関する団交が行われていない原因は、主に「中労委の再審査命令を待って対応する」、「東京地裁の判決を待って対応する」などの回答を頑なに繰り返す会社の対応にあると、今やいわざるを得ず、これらの対応は、当委員会の上記救済命令が確定するまで協議を行う意思がないと会社が表明したものと評価せざるを得ないのであって、「東京地裁の判決を待って対応する」との回答は団交拒否の正当理由とは認められない。よって、会社がこのように回答したことは、団交ルールの設定に関する協議を実質的に拒否したもので、労組法7条2号の不当労働行為である。
2 交渉人数に関する回答について
 一般に労働組合の団交申入れに対して、使用者が交渉人数について合理性のない条件を提示し、それに固執したことが原因となって団交が開催されなかったと認められる場合には、正当な理由のない団交拒否に該当すると考えられる。
 本件についてみると、会社は申立人組合の団交要求に対して繰り返し「交渉人数は当社は4名であるので、貴組合も5名以内に限定されたい」と回答しているが、5名という交渉人数にこだわらなければならないような特段の理由が会社に存するとは認められない。
 また、当委員会の命令及び中労委の命令の発出後も、会社は再考の姿勢を示すことなく、組合が中労委命令に従って10名の参加を認めるよう促しても、依然として5名に限定する旨、回答している。
 以上のことからすれば、本件団交申入れに係る団交が開催されていない原因は、会社が「交渉人数は当社は4名であるので、貴組合も5名以内に限定されたい」と回答したことにあったとみることができ、会社がこのような回答をしたことは労組法7条2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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