労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  南島原市 
事件番号  長崎県労委平成25年(不)第1号 
申立人  南島原市職員労働組合現業公企評議会 
被申立人  南島原市 
命令年月日  平成26年7月22日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人市は平成24年11月15日、申立人組合などに対し、ごみ収集業務を平成25年度から民間に委託することについての実施計画の案を手交した。その後、同年12月までに3回にわたり団交が行われたが、実施計画の案について、組合が、実施されれば、労働条件が変更になると主張したのに対して、市は、管理運営事項であり、労働条件の変更はないと主張し、議論は平行線のまま進展しなかった。
 本件は、このような市の対応が不当労働行為に当たるか否かが争われた事件である。
 長崎県労委は市に対し、文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、本命令書受領の日から10日以内に、下記内容の文書を手交しなければならない。
 当市が、平成24年11月9日、11月30日及び12月25日に行われた貴組合とのごみ収集業務の民間委託に関する団体交渉において、誠実に対応しなかったことは、長崎県労働委員会によって、労働組合法第7条第2号に違反する不当労働行為であると認定されましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
   平成  年  月  日
 南島原市職員労働組合現業公企評議会
 議長 X1 様
南島原市
市長 Y1

2 申立人のその余の請求は棄却する。 
判断の要旨  1 平成24年11月9日、11月30日及び12月25日の団交について
(1)本件民間委託に伴い労働条件の変更はないとの主張
 被申立人市は、ごみ収集業務に従事している正規職員について、完全に民営化された段階では、解雇することなく同じ衛生局内で配置換えを行うので本件民間委託に伴い労働条件の変更はないと主張する。
 しかし、同じ衛生局内であっても配置換えとなれば、従事することとなる業務がごみ収集業務と大きく異なるのはもとより、勤務箇所が深江町となる可能性や勤務時間が変更となる可能性、また、新たに資格を取得しなければならなくなる可能性などもある。これらのことから判断すると、本件民間委託に伴い組合員の労働条件に変更がないと認めることは到底できず、市の主張は採用できない。
(2)管理運営事項に該当し、団交の対象とはならないとの主張
 市は、本件民間委託を行うことは管理運営事項に該当するので、団交の対象にならないと主張する。確かに、管理運営事項については、地公労法7条により団交の対象とすることができないとされているが、管理運営事項であると同時に労働条件にも関する事項があれば、その労働条件に関する事項は団交の対象となると解される。
 そうすると、本件民間委託自体が管理運営事項に当たるとしても、その実施に伴い影響を受ける労働条件については団交の対象となるのであり、前記のとおり、本件においては労働条件の変更がないとは認められないのであるから、市の主張は採用できない。
(3)管理運営事項そのものを対象とする事前協議に応じることはできないとの主張
 市は、申立人組合らが本件民間委託の白紙撤回を要求してきたことから、管理運営事項そのものを対象とする事前協議に応じることはできないとも主張する。確かに、24年11月9日の団交において組合らが白紙撤回の要求を行ったことが認められる。
 しかし、本件民間委託が具体化する前の23年11月1日に行われた団交において、組合らは、21年度から行っている「ごみステーション化」に関連して、民営化に向けての話であるようならば、組合に協議することを求め、市は、労働条件の変更にかかわることについては協議する旨答えている。また、組合らに白紙撤回を求める意思がなかったとまではいえないにしても、24年11月9日の団交において、民営化に伴い労働条件の変更が生じることが問題だとして市に問い質していることなどからすると、民営化自体の白紙撤回の要求のみに固執していたと認めることはできない。当該白紙撤回要求は、市長決裁済みの実施計画の案を突然提示されたことに対する抗議の表れとみるのが相当である。よって、市の主張は採用できない。
(4)結論
 以上のとおり、市の主張はいずれも認めることはできず、団交において「労働条件の変更とは考えていない。管理運営事項であり、事前協議や団体交渉の対象ではない」という姿勢を頑なにとり続けた市の対応に合理的な理由を見出すことは困難である。したがって、このような市の対応は労組法7条2号の団交拒否(不誠実団交)に該当すると判断せざるを得ない。
2 本件救済申立て以降に行われた団交について
 平成25年12月18日の団交において、市側が労働条件の変更があり得る旨発言し、お詫びの言葉を発したこと、また、交渉の継続を求めたことが認められる。
 しかし、市はその後自ら交渉継続の申入れを行ってはいない。また、回答の中で、正規職員の就業場所が変更となることについて、任用の段階で衛生局管内が勤務場所ということで採用していることから、就業場所の範囲内での変更であり、勤務労働条件の変更には当たらないとしている。これをみると、市の対応がそれまでとさほど変わっていないとの印象をぬぐい得ない。さらに、衛生局内の異動である限り勤務労働条件の変更には当たらないという対応を市が取る可能性がなくなったと判断することは困難である。したがって、本件救済申立て以降に行われた団交における市の態度の変化を考慮してもなお、市において団交拒否(不誠実団交)をしているという事態が解消されたとすることはできず、救済を命じる必要性が失われたと認めることはできない。 
掲載文献   

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