労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  立花商事(第2) 
事件番号  福岡労委平成25年(不)第7号 
申立人  連合福岡ユニオン 
被申立人  株式会社立花商事 
命令年月日  平成26年7月25日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①組合員X2を謹慎処分及び出勤停止処分に処したこと、②X2に対し、平成24年度期末賞与及び25年度夏季賞与を不支給としたこと、③25年8月29日付けの団交申入れ(上記夏季賞与の支払等を求めたもの)に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は会社に対し、1 上記①の懲戒処分の撤回等、2 X2に対する上記②の賞与相当額の支払、3 上記③の団交申入れの誠実応諾、4 文書の手交及び掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人株式会社立花商事は、申立人連合福岡ユニオンの組合員X2に対する平成25年3月12日付け謹慎処分、同年4月6日付け謹慎処分及び同年7月22日付け出勤停止処分をそれぞれ撤回し、同人に対し、これらの処分がなければ受けるはずであった賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人株式会社立花商事は、申立人連合福岡ユニオンの組合員X2に対する上記1の3件の懲戒処分がなければ受けるはずであった平成24年度期末賞与及び平成25年度夏季賞与相当額を支払わなければならない。
3 被申立人立花商事株式会社は、申立人連合福岡ユニオンからの平成25年8月29日付け団体交渉申入れに対し、誠意をもって応じなければならない。
4 被申立人株式会社立花商事は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、下記の内容の文書(A4判)を申立人連合福岡ユニオンに手交するとともに、A1判の大きさの白紙(縦約84センチメートル、横約60センチメートル)全面に下記内容を明瞭に記載し、被申立人株式会社立花商事本社会議室兼休憩室の見やすい場所に14日間掲示しなければならない。
(下記の内容 省略) 
判断の要旨  1 平成25年3月12日付け謹慎処分について
 認定した事実によれば、処分理由は、組合員X2が①23年7月28日の団交の席上で被申立人会社のファックス機の無断使用について謝罪したにもかかわらず、その後も同行為を繰り返したこと、②本件無断使用の事実確認において会社の回答指示に対し、不明確不誠実な回答を繰り返したことであるとされている。
 上記①については、X2の行為は就業規則に定める懲戒事由に該当し、会社が一定の処分を行うことは認められる。しかし、②については、会社が25年3月2日から同月7日にかけてX2に対して行った質問は、ファックス機使用に係る事実確認とは明らかに無関係で、同人の人格を一方的に非難するものであり、また、殊更に反省を求め、執ように謝罪や誓約を求めるなど内心の自由を侵害していると評価されるものであって、質問自体不適切なものといわざるを得ない。したがって、これらに対してX2が行った回答について、これを不正確、不誠実であるなどとして処分の対象とすることはできない。
 また、懲戒処分の相当性については、本件謹慎処分は過重であり、社会通念上相当性を欠いていることが明らかである。
 不当労働行為の成否に関しては、以上のことに加え、会社が服務規程第97条(労働組合活動)違反を処分理由として掲げており、X2のファックス機使用を組合活動の一環としてもとらえていることや、会社においてこれまでに賞与が原則不支給となる謹慎、出勤停止又は降格の処分を受けたのは組合員だけであることなどが認められる。
 以上のことからすれば、会社が申立人組合ないし組合員を嫌悪していたと十分推認され、本件謹慎処分はX2が組合員であることを理由として特に重い処分としたものといわざるを得ず、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当する。
2 平成25年4月6日付け謹慎処分について
 処分理由は、組合員X2が①故意に休憩を取得せず、②休憩時間が取得できなかった分の賃金を請求したことなどとされている。
 しかし、労働者が休憩を取得しないことは、それが権利の濫用に当たるなど特段の事由による場合を除き、懲戒処分の対象とすることはできない。また、X2が休憩時間に就労した以上、その時間分の賃金を請求するのは正当な行為であって、請求したこと自体を処分の対象とすることはできない。さらに、会社は、非組合員Aに対しても休憩の不取得を理由として減給処分を行っているが、X2に対しては休憩の不取得に加え、処分理由となり得ないものを更にいくつも取り上げ、Aに対するのよりも重い濫用的な処分を行っている。
 以上のことに加え、前記1で述べた事実を併せ考えると、会社が組合ないし組合員を嫌悪していたと十分推認され、本件謹慎処分はX2が組合員であることを理由として行ったものといわざるを得ず、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当する。
3 平成25年7月22日付け出勤停止処分について
 処分理由は、①許可のない場所で水を汲んではならないことを知りながら、従業員Bと一緒に無許可場所で2回取水したこと、②自らも無許可場所で水を汲んだにもかかわらず、会社の清掃部長に対し、Bのみを注意するよう求めたことなどとされている。
 しかし、上記①に関しては、会社が従業員に対して取水許可場所について具体的な説明を行っていなかったこと等からすると、X2は取水許可場所について具体的に把握していたとはいえず、Bの提案に従って取水作業を行ったことは特に問題とされるものではなかったと考えられる。よって、X2による無許可の場所での取水行為を懲戒処分の対象とすることは失当である。
 また、②に関しては、他の従業員の不適切な行為について上司に注意を促す行為はむしろ正当な行為といえるのであって、会社が主張するように企業秩序を破壊するものであるとは認められない。よって、X2が清掃部長にBを注意するよう求めたことを懲戒処分の対象とすることはできない。
 不当労働行為の成否に関しては、以上のことに加え、会社が事実関係の確認と称してBに回答書の提出を求めたのは一度だけであるのに対し、X2には何度も執ように求めていることや、X2に対して、無許可場所での取水に加え、処分理由となり得ないものを更にいくつも取り上げ、Bに対するのよりも重い濫用的な処分を行っていることが認められる。
 以上のことに加え、前記1で述べた事実を併せ考えると、会社が組合ないし組合員を嫌悪していたと十分推認され、本件出勤停止処分はX2が組合員であることを理由として行ったものといわざるを得ず、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当する。
4 賞与の不支給について
 本件各賞与の不支給はいずれも、X2が前記1から3までに記した懲戒処分を受けたことにより、なされたものと判断せざるを得ない。それらの懲戒処分は前記のとおり、いずれも不当労働行為に該当することから、本件各賞与の不支給も労組法7条1号及び3号の不当労働行為に該当する。
5 団交申入れへの対応について
 X2は夏季賞与が全く支給されないという大きな経済的不利益を被っており、この点について早期の団交開催を求めることには相応の理由があり、会社には早期に団交に応じる義務があったといえる。それにもかかわらず、会社は、合意に至る可能性があるのか疑問であると組合に回答し、さらに1か月以上も団交に応じなかったのであるから、会社の対応は不誠実なものであったといわざるを得ない。
 したがって、本件団交申入れに対する会社の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 
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